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ウエスト・コースト・ジャズってなんだ?

2005-04-24 18:02:42 | ジャズの話題
今回はちょっとばかしコアなジャズ話を。
僕が常々疑問に思っている、ウエスト・コースト・ジャズの定義について書こうと思う。
これは余分な知識というか、実際に聴いて楽しむ上ではあまり関係がない事柄なので、興味がない人にはすこぶるつまらないお話になってしまうかもしれないけど(笑)。

まずウエスト・コースト・ジャズってなに?ってとこから行くか。
45年の太平洋戦争終結後に東海岸は不況に見舞われて、ジャズメンたちはだんだんと食えなくなっていったのね。で、仕事を求めてハリウッドの映画音楽のサントラ作りというスタジオワークで糊口をしのぐために、楽譜に強いミュージシャンは西海岸へと集結してくる。
仕事の余暇としてロサンゼルス郊外の「ライトハウス」を中心としたクラブで、夜な夜なジャムセッションに興じた。
譜面に強い者同士のセッションにおいて、ヘッドアレンジやアレンジを施したアンサンブルを用いる試みが行われるようになっていき、カリフォルニア周辺の明るく健康的な風土を反映した、独自のスタイルが出来上がっていった。
このスタイルの形成にはLennie Tristano(レニー・トリスターノ、p)学派やMiles Davis(マイルス・デイヴィス、tp)の9重奏団といった、所謂「クールジャズ」の影響があったんじゃないかと推測される。
こんなとこかな・・・・・解説書なんかで書かれている事をザッとまとめるとこんな感じ。
ジャズファンに「ウエスト・コースト・ジャズってなに?」と尋ねれば、やっぱ「50年代前半にアメリカ西海岸で白人を中心に演奏された、明るく健康的な、アレンジを多用するジャズ」と返ってくるのが一般的な回答なんじゃないかと思う。
特徴を箇条書きにしてみると、
・50年代前半に起こった。
・西海岸におけるムーブメント。
・白人中心に形成された。
・雰囲気は明るくて健康的。
・演奏法としてはアレンジ、アンサンブルを多用する。
といったところでしょうか。

では、皆さんウエストのアーティストといったら誰を真っ先に思い浮かべますか?。
僕の場合はArt Pepper(アート・ペッパー、as,ts,cl)ですね。その次にChet Baker(チェット・ベイカー、tp,vo)が来て、Shorty Rogers(ショーティ・ロジャース、tp,flh,arr)がこれに続く。
他にウエストで有名なミュージシャンをとりとめもなく羅列してみると、Shelly Manne(シェリー・マン、ds)、Conte Candoli(コンテ・カンドリ、tp)、Howard Rumsey(ハワード・ラムゼイ、b)、Buddy Collette(バディ・コレット、ts,cl,fl)、Gerry Mulligan(ジェリー・マリガン、ds)、Dave Brubeck(デイブ・ブルーベック、p)、Paul Desmond(ポール・デスモンド、as)、Barney Kessel(バーニー・ケッセル、g)、Hampton Hawes(ハンプトン・ホーズ、p)、Bud Shank(バド・シャンク、as,cl)、Chico Hamilton(チコ・ハミルトン、ds)、Ray Brown(レイ・ブラウン、b)なんかが思い浮かぶ。あと典型的な黒人バッパーになるけれどもSonny Criss(ソニー・クリス、as,ss)、Dexter Gordon(デクスター・ゴードン、ts)、Wardell Gray(ワーデル・グレイ、ts)、なども同時期に西海岸で活動してたよね。
この中で、いったい誰がアレンジ、アンサンブル重視の活動をしていたのだろうか・・・・・。
Shorty Rogersはまぁ筆頭としても・・・・・あとはMilesの9重奏団に関わっていたのでGerry Mulliganは挙げてもいいか?、でもアンサンブル重視といったイメージは薄い。Dave Brubeck?・・・・・現代音楽に傾倒して作曲に凝った人ではあるけど、基本的にワンホーンカルテットで活動した人だしねぇ。
Buddy Collette、Hampton Hawes、Chico Hamilton、Ray Brown、Dexter Gordon、Wardell Gray、Sonny Crissは黒人だし、また、超有名処の白人でも、Art PepperやChet Bakerなんかは楽譜を読めたかどうかも?がつく。
複数管や大編成で、カッチリとアレンジされたアンサンブルを頻繁に用いていた人って意外と少ないんじゃないか?、ってよか、ほとんどいないと言っていい。

では、最初に書いたウエストの条件に当てはまるような人たちを挙げてみると、上記ではShorty RogersとHoward Rumsey。他にBob Cooper(ボブ・クーパー、ts)、Bill Perkins(ビル・パーキンス、ts)、Ted Nash(テッド・ナッシュ、as)・・・・・うーっ、苦しい(笑)。
ダメだ、パッと出てくる奴がいない(笑)。
あちこちのアルバムのパーソネルをひっくり返したりウエストに関する書籍を紐解けばたくさん出てくるんだろうけど、超メジャーで「ズバリこの人!」っていうのはあんまりいないように感じるんだよね。
これってどういう事?。

ってまぁ、ウエスト・コースト・ジャズに関しては、僕はいつも「演奏法として定義できない曖昧なジャンル」というように漠然と捕らえてる。
演奏法や雰囲気の傾向、また肌の色などできちんと区分けすればかなり詳細に分類する事はできると思うけど、それらを一言に「ウエスト派」と括ってしまうのは、かなり無理があるような気がするんだけど・・・・・ウエストを明確に定義づけるなら白黒や演奏法は度外視して、単純に「50年代前半の西海岸で活況を呈したジャズシーン」って、年代と地理で言い切ってしまうのが1番的を得ているんじゃないかな?。
皆さんはどう思われますか?。

今回は長々とつまんない話をしちゃったかな?・・・・・このくらいにしておきます。
本日の安眠盤、Eddie Costa(エディ・コスタ、p,vib)の「The House Of Blue Lights」
ではでは。

6 コメント

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ウエスト怪説 (ぐらんとグリーン)
2005-04-26 03:38:35
ウエストコーストは音楽理論から説明すると明瞭です、コード音を密集させないでスプレッドして使ったのがソ\フトな白人ごのみのサウンドになったわけだ。Cに6度9度の付加和音の基本は下からCEGADと並ぶのをGを下にしてCを省略したり drop2 drop3と言う技法があのソ\フトなサウンドの正体です、結局ジャズの白人的解釈なんですウエスモンゴメリのウエストコーストブルースと言う曲はコードチェンジがそれ風ですね、ウエスはバリバリのハードバッパーですが…私は滑稽なぐらいに力強くプレイするハードバップが好みです、黒人ジャズのダンディズム、ストイックな演奏はあまりおしゃれではないけど、オッサンくさいのがジャズの本質じゃないかと決めつけてます、ちなみにジャズの音楽的展開はトレーンやオーネットで一応終了したような気がしてます、その後のプレイヤーは理論展開がないので味わいで勝負するしかないんです。だからジャズは60年代以降は新しい技法の開発ではなくそういう技法の編集をして今日に至っている、と思います。これはクラシックでも同じでしょう只レコード等のテクノロジーがなかったぶん時間がかかってますねショパンやバッハ、ドビュシー、みたいにジャズも歴史に名が残るのは数少ないのでしょう。
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>ぐらんとグリーンさん (TARO)
2005-04-26 16:25:55
コメントありがとうございます。

ウエストの定義は楽理、わけてもボイシングにあるというご指摘ですね。

そう割り切ってしまうとスッキリしますよね。



僕が「ウエスト」が演奏法を指す言葉ではないと感じるようになったきっかけは、Shelly Manneの「The Three "&" The Two」というアルバムにあります。ドラムスとトランペットにテナーという、どう考えてもスイングしそうにない編成にで、ドラムがリズムキープをせずにアクセントに徹したり、ホーンがクロマチックを極めて多用したソロをとるといった、ある意味フリーに通じる前衛的な演奏がされているんですね。

こういった試みは当時のウエストシーンで頻繁になされていて、「Evolution / Teddy Charles」(大御所Shorty Rogersも参加)、「Tangents In Jazz / Jimmy Giuffre」など、録音も結構な数が残されています。一聴くして「え?、これがウエストなの?」という内容なのですが、こういったアルバム群は「前衛」とも「フリー」とも括られずに、やはりウエストの代表的なアルバムとしてカテゴライズされています。

また、上記Sonny Criss、Dexter Gordon、Wardell Grayや、それに加えて50年代の少々中ごろにズレ込みますがFrank Morganといった「オッサンくさい」(笑)人たちも、同年代ウエストに分類されているのをしばしば目にします。

こうなると、一般に言われる「アレンジ、アンサンブル重視」「クールで明るく健康的」というイメージはどこからやってきたものなのでしょうか・・・?となるんですね。

他のジャンルには、例えば「Blakeyによるハードバップのアルバム」とか「Milesがモードを追求した傑作」といった演奏法による括りは利きますが、ウエストには「誰々によって演奏されたウエストコーストコンセプトのアルバム」といった感覚は希薄で、演奏の内容でなく、ある意味十把一絡げに「この人たちはウエスト派」と、雑駁に括られているイメージが拭えません。

逆にぐらんとグリーンさんが仰っているように、ウエストを「楽理、演奏法を指す言葉」と限定してしまえば、同年代の東海岸の白人的スタイルの演奏者たち、Frank Socolow、Sal Salvador、George Handy、Hal Mckusick、Serge Chaloff、UrbieGreenなどの50年代の演奏はどう分類されるのか?、という疑問に突き当たります。当然ウエストに括られて然るべきですが、この中でハッキリとウエストのミュージシャンであると言われているのはMckusickくらいですよね。

つまり、楽理、演奏法で区分けできるバップやモード、エモーショナルな味わいやノリで括られるファンキージャズやソウルジャズなどとは違い、ウエストコーストジャズは「これがウエストだ」という明確な境界線が、年代と地理以外にはないんですね。なぜこういった曖昧な定義がされるようになったのかはわからないのですが、アルバムをジャンルごとに分類する事は、実は売り手側の都合なのかな?と、最近では思ったりします。





>ジャズの音楽的展開はトレーンやオーネットで一応終了した



よく「ジャズはもう終わっている音楽だ」なんて言いますよね。

そうかもしれませんね。

フリージャズがひと段落して以降の、フュージョン、コンテンポラリージャズの流れなどは、他のジャンルのリズムや楽器編成を取り入れるといった、言ってみれば延命措置のようなものだと思います。

ただ、個人的にはそれで構わないと思っています。

歴史に名を残すというのは「その時代に革新的であった」という事であって、革新的であってもなくても聴き手としてはあまり不都合はないというか・・・・・(笑)。

そんな風に思っています。



ではでは。
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おっさんの音楽 (グラントグリーンは命だ)
2005-04-26 21:48:16
ウエストコーストジャズのイメージは勿論楽理だけじゃなく地理特性やファッションからも説明できます、その集合と言える、ウエストコーストのイメージはいずれにせよ確かに存在しますからね。ジャズそのものは終わりはない、今はブラッドメルドー命ですね、音楽にとって理論展開は一要素でしかないと思います、もっと本質的なものはフレーズや楽器演奏テクニック、歌心ではないでしょうか。
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ビバ歌心!!! (TARO)
2005-04-26 22:22:09
>グラントグリーンは命ださん



再びの御来訪、ありがとうございます。

グラント・グリーン命なんですか?、また渋いですね(笑)。





>本質的なものはフレーズや楽器演奏テクニック、

>歌心ではないでしょうか。



その通りだと思います。

ジャズだけでなく何の音楽においても、ひとえに本質は歌心に尽きます。どんな楽理やコンセプトで演奏されていようとも、歌心がない音楽に、僕は価値を見出せません。

歌心と、それを表現するための技術力、このふたつに音楽を音楽たらしめるすべてがあります・・・・つまりフレーズが歌わないヤツや下手なヤツはダメって事(笑)。

僕はこの「歌心」という言葉が大好きで、常々僕がこのブログに何かを書いたりジャズの同好の士と語る時に頻繁に用いるキーワードのようになっています(笑)。

楽理の理解や演奏法の発展、時代時代のムーブメントに目を向ける事は楽しいですが、それは聴き手側にとって本質ではない。

本質はただ一点、「聴いて楽しむ事」にあります。知識は楽しむための調味料のようなものでしょうか(笑)。



僕の現在の「命!」はMichel Camiloかな(爆)。



ではでは。
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お疲れ様です (にっちもさっちも)
2021-08-27 00:25:34
ジャズの博識、恐れ入ります。
ただ、ジャズの分類は難しい気がします。
以前、小生はジャズも大好きですが、ブルースが大好物で、テリトリー分けしたのですが、迷路に迷い込んだ気がします。デルタ、カントリー、シティ、プレ・ワー、モダン、アーバン、シカゴ、ディープ、テキサス、西海岸、諸々・・・
後で考えてみると、シカゴやテキサスなどの「地域」、流行った時期・戦前(株大暴落前?)、戦後、エレキ使用、ハープ(ハーモニカ)か管楽器か、白人・黒人か、など区分けするキー項目で、極論すると無限に出てくるよ。
で、、あまり厳密に考えずに、自分の好きなのは「これ」てんでトラ🐯まえるのが精神衛生上宜しいのでは、と思うこの頃です!!!!
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Unknown (もり )
2023-08-31 08:43:01
エディ・コスタ嬉しいです。長生きしてればもっと楽しめたのに。エディは州兵として仙台川内キャンプにいたので、仙台生まれの私は親しみがあります。
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