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書斎の周辺

本を読んだり、書いたり、夢中になったり、飽きてしまったりの日々

小説「美しい顔」が単行本になった

2019年06月08日 | 読書



 今朝の日経の記事で始めて知ったが、昨夏芥川候補になったものの、盗作と騒がれて没になった、北条裕子の「美しい顔」が、この4月に講談社から出版されたようだ。
 巻末に参考文献の情報を加え、盗作といわれた元の本の作者に詫びを入れ、どうにか禊ぎはすませたということらしい。

 芥川賞は文藝春秋社だが、この作品はもともと講談社の群像新人賞を受賞したもの。
 芥川賞候補になって騒がれ、有名になって、講談社が漁夫の利を得たということか。

 本書も参考文献も読んでないので、なんともいえないが、この作品は東日本大震災を舞台にしているらしい。
 作者は直接体験したわけではないようだから、臨場感を出すために、体験者の本のひとつやふたつ、参考にするのはやむを得ないのではないだろうか。

 これに類似したケースとしては、元連合赤軍メンバー坂口弘の著書を参考にしてあさま山荘事件を書いた立松和平の「光の雨」がある。

 一般論としていえることは、史実を踏まえて小説を書こうと思えば、どうしてもそれに関する資料には目を通さざるをえない。
 で、そこに書かれている以上の事実は知るよしもないから、どうしてもそれに引きずられてしまうのだろう。
 文章をそのまま引用したのが問題なのだろうが、むつかしいところである。

 機会があれば「美しい顔」、読んでみたいと思っているが、机の脇は積ん読の山なので、いつになることやら。

八日目の蝉

2019年06月04日 | 読書


この土日、甲府に行ってきた。
途中の時間つぶしにとタブレットにビデオを録画して持参したが、途中で2回乗り換えで、電車に乗る時間が細切れなので、のんびりというわけにはいかなかった。

結局、見たのは2つだけ。ひとつは「ハゲタカ」。もうひとつは「八日目の蝉」。

企業小説は嫌いではないが、「ハゲタカ」はなんだか先が読めるような底の浅いドタバタ劇で、おまけに電車の雑音で台詞が聞きづらく、途中で見るのをやめた。
あとでネットでいろんな感想を見ると、どうやらNHKドラマの続編のような位置づけらしい。セットで見ると面白いらしいが、とてもそんな気にはならない。

「八日目の蝉」は好かった。
なぜかこちらは音も鮮明で、じっくり見ることができた。
不倫相手の女児を誘拐した女性の逃亡劇と、誘拐された少女の成長後の生き様を描いており、作りすぎといった感はあるが、ストーリーとしてはうまくできていた。

知らずにダウンロードしていたが、原作が角田光代とあとで知った。
調べてみると、ぼくは彼女の作品はひとつも読んでなかった。
名前だけは知っていたが、ぼくの頭の中では小川洋子などと混同しているようだ。
どちらも海燕新人賞からのデビューだし、その頃ぼくは毎月海燕を買っていたからか。

改めて彼女の作品を読んでみようかなという気になってきた。

古本のあさりかた

2019年02月07日 | 読書



 高橋輝次氏が新刊書を出すという情報を見て、買ったまま読んでいない本があるのを思い出して、取りだしてみた。
 「ぼくの古本探検記」。7年前、大散歩通信社という聞き慣れない出版社から発刊されたもの。最近の本にしては珍しくバーコードがなく、蔵書DB登録するとき勝手にコードをつくったので、記憶に残っている一冊だ。

 改めて調べてみると、大散歩通信社というのは個人出版で、雑誌も出していたようだが、いまネット上からは姿を消している。
 
 「ぼくの古本探検記」は、タイトルからは古書店巡りのようなものを想像していたが、実際にはいろんな古書の紹介だ。
 最初の章は「それぞれにとっての林芙美子像」。
 いろんな本をあさりながら、林芙美子について書かれたところを抜粋して紹介している。
 古い雑誌の片隅から拾い出したりしていて、まとまりはないが、いわゆる評伝とは違った、俗っぽい視点から観察しているところが面白い。

 読みながら、こんな古本あさりも面白そうだなと感心した。
 

石川達三「日陰の村」

2019年01月07日 | 読書


 正月気分もそろそろおわり。
 ここ数日、これまで小説を書くとき利用するための基礎資料としてあれこれ書き殴っていたものを整理してみた。
 幼い頃住んでいた町の地図や想い出を思い出せる限り書き出した一枚の紙、家系図や父の経歴、大学を卒業してから今に至る年表、パソコンの歴史などなど。

 今日は八ヶ岳南麓の歴史を整理した。
 かって、気が向くまま、調べたものをメモ書きしていたのだ。

 明治8年に清里村が出来、開墾が始まる。
 昭和8年に小海線が開通し、清里駅ができる。
 戦後、ポールラッシュが清里を訪れる。
 昭和40年代、高原ロッジが出来、アンノン族が訪れるようになる。
 昭和50年代にはペンションブームが到来し、別荘開発も盛んになる。
 ブームは去ったが、いまなお別荘地として人気のひとつではある。

 いずれこのあたりを舞台にした作品を、本腰入れて書いてみたいと思っている。

 そんなことを考えながら資料を整理していたら、石川達三「日陰の村」という言葉がメモの中にあった。ダム建設を機に奥多摩を追い出され、清里に移住してきたいわゆる開拓団の姿を書いた作品だ。

 石川達三は若い頃よく読んだ。
 いちばん記憶に残っているのは「青春の蹉跌」か。映画も見た。
 懐かしくなって、また読んでみたくなってきた。
 書棚から取りだしてみると、初版が昭和23年、買ったのは昭和44年発行の26版。相当黄ばんでいる。110円だが、当時の給与水準を考えるといまの1000円くらいの水準か。

芥川賞、直木賞候補

2018年12月18日 | 読書
 第160回芥川賞、直木賞の候補作が発表になった。

【芥川賞】
上田岳弘「ニムロッド」(群像12月号)
鴻池留衣「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」(新潮9月号)
砂川文次「戦場のレビヤタン」(文学界12月号)
高山羽根子「居た場所」(文芸冬号)
古市憲寿「平成くん、さようなら」(文学界9月号)
町屋良平「1R1分34秒」(新潮11月号)

【直木賞】
今村翔吾「童の神」(角川春樹事務所)
垣根涼介「信長の原理」(KADOKAWA)
真藤順丈「宝島」(講談社)
深緑野分「ベルリンは晴れているか」(筑摩書房)
森見登美彦「熱帯」(文芸春秋)

 年を追う毎に知ってる名前が少なくなっていく。
 昔は複数の文芸誌を定期的に購入していたので、新人でも見覚えのある名前が多かったが、最近、文芸誌とは疎遠になってきたせいだろう。

 芥川賞候補で知っているのは古市憲寿だけ。それも作家としてではなく、ときどきテレビで顔を見るからだ。
 作品に期待するというより、えっ、彼が作家なのという驚きの方が大きい。

 直木賞で知っているのは垣根涼介。いくつか読んでいる。
 あとは書店で名前を見たことがあるような、ないような。手に取ったことはない。

 毎回、芥川賞の受賞作品の登載された雑誌文藝春秋は購入し、その作品のところだけスクラップしているが、前回の作品はまだ読んでなかった。
 最近、小説をあまり読まなくなってしまった。
 昔は暇つぶしといえは本だったが、いまはパソコンを触っている。
 それを覆してくれるような作品が出てくるのを期待しているが、果たしてどうだろう。