3年前に大騒ぎとなった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」は愛知県と名古屋市両者がバックアップしていた。しかし名古屋市が離脱し、愛知県がバックアップして「あいち2022」として開催されることとなった。
全体としての開催時期、会場は以下の通りである。
時期:7月30日~10月10日
場所:愛知県芸術文化センター(地下2F、10F、8F)、名古屋市有松地区、一宮市、常滑市
芸術監督:片岡真美(森美術館館長、国際美術館会議(CIMAM)会長)
(後3地区は、地域振興と組合わせている。)
テーマ:Still Alive 「今、を生き抜くアートのちから」
8月18日に、やっと愛知県芸術文化センターを訪問した。今回はまず地下のホール展示と
10Fの展示について、興味を持ったものを写真と5行詩で示す。
なお五行詩の内容に関しては、作者の意図とは関係なく自分のイメージを書いている。
<地下2階 地下鉄からセンターへの入口>
1.小野澤峻 作品 『演ずる造形』
6個のステンレスの球をつけた振り子が、大きく振れながらも衝突せずにすれ違っている。複雑なダンスを踊っているようで見飽きない。これを見ると、8Fや10Fも楽しいことがあるのではと期待感が高まる。
<すれ違い>
コロナ禍の
人付き合いは
この通り
武器持つ人も
すれ違うように
コロナ禍の
人付き合いは
この通り
武器持つ人も
すれ違うように
稼動終了後 女性二人が振り子の取り付け部をチェックしていた。厳しい精度で動かしているから点検は大変でしょう。でも作者はトラブルが起こったら原因究明を楽しむのでは?
ネットで調べて見ると、1996年生まれのこの芸術祭参加者で最年少、ジャグリングという大道芸の芸人をしつつ東京芸術大学の主席卒業者で、片岡芸術監督のお気に入りということだ。
ともかく楽しさが一発でわかる作品。ただし、帰りには動いていなかった。稼働時間が短そうなのが残念。
<10F>
2.河原温 作品 <STILL ALIVE>
今回のテーマ<STILL ALIVE>は、愛知県出身でコンセプチュアルアートの世界の第一人者とされている川原温の作品<I AM STILL ALIVE>にちなんだもの。彼が長期間海外旅行で街を移動するたびに、特定の人に「I Am Still Alive」と電報を打った。作品は大量の届いた電文記録。自分がさわっていない紙の総体が概念としてアートになっている。
入場した最初の部屋には、河原温の<STILL ALIVE>を中心とした作品群がテーブルに並べられている。
「I Am Alive」ではなくStillを入れることで、初めてそれを受け取った時には切迫感があっただろう。
<概念 それがアート>
Still Alive
自分のその日
電報で
概念となり
アートに化けちゃう
Still Alive
自分のその日
電報で
概念となり
アートに化けちゃう
上の写真は会場風景。次がテーブルの上の電報の例(「あいち2022」HPより)
3.奥村雄樹の作品群から1点 (題目は確認できず)
次の部屋は、河原温とも親交のあった奥村雄樹の作品群。やはりコンセプチュアルアートの人。
その中でロープの作品が、そこにいる人と組み合わせることで気に入った。
<君と私のロープ>
世の中は
傾斜すれども
このロープが
君と私を
結いつけるはず
世の中は
傾斜すれども
このロープが
君と私を
結いつけるはず
4.ローマン・オンダック作品 《イベント・ホライズン》
一本の丸太を100分割した作品。断面は年輪がくっきり出るように磨かれ、それぞれ1本の年輪をマーキングし、それが出来た年とその年に発生した事件が書かれている。毎日それを1個ずつ壁にかけ、最終日には総ての断面が壁に並ぶことになっているとのこと。
<年輪>
樹木は
生きた記録を
身に刻む
忘却できる
人羨まし
樹木は
生きた記録を
身に刻む
忘却できる
人羨まし
次の写真が断面の例
5.アンドレ・コマツ作品 《失語症》
たぶんデモやストライキなどの社会活動を意識した作品。
薄い半透明の幕と通路にはハンマーを置いて外部と仕切った空間に、マイクとこの活字媒体の塔がある。まわりは音をだす作品ばかりだが、ここは音を発生しない空間。
周辺の騒音もあり声は届かないけれども、ニュースとして取り上げてほしいと解釈。
<音が意味をなさない空間>
疲れ果て
声が出ているか
わからない
でも作りたい
活字の塔を
疲れ果て
声が出ているか
わからない
でも作りたい
活字の塔を
6.ジミー・ロベール作品群の一枚。
自分を中心とする大判の写真を、いろんな形で拡げているが、これは美しい女性の写真がテーブルから垂れ下がっています。
周りに一生懸命呼びかけているようだけれども、皆無関心。
<気付いて、そしてキスして>
踊っていて
2次元世界に
捕らわれた
誰かキスして
救い出してよ
踊っていて
2次元世界に
捕らわれた
誰かキスして
救い出してよ
ちなみに、次の彼が2次元に閉じ込めた張本人。彼は焼き付けた紙を筒にすることで 3次元化。
7.足立智美 作品の1点
本来は声によるパーフォーマンスを重点とする人らしい。
<人が動くとき>
DNAを
振り撒きながら
人は行く
そこに想いも
載っているはず
DNAを
振り撒きながら
人は行く
そこに想いも
載っているはず
次回は8階の展示。
最後のトリエンナーレでは、アートをわかっているのかという日本の若手ジャーナリストが総監督だったが、今回は国際的なアート界パワーランキングで日本人として最高位の人が総監督となった。
そのためか地下2階はさておき、一般の人には頭でっかちで一番理解しがたいであろうコンセプチュアルアートから10Fは始まったので心配したが、進むにしたがってイメージの広がる展示が現れた。作品、作者もさすが世界へ影響力を有する人という感じがする。去年に比べてアートのレベルは格段に上がったのではと思う。
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