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ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

2024年10月15日 | なつかシネマ篇

撮影当時27、8歳ぐらいだったはずのデカプリオが、実年齢17歳の天才偽造小切手詐欺師を見事に演じている。最近は、マーロン・ブランドの顔真似まで映画の中で披露してくれているデカプリオ、流石の演技力は間抜けなFBI捜査官カール・ハンラティを演じているトム・ハンクスを完全に喰っている。犯人を追い詰めてはすんでのところで逃げられる様子はまさに鬼ごっこ。実話ベースのシナリオらしいのだが、スピルバーグの手によってかなり脚色されているのだろう。

個人的に注目したいのは映画冒頭のソール・バス風のタイトルバックだ。スピルバーグはデザイナーには特に“手作り感”を求めたそうで、フランス人デザイナーがまさに紙とカッターで手作りしたタイトルバックデザインになっているそうな。デカプリオが演じたアバグネイルJr.の手口もハンドメイドで偽造した小切手ありきの詐欺行為ゆえ、その辺のシナジー効果を狙った演出だったのかもしれない。ソール・バスとコンビを組んだプレミンジャーかヒッチコックへのオマージュなのかなぁとも疑ってみたのだが、どうもそうではないようなのだ。

基本的には頭脳明晰で家族想いの高校生が、なしてアメリカ全土を巻き込む反社的詐欺行為に手を染めるまでになってしまったのか。脱税容疑で尊敬する親父(クリストファー・ウォーケン)が経営していた店を税務署に潰されると、あんなに夫婦仲がよろしかった母親は離婚し、あろうことか父親の親友とくっついてしまう。人としての中身よりも、“ヤンキースのピンストライプ(肩書き)”を無条件に信用してしまう愚かさを、人間不信に陥ったアバグネイルJr.は心の中で嘲笑っていたのかもしれない。

パンナム航空のパイロットに病院勤めの小児科医、はては(半分は実力で?)弁護士にまでなりすまし、制服族とみるや盲従平伏する銀行の女性事務員をだまくらかしてはまんまと大金をせしめていくアバグネイルJr.。が、その能力の高さを最も評価していたのは、他ならぬFBI捜査官ハンラティだったのである。なんという皮肉。皆が家族と過ごすクリスマスイブに、必ずハンラティ宛に電話をかけてくるアバグネイルJr.は、帰る家を失ってきっと家族愛にひたすら飢えているに違いない。そんなアバグネイルJr.が最後に訪れる場所を、老練なハンラティは予め分かっていたのだろう。

実在の人物アバグネイルJr.は後年ハンラティの善き協力者となり、偽造小切手摘発のため多大なる功績をあげ大成功をおさめたという。実年齢は劇中なりきった架空人物と同い年ながら、どこか擦りきれきっていない俳優デカプリオのイノセンスをして、被害総額400万ドルというルフィも舌を巻く犯罪を、まるで擬似親父=ハンラティの気を引くための“汚れなき悪戯”のように見せている。本当は親父に会いに行った時に「もうこんなことはやめろ」ってはっきり叱ってほしかったんだろなぁ、多分。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
監督 スティーヴン・スピルバーグ(2002年)
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