日本自動車販売協会連合会が発表している、新車登録台数の推移を見てみましょう。
http://www.jada.or.jp/contents/data/type/index01.php
ここ10年で見ると2001年がピークで2008年リーマンショックのずっと前から減少していることが分かります。「若者の車離れ」だけで説明できるでしょうか。百貨店やスーパーなどの小売り販売額の動きを見ると、1996年以降12年連続して減少が続いています。GDPは2008年までの12年間年平均0.8%の伸び、合計9.6%拡大しているのに、新車販売も小売り販売額も減少を続けていたのです。(経済産業省の商業動態調査
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/result/sokuho_1.html)藻谷さんはこの原因を15―64歳の「生産年齢人口」の減少だと指摘しています。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、「生産年齢人口は戦後一貫して増加を続け、1995年の8,717万人がピーク。その後減少局面に入り、2000年には8,638万人となった。中位推計によれば、2050年には5,389万人にまで減少する」としています。(http://www.ipss.go.jp/pp-newest/j/newest02/3/z_3.html)
人口が増えている首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)では2000―2005年に総人口は106万人増加していますが、内訳を見ると65歳以上(老年人口と定義)が118万人増加した一方で、生産年齢人口は22万人減少していたのです。この間全国で増えた老年人口は367万人、実に全国の高齢者増加の3人に1人は首都圏住民だということ、全国的にも首都圏でも現役世代が減少し、高齢者層が増加しているのです。これは「消費」という視点からの大変な人口動態変化だと思います。自家用車だけではなく、スーツ、住宅、ガソリン、電機製品などの国内消費が減少するのは当然だといえます。
100年に一度の不況、という表現がありましたが、この人口動態の変化は100年どころか日本歴史始まって以来の変化、つまり2000年来最大の経済危機、とも言える事態です。戦後のベビーブーム世代が生まれた1950年から高度成長時代の1970年、バブル崩壊後の1995年、そして2005年の4つの時代の、年齢別人口構成を見てみましょう。
(総務省統計局 国勢調査 http://www.stat.go.jp/data/nenkan/02.htm)
団塊の世代と言われる年齢層、どの時代でも年齢構成のピークを示しています。2005年の30―34歳にもう一つのピークが団塊ジュニア世代です。
このグラフが示すことは「すでに起こった未来」です。団塊の世代が生産年齢に差し掛かった1970年、これがいざなぎ景気の主要因となり「人口ボーナス(生産年齢人口増加による経済活性)」の恩恵を受けました。団塊世代が40歳代になり、その子供がハイティーンを迎えた80年代には住宅ブーム、不動産ブームにわきバブルが形成されました。バブル崩壊後の95年には定年退職者数が新規学卒者数を上回り、それ以降、日本は「人口オーナス(生産年齢人口は減少し経済が不活性になる)」時代に突入したのです。今から15年後には団塊ジュニア世代が50―54歳になり、40年後には75―79歳になる、これはすでに起こった未来であり確実にそうなるのです。
しかし日本経済には良い面もあります。リーマンショックで日本人の金融資産は1544兆円から1434兆円に減少した、という報道がありましたが、その間円高が進み、ドルベースでは110円から90円で約2割、ユーロベースではなんと170円から110円で4割近く価値が上がっているのです。海外から見れば若年層に移転できる金融資産は逆に増えていることになります。 (http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5070.html)
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
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菅原晃
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