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ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

3時10分、決断のとき

2009年11月24日 | ネタバレなし批評篇
人質が犯人に同情するストックホルム症候群を扱った映画は過去にも数本見たことがあるが、護送途中の凶悪犯が護送人に同情するという珍しい映画ははじめて。1957年に公開された同名タイトルのリメイクらしいのだが、西部劇としては異色中の異色、ジョン・ウェインやクリント・イーストウッドの勧善懲悪西部劇を想像して見ると「あれ、ちょっと違うなぁ」という印象を持つにちがいない。

普段は鳥の絵などを描いて至極温厚そうに見える強盗団のボス=ベン・ウェイドをラッセル・クロウが、息子に軽蔑されながらも愚直なまでに信念を突き通す働くお父さんをクリスチャン・ベールがそれぞれ好演しており、批評家筋の評価もすこぶる高かったという。気に食わない奴が現れると突如としてマジ切れするクロウの演技は(ベールの素の姿?とかぶるぐらい)真に迫ったものがあり、ここ数年彼が出演した映画の中では出色といえるだろう。

自分の息子に“誇れるもの”を見せようとする親父の姿は、現代においてはむしろうざったく邪険にされがちなのかもしれないが、護送集団が一人、二人と欠けていき、最後は依頼主まで手を引いたその時ベール演じるダンが見せた決断する父親の姿に、思わずシビレてしまった人も多かったのではないか。しかし、そのボスを助けるため体を張って追いかけてきたギャングの手下たちにベンがとるトンデモ行動だけはどうしても納得がゆかない。サブ・リーダーのチャーリー(ベン・フォスター)じゃないけれど「なんでそうなるの?(古)」と言いたくもなるのだ。

まあそこさえ気にならなければ、何を考えているのか良くわからない凄腕凶悪犯と、ドン臭いほどまじめな親父のラスト800mの脱出劇は見応え十分。なぜ、周囲の人間をすべて敵に回してまで、雨あられと銃弾がふりそそぐガントレットの中を、男はユマ行3:10発の汽車を目指したのか。「大人になれよ」といいたくなるぐらい堅物にしか見えなかった男が最後ににもらした本音の一言には、極悪非道の男をも黙って従わせる真実味がこもっていたのである。

3時10分、決断のとき
監督 ジェームズ・マンゴールド(2007年)
〔オススメ度 

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