意思による楽観のための読書日記

テレビに映る中国の97%は嘘である 小林史憲 ***

テレビ東京プロデューサーによる中国体験レポート、タイトルに惹かれて買ってしまった。カンブリア宮殿の番組ディレクターを経て2008年から2013年まで北京支局特派員、中国共産党政府がセンシティブに感じる場所を取材するたびに21回も拘束されたという。

中国の反日デモの実体やチベットウイグル自治区の実体など、なんどかテレビでも報道されている内容であったが、筆者が自分で体験してきたことは実感がこもっていて迫力もある。尖閣諸島の国有化をきっかけとした中国政府の反応と反日デモについても、共産党が容認した、もしくは一部では動員して煽った実体も報告。外交に疎かった民主党政権と当時の石原都知事のゴリ押しをきっかけに、日中国交回復時には先延ばしにしたと言われている「尖閣問題」に火をつけてしまい中国政府の感情を逆撫でした。領土問題を外交交渉に使う口実を与えてしまったとも言える。

中国の農村に出現した「金持ち村」、先進的考えを持ち実行力もある一人の村民により、資本主義的考え方で向上などを誘致して経済的に成功した村を紹介。いまや近隣の村々も合併して発展を続けているが、そのある村民が2013年に死去、今後が心配されている。バブルの象徴のような高層ビルやホテルまで開設しているが、10年以内に廃墟になるだろうと筆者は予言している。

習近平主席が主席就任前には賄賂が横行していた。当時は役人への賄賂に茅台酒がよく使われ、その茅台酒の価格も高騰していた。茅台酒を贈られた側もそんなに酒ばかりは飲めないので再販売ルートも確立していたが、習近平政権になり、賄賂が厳しく取り締まられるようになり、茅台酒の贈答需要が激減、相場も十分の一以下に急落した。

チベット族への直接取材、毒入り餃子事件の犯人の親への取材、朝鮮国境の村での取材なども紹介、突撃取材の精神は素晴らしい。本の内容はここまで。

中国の経済は行き詰まっている、という評価と、中国はまだまだ伸びる余地がある、という評価が入り交じるような現在の中国であるが、南沙諸島問題では難問を抱え込んでしまったように見える。南沙諸島をめぐっての領土問題なので外交問題のように思えるが、実は中国にとっては内政問題、中国国民の愛国心は領土問題で燃え上がってしまっていて、仲裁裁判の結果を受け入れるなどとは決して言えなくなっている現政権、それでも国際的にはそれでは通らないことも明白。今後もG20やASEAN会議などを開くたびに必ず問題になるはずで、どのようにハンドリングするつもりなのか、南沙諸島を埋め立て始めた時にはこういう自体を想定していなかったのだろうか。大きすぎる国家を力で統治し続けるのはかなり困難、という感想を持つ。

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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