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意思による楽観のための読書日記

東アジアの論理 岡本隆司 ***

中国での強権的政権はなぜ中国の人々には支持されているのか。韓国の政権による慰安婦合意無視は、国民によっても正当化されているのはなぜか。日本人から見れば正直不思議な現象である。

中国には秦の始皇帝以来、2000年以上「皇帝」が存在する帝国だったが、今では共産党政権になっているのは周知。統治を支えたのは儒教思想だが、今はその思想は通用しない。その思想にかわり唱えられるキャッチフレーズは、「領土主権」「一つの中国」であり、その思想は今では習近平思想と呼ばれる。外から見れば主席が唯我独尊的に他論を排し、独善的政策実行に邁進する皇帝化しているように見えるが、中国国内ではその思想のもとに集権化が行われる。香港での一国二制度の国際約束は「一つの中国」思想が優先し、思想弾圧が強行された。「法の支配」は中国では「中国法による支配」となる。中華思想とは中国こそが世界の中心であり、現代中国でも普遍の真理となっている。軽々しく「中華そば」とか「中華まん」などというネイミングをするものではない。

上下関係と自らの尊重・他社の卑下が儒教の根本思想であり、世界観にもこの価値観を反映すると中華思想となる。かつての朝鮮王朝では、中国に朝貢すると同時に、世界観を共有、小中華を自称した。東アジアにあっては、中国、朝鮮半島が世界の中心に近く、東の島国は島夷、倭奴(ウェノム)となる。「慰安婦問題」の根底にあるのがこうした歴史観であり世界観である。この文脈では、北朝鮮はあくまで同朋国家であり、半島統一こそが優先課題となる。中華思想は国際ルールと共存させなければ現代社会での国際関係は成り立たないケースが多い。この折り合いをどのようにつけていくのかが、韓国政権に課せられた課題であり、日本はその出方を見ていくしかない。本書内容は以上。

儒教でも、書物を学ぶエリートを育てる朱子学と、庶民でも学問を極めることを重視する陽明学があった。エリートと庶民、という対立のコンセプトも日中韓関係には存在する気がする。科挙によりエリートを育成した中国・朝鮮と、庶民教育に力を入れた日本では、背景にある儒教の存在への考え方と理解が全く異なる気もする。同時に、欧米から見れば、こうした違いは微かなものに映る可能性がある。ロシアによるウクライナ侵攻は、国際関係を新たなステージへと進めた。日本政府は明確にG7のポジションを取っているが、中国、韓国はどのようにウクライナ侵攻に対応していくか、その出方は難しいバランス問題を秘めているはずである。今後、日本が対中、対韓国・北朝鮮の外交を進める上ではこうした歴史観と論理構造を理解した上で進める必要性があるだろう。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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