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意思による楽観のための読書日記

色彩の心理学 金子隆芳 ***

ゲーテは著作「色彩論」で物理論とは真逆の持論を述べたというが、現在ではほとんど言及されることはない。しかしそこで述べられている色彩についての感覚論や主観的色彩の心理的印象論、錯覚などについては、今も研究や発展が進んでいるという。本書では色彩が持つ色の印象や感触、光と影、主観的印象や音と色の関係、光沢と色彩、感性的色彩論などについて概括している。

印象派の画家たちが写実的絵画から主観的表現に進んでいった時代は、画材の進歩により多数の色彩をキャンバスに表現できるようになった時代と重なると指摘。できるからやる、でありそうした幅広い表現や現場に絵の具を持ち出すことができるようになるチューブ入り絵具の登場などが、印象派の出現を助長したいう。感覚を具現化するという技術の進歩による新派到来、ということになる。これは音楽や映画など他の芸術にも共通する。

暖色と寒色についても考察、物を燃やすときに火が赤く燃えることから、赤色系統を暖色といい、冷たい氷が青色であることから青色系統を寒色という。実際に赤い色の物体の温度が高いのではなく、生理的反応であると。それでは白は寒色で、黒は暖色かといえば、雪や氷が白く、黒は熱を吸収するので寒い冬には黒い服を着ることが増えて、夏は白い服を着ることも影響するかもしれない。色に重い軽いはあるのか。明るい色は軽そうに見えて、暗い色は重そうである。前に出る色と後退する色は波長が短いものは遠く見えて、長波長のものは近くに見える。つまり赤いほうが近くに見えるという。膨張する色もある。赤や青に比べて黄色は大きく見えることを光滲現象という。強い色弱い色もあって、膨張し前に出る色は強く感じる。音程が色に感じる人がいるらしいが、その対応は人それぞれだという。ドの音が赤、といったのがスクリャービンで白だと思ったのがリムスキーコルサコフ。

形容詞が色と結びつくこともある。繊細と粗雑、深みがあるのと表面的、男性的と女性的など。これらは主観的ではあるが一定の傾向は見られるという。美しいと汚いでは赤系統が黄色系統より美しく青色系統の方が赤系統よりも硬い印象がある。色の好みは時代により変化するというが、選挙などで色彩を運動の中に取り入れる候補や政党がある。国際的にこれは見られる現象であり、それぞれの色彩感覚は候補者の好み次第でもある。本書の姉妹編に「色彩の科学」があるというが、人間が感じ取れる色は波長の一部分であり、動物の種類によっては人とは異なる色彩感覚を持つモノもいるという。人同士でも異なる色彩感覚があってもいいはずだ。本書内容は以上。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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