てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

井上道義さん指揮の アンサンブル金沢公演

2017-09-24 18:19:55 | 音楽会




開催日:2017年9月22日(金) 19:00開演
開催場所;三井住友海上しらかわホール
井上道義 指揮
神尾真由子 バイオリン
プログラム:
・ペルト  ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
・ベートーベン  バイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
・ベートーベン  交響曲 第6番 ヘ長調「田園」作品68



 とても興味を持っていたアンサンブル金沢が、井上道義さんとともに名古屋公演するということで、一生懸命切符を探し、何とか入手できた。
 会場は三井のしらかわホール。愛知県の芸術劇場が今改修中で、コンサート開催場所が散ってしまっているが、ここは聞きやすくいいホール。
 
 チャイムが鳴り、まずアンサンブルメンバーが登場。大人を感じさせる人が多い。でもやはり室内管弦楽団だから通常のオケと比べて人数が少ない。

< ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌>
 大股で颯爽と井上氏が入ってきて、こちらに向いて一礼。その後オケのほうを向いてじっと暫く動かない。客席が完全に静かになってから指揮を始めた。本当にか細い弦がなっている。そして鐘の音。弦はどんどんと厚みを増し、重くなっていく。メロディはほぼなく、長く伸びる音がうねりながら大きな束になって押し寄せてくる。現代音楽。こんなにナマの悲痛さを感じさせる曲は始めて。
 弦の重厚さ、パートクリーンさは素晴らしく、このオケのすごさを感じさせた。
 数分の曲で、井上さんは重厚に指揮した後、見事なステップで一回転し、舞台横へと消えた。

< ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61>
 神尾さんはブルーのドレスで颯爽とステージに姿を現した。長いオケ前奏の後に弾き始めたが、このオケの弦と非常に相性のいい音色だなって思った。ベートーベンさんは、バイオリンコンチェルトによくあるバイオリンの独奏者が技巧を振りまいてキラキラ音を立てさせるような曲、独奏者のバイオリンが音楽を構成するパーツとしてキチンと弾いてもらうように作曲したとのことだが、本当にいろいろなフレーズを強弱弾かせている。そして透き通った滑らかな音が心地よい。最初はお淑やかに弾いていたが、最後のほうは身体を振って力強く引いてなかなか迫力があった。
  
<田園>
 井上さんはとっとと歩いてきて、指揮台に立つや否や当たり前のように振りだし、そしてオケからいつも演奏しているかのように曲が流れだした。なんか一瞬ラジオを聴いていた
受験生の頃を思い出した。
この曲はなんといってもファンタジア。バッカスとペガサスの合コンのイメージが抜けない。しかし今回の井上さんの指揮というかダンスは素敵だった。基本背筋は伸ばしてクラシックな指揮をするかと思えば、足を曲げて背を低くして少しずつセリ上がっていったり、腰をリズミカルに動かしてそれで指揮したり、手をぐるぐるまわしたりフワフワと動かしたりと変幻自在。指揮台はないけれどもほとんど位置は動かないから、優雅でとても品位は感じられる。
そういった井上さんが身体で表す情景を、オケは見事に作り上げる。例の雷のシーンも、迫力あるけれどもとてもやさしい。とても心地よい空間ができた。


 アンサンブル金沢は大人のオーケストラ。金沢の文化度はとても高い。広上さんの京響は若いとおもった。Wikiにはビロードのような弦と書かれていたが、むしろ透き通ったやや硬質とおもった。そして管の安定感は素晴らしい。全然乱れない。こんなオケだから井上さんは楽しく踊ることができるのだろう。

 井上さんは喉頭がんの治療から復帰中だが、アンコールの前後にかつてテレビで聴いた声とは違うしゃがれた声で、聴衆に語り掛けてくれた。スピードは遅いけれども相変わらずのおどけたしゃべり口だった。
出入りの時のおどけた歩き方や、一回転も合わせて自分の健康を演出しているのだと思う。70歳だそうだから、まだまだ頑張ってくださいね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする