
イラクで起きたボランティア人質事件を覚えてるだろうか。(冒頭フィクションとの断り書きがあるが)本作品はまぎれもなくその事件をベースにした社会派ドラマである。酔っ払って裸で大騒ぎしたカドで世間からバッシングを受けた草なぎ事件がまだ記憶に新しいが、人の為に良かれと思ってしたボランティア活動が外国筋を巻き込む誘拐事件に発展した途端、世間から手の平を返したようにバッシングを受ける主人公・有子(占部房子)とその家族(田中隆三・大塚寧々)のその後がモキュメンタリータッチで描かれる。
近くのコンビニで、おでんのネタをそれぞれ別々のケースに入れて、ツユダクの注文をするKYな有子。人騒がせな人質事件が理由で、勤めていた会社もクビになり、有子の唯一の理解者であった父親も会社をリストラされてしまう・・・。「私が何か悪いことでもした?」人質にさえとられなければ、困っている国の人々を助けるボランティア活動は、尊敬こそされても、世間からバッシングされることはけっしてなかっただろう。
人質救出のために国費を使い世間をお騒がせしたというだけで、何の関係も無い第3者から次々と嫌がらせの電話がかかってくる状況というのは、おそらく世界中探してもこの病的な日本だけ。人騒がせな有子をバッシングすることによって、自分は正しい側にいる、他のみんなと同質だということを安全地帯から確認しているにすぎないことをまったくわかっていない幼稚な国民性は、草なぎ事件を見るかぎりいまだに健在だ。
わざわざまた物騒なイラクに戻りたがる有子に同情するわけではないが、イジメのネタを見つけると束になって襲いかかってくる世間の気持ち悪さというのはこの国特有の悪癖であり、隣にすわっているあの人は自分と同じだと安心する島国根性の裏返しなのだ。監督・小林政広は、帰国後の有子の日常をただ淡々と追いかけているだけで、民意をどちらかに誘導するような演出は特にしていない。どう判断するかはこの映画を見たあなた、他の誰でもない“あなた”ということなのだろう。
バッシング
監督 小林政広(2006年)
〔オススメ度

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近くのコンビニで、おでんのネタをそれぞれ別々のケースに入れて、ツユダクの注文をするKYな有子。人騒がせな人質事件が理由で、勤めていた会社もクビになり、有子の唯一の理解者であった父親も会社をリストラされてしまう・・・。「私が何か悪いことでもした?」人質にさえとられなければ、困っている国の人々を助けるボランティア活動は、尊敬こそされても、世間からバッシングされることはけっしてなかっただろう。
人質救出のために国費を使い世間をお騒がせしたというだけで、何の関係も無い第3者から次々と嫌がらせの電話がかかってくる状況というのは、おそらく世界中探してもこの病的な日本だけ。人騒がせな有子をバッシングすることによって、自分は正しい側にいる、他のみんなと同質だということを安全地帯から確認しているにすぎないことをまったくわかっていない幼稚な国民性は、草なぎ事件を見るかぎりいまだに健在だ。
わざわざまた物騒なイラクに戻りたがる有子に同情するわけではないが、イジメのネタを見つけると束になって襲いかかってくる世間の気持ち悪さというのはこの国特有の悪癖であり、隣にすわっているあの人は自分と同じだと安心する島国根性の裏返しなのだ。監督・小林政広は、帰国後の有子の日常をただ淡々と追いかけているだけで、民意をどちらかに誘導するような演出は特にしていない。どう判断するかはこの映画を見たあなた、他の誰でもない“あなた”ということなのだろう。
バッシング
監督 小林政広(2006年)
〔オススメ度


