
今朝の日経の記事で始めて知ったが、昨夏芥川候補になったものの、盗作と騒がれて没になった、北条裕子の「美しい顔」が、この4月に講談社から出版されたようだ。
巻末に参考文献の情報を加え、盗作といわれた元の本の作者に詫びを入れ、どうにか禊ぎはすませたということらしい。
芥川賞は文藝春秋社だが、この作品はもともと講談社の群像新人賞を受賞したもの。
芥川賞候補になって騒がれ、有名になって、講談社が漁夫の利を得たということか。
本書も参考文献も読んでないので、なんともいえないが、この作品は東日本大震災を舞台にしているらしい。
作者は直接体験したわけではないようだから、臨場感を出すために、体験者の本のひとつやふたつ、参考にするのはやむを得ないのではないだろうか。
これに類似したケースとしては、元連合赤軍メンバー坂口弘の著書を参考にしてあさま山荘事件を書いた立松和平の「光の雨」がある。
一般論としていえることは、史実を踏まえて小説を書こうと思えば、どうしてもそれに関する資料には目を通さざるをえない。
で、そこに書かれている以上の事実は知るよしもないから、どうしてもそれに引きずられてしまうのだろう。
文章をそのまま引用したのが問題なのだろうが、むつかしいところである。
機会があれば「美しい顔」、読んでみたいと思っているが、机の脇は積ん読の山なので、いつになることやら。