"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

「働く幸せ」 大山泰弘著

2010-10-07 18:51:56 | 日記
大山さんは、日本理化学工業という会社の会長さんです。
会社の7割以上は知的障害者の方々で構成されています。

障害者の方を採用する会社は増えているようですが、従業員比率は圧倒的に少なく、また、会社のメインの部門で仕事をしている方は、非常に少ないのが実状のようです。

この会社の場合、その心臓部である工場は、ほとんどが知的障害者の方々です。
会社に不可欠な人材として働いているのです。

私は、この本を福祉関係の本として読みませんでした。
すぐれた経営の書であり、すばらしい人生論として受け取りました。

知的障害者の自立を心から願う、養護学校の先生の熱心さに負けて、2人の障害者を短期で受け入れるところから、この旅が始まります。

体験期間終了前日、休みも取らないで働く二人の一途さに打たれた他の従業員が、二人の分もカバーするから、仕事を続けさせて欲しいと大山さんに懇願し、二人は本採用になります。

大山さんは、障害者の採用で有名なアメリカの会社に視察に行きます。

そこでわかったことは、その会社で働いているのは、身体障害者であって、知的障害者を採用している会社は、アメリカにもないということ。
経営面も政府の補助金に依存していることがわかりました。

その事実に、かえって発奮した大山さんは、補助金に頼らず、民間企業として、きちんと収益をあげて行こうと決心します。

言うは易く、行うは難し。

すべての製造工程は、障害者の方々に合わせて見直さなければなりません。

知的障害者の方には、数字が理解出来ない方が多くいます。
この材料なら何グラム、この材料なら何グラム、という作業が出来ません。

しかし、考えてみると、信号の色を見分けて通勤することが出来ている。

それをヒントにして、材料の同じものは、決まった色の容器に入れ、同じ色の重りを作って、それと釣り合うように材料を入れるようにしました。

勝手に会社を休んでしまう従業員がいました。

やって来たその従業員に、担当の方は、ラインに入らないで見ているように言いました。

そして、本来その従業員が担当すべき最後の工程で、降ろされなかった製品が溜まってしまって、しまいには、どんどん落ち始める様子を見て、その従業員は、自分がどれだけ大切な業務を担当しているのかを理解しました。

そして、無断欠勤がなくなったばかりか、高熱があっても会社に出て来て会社の方々に帰されるようになるほど、仕事に対する責任を自覚したのでした。

発作的に奇声を発して、製品を倒してしまう従業員には、すぐ家に帰るように指示、しかし、反省したら戻ってくるように言って帰す。
同じことを繰り返して約5年。そうしたことがなくなりました。

施設に入って、過ごした方が楽でよほど楽しいだろうに。

障害者の方々の懸命な働きぶりを目のあたりにして、最初の頃不思議に思った大山さんは、導師に話を聞きます。

そして、人間の究極の幸せは、

人に愛されること
人にほめられること
人の役にたつこと
人から必要とされること

であり、仕事によってあとの3つが得られるのだ、と聞きます。

しかし、後に、大山さんは、仕事は、最初のひとつも含めた4つすべてを与えてくれるのだ、と思うに至ります。

そうして、創意工夫の繰り返しによって、全く粉の出ないチョーク、ガラスに書けるチョーク等、画期的な商品を世に出していくのです。

働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~
大山 泰弘
WAVE出版
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