意思による楽観のための読書日記

外国特派員の目 ニッポン見たまま 週刊朝日編 ***

先日読んだのは1975年ころにイギリスに短期滞在した女性から見た英国事情だったが、こちらはほぼ同じ頃日本に駐在していた外国人駐在記者による日本事情。その後の40年で日本は経済的な発展があり、日本への留学生、旅行者、滞在者も増えたので、今は日本礼賛番組や記事が横行しているが、当時は辛口の日本評論や外からどう見られているのかを気にする感覚がよく分かる一冊。日本ポジティブ面とネガティブ面と分類して列記してみよう。

ポジティブ面 大相撲の歴史やしきたり、横綱の威厳。ヒロシマを保存することの重要さ。房総半島に当時でも残る海女の姿。若い女性のファッションセンスはパリ以上。日本の自然は世界一、人がいないことが一番。寺社仏閣や茶の湯、日本美術の洗練された美しさ。日本のお肉の切り方は薄くて素晴らしい。総じて日本の食べ物と飲み物は美味しい。日本女性は魅力的。社会のダイナミズムは欧米以上、今後の経済発展は約束されている。チップがいらない。列車電車のシステム。

ネガティブ面 大相撲の放映時間をゴールデンタイムにすれば猛烈に働くお父さんも早帰りするかも。一家心中は子供の人権無視。結構披露宴は時間とお金の無駄、呼ばれた方には拷問だ。来日するモナリザに一億総狂乱はいかがなものか。ピル解禁はリスクが有ると解禁せず、堕胎はできる、この矛盾。神風タクシーと乗車拒否。戦争を引き起こした歴史を忘れる速さ。交通信号を律儀に守るのは日本帝国が戦争に邁進した方向性に盲信したこととつながる、ルバング島から帰還した小野田さんを見よ。今では美しかった房総半島が高速道路で破壊された、美しい磯にマリンパークは不要。日本では観光地になぜリゾート施設を作りたがるのか、消費者もそれを求めるのが疑問。日本の都市計画は無計画、都市景観の醜悪さは世界最低レベル、都市景観に対する美醜感覚がないのか。公共交通機関でのアナウンスメントは拷問的騒音。地下鉄はサウナ状態できれいな景色もない残念な移送手段。日本の雑誌は低劣なポルノ、平気で電車の中で読む神経を疑う。国際感覚がないと自らを嘆く島国根性、日本文化は独特と言うより海外との共通部分をアピーするべき。専業主婦として団地の狭い一室で子育てしている教養ある女性は本当に幸せなのか。日本の英語教師は日本の子供たちに英語嫌いを植え付けている。ゴミ捨てマナーはひどい。日本人はエコノミックアニマルだと信じ込んでいること。日本が第2次大戦で中国と朝鮮に与えた損害について多くの日本人が罪の意識を持っていないこと。自動車の使用制限ができていない、もっと自転車と自転車専用道路を。警察がヤクザを真面目に取り締まらない。選挙制度が保守政党に有利なのにこれを改革しない。進学試験制度や医師養成システムの複雑さ。民主主義の形態は欧米並みなのに実際の政治は三流。

こうして分類してみるとネガティブ面が目立っているが気がつくのは、その後の40年でネガティブ面も少しは解消できていることと、そしてまだまだ日本人の心と頭の中身は変わっていないこと。ということは、表面的には日本礼賛をする外国人は増えているが、外国人も心と頭のなかではまだまだネガティブ面の日本を感じている人も多いということか。旅行者や留学生がこの40年でどれだけ増えたのかを考えると、一つの国が変化するというのは時間がかかるということ。イギリスもこの40年で随分変わったが、日本の40年の変化はどの程度だろうか、一度誰かと話をしてみたい気がする。

各国駐日記者による外人特派員の目―ニッポン見たまま (1975年)


↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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