まずはタイトルにある坊ちゃんが象徴するのは薩長藩閥政治への批判であった、という話。明治維新では幕府側であり、明治以降は浮かばれない元松山藩士の「うらなり」のフィアンセがマドンナ、それを横取りしようとするのが帝大出で威張り腐っている「薩長」の象徴である「赤シャツ」、画学の「野だいこ」は江戸っ子のくせに薩長に媚びを売る唾棄すべき輩、会津人の「山嵐」は最後には坊ちゃんと共謀して赤シャツに一泡吹かせようとして坊ちゃんとともに左遷される。これは戊辰戦争の再燃小説なのだ、というお話。
日露戦争における捕虜の数、ロシア側は79000余り、日本は2000名だという、この差はあまりに大きい、なぜか。日露戦争時には虜囚の辱めを受けず、という軍人への教えはなかった、とされるがそうではなかったという。
明治初期の小学校で明治政府が教えたかったのは軍事教練だった、という話もある。英仏の軍隊をみると立派に整列を崩さない行進をする、かたや日本の兵隊たちは整列や行進ということを全くわかっておらず、軍隊が弱体だ、という課題を小学校における教練から鍛えようとした、というのが著者の指摘。
日清戦争は当初、日本が勝てないと欧州では予想されていたが勝てた理由、それは海軍の軍艦が軽量機敏で大砲の大きさで劣っていたのを機動力でカバー、海軍での機動力の重要性をはっきりさせたという。陸軍では清国の軍隊の方が田舎の百姓の寄せ集めであり、訓練も十分されずに戦地に赴いていたため、という。
そのほか、ニコライ二世は日本嫌いで日本人を馬鹿にしていた、というのが定説であるが、ニコライ二世の日記によればさにあらず、日本人嫌いではなかった。日露戦争の戦史は後世の軍隊によってまずい部分は削除、良い部分だけが残されたので戦史としての価値が低い、というはなしなどなど、日清日露戦争にまつわる雑学、ともいえる内容。「坂の上の雲」をよりおもしろく読むための参考書、という位置づけだ。
『坊っちゃん』と日露戦争 もうひとつの『坂の上の雲』 (徳間文庫)
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