Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

難しい国会答弁

2005-05-14 18:11:44 | 国内
JR西日本の垣内社長は、5月13日、衆議院国土交通委員会の参考人招致を受けた。その席上、快速電車が衝突したマンションについて、「買い取って慰霊碑的なものを作ることも検討するべきではないか」との委員の質問に対し、垣内社長は、「住民とはいろいろな話をさせていただきたい。買い取って慰霊的なものをつくることも大変重要な課題のひとつ」と答えた。

NHKのテレビ報道を見ていたら、マンション住民のひとりがインタビューに答えて、「垣内社長の発言には反感を持つ。第一、JR西日本は、怪我など負った被害者、犠牲者の遺族、マンションの住民たちなどと、これまでまったく誠意ある話し合いを進めようとはせず、そのため、何ひとつ合意に達したものなどないじゃないか。そのような段階で、マンションを買い取って慰霊碑的なものを作るなどと軽々しく発言するのは、それ自体が許せることではない」という意味のことを語っていた。

委員の質問は、質問内容がおそらく事前に届いていたのだろう。だから、垣内社長の答弁は一見模範解答であり、一歩踏み込んだと感じられる内容であった。だが、それは事故被害者の立場を無視した発言だったかもしれない。

また、事故現場における担当職員の対応において、被害補償額を巡り、駆け引きがおこなわれているような段階だったら、場合によっては事故被害者に対する裏切りとも取られかねない発言だったかもしれない。一般国民の理解を得るため、事故被害者を切り捨てようとしていると邪推される危険性がある。

JR西日本は、今回の事故に関して特別の事故収拾プロジェクト・チームを編成して事故処理を進めているものとみられる。このプロジェクトの管理運営責任者が誰かは知らないが、その人物は陰に隠れて、日々費消するコストも、収拾に向けての日々のスケジュールも、マスコミへの広報対策も、政府との折衝も、すべてバランスよく、遅滞なくこなしていかなければならない。

垣内社長や徳岡専務(鉄道本部長)は、いずれも彼にとっては、適宜適時自在に動いてもらうべき舞台役者の存在に過ぎない。役者といって悪ければ、必要に応じて切るべきトランプカードに過ぎないのだ。

もちろん、JR西日本がプロジェクト・チームを編成して事故処理に対処しているからといって、それがよくないというわけでは毛頭ない。JR西日本のような大きな企業組織であれば、プロジェクト方式を採用して組織効率を高めた対応をしていくほうがむしろ望ましい。

けれども、こういうやり方は往々にして、プロジェクトを力で操る陰の実力者が出がちであり、それが闇の中に潜んだまま事を動かすようになりやすい。だから、JR西日本としては、事故収拾プロジェクトの実態についてもっと明確な形で公表すべきではなかろうか。また、その一方で、新聞などの報道機関にも、そういう面での報道にもっと力を入れるよう要望したい。


朝日新聞
電車激突マンションの買い取り検討 衆院委でJR西社長
2005年05月13日13時06分

 107人の死者を出した兵庫県尼崎市のJR宝塚線(福知山線)の脱線事故で、衆院国土交通委員会は13日、JR西日本の垣内剛社長、同社鉄道本部長の徳岡研三専務らを参考人招致した。垣内社長は冒頭で事故について謝罪。また、同社はこれまで再発防止策を内部で検討する方針を表明していたが、「企業風土の改革こそが大変重要。安全対策に外からの視点を入れるのが必要だ」と述べ、外部の有識者を起用した安全諮問委員会を設置する考えを初めて明らかにした。電車が衝突したマンションを買い取り、慰霊施設をつくることについても前向きに検討する姿勢を見せた。

 委員会では冒頭、全員が起立して、犠牲者に黙祷(もくとう)をささげた。垣内社長は答弁の最初に「亡くなられた方の無念、遺族の心情を思うと胸が張り裂ける気持ち。まさに痛恨の極み。深くおわびしたい」と謝罪した。

 垣内社長は、脱線事故が起きた背景について「今回の重大な事故の発生を考えると、第一線の現場の安全確保の取り組みに不十分、形式に陥った面があった」と反省の言葉を述べた。

 また、JR西日本の経営理念についても「安全優先をする企業風土の構築という観点から、見直しを議論したい」と表明し、改善すべき点があったことを認めた。

 そのうえで、安全対策全般を見直すためには外部の視点が必要だという認識を示し、第三者を起用した「安全諮問委員会」の設置を検討していることを明らかにした。

 質疑では、電車に乗り合わせた2人の運転士が乗客を救助しなかったことや、社員が宴会やボウリング大会に出ていた問題への批判が相次いだ。垣内社長は「本当に信じられない、情けない気持ち。決められたことさえすればいいという風潮が出ていたのかもしれない」と自らの企業体質に言及。「企業の風土を変えたい。一から出直して、恥ずかしいことの絶対起こらない企業にしなければならない」と語った。

 運転士に過大な重圧を与えていると批判を浴びた「日勤教育」と呼ばれる再教育システムのあり方については「他社の例も参考に、より効果的な形に改善していきたい」(徳岡専務)と見直す意向を示した。

 また、快速電車が衝突したマンションについて、垣内社長は「買い取って慰霊碑的なものを作ることも検討するべきではないか」という委員の質問に、「住民とはいろいろな話をさせていただきたい。買い取って慰霊的なものをつくることも、大変重要な課題のひとつ」と前向きに検討する姿勢を見せた。

 自らの進退については、「社で最も痛みを感じているのは私。その痛みを全社員に伝えて、先頭に立って企業風土の改革に取り組むことが、責任のあり方」と答え、当面、辞任する考えのないことを改めて示した。

 参院の国土交通委員会は16日に現地視察をした上で、17日に垣内社長らに対する参考人質疑をする。小泉首相が出席する16日の衆院予算委員会でも、脱線事故がテーマのひとつに取り上げられる見通し。


JR西日本

JR宝塚線塚口~尼崎駅間における
脱線事故についてのお詫び


 4月25日、JR宝塚線(福知山線)塚口~尼崎駅間で発生した脱線事故におきまして、弊社をご利用の多くのお客様がお亡くなりになられました。お亡くなりになられた皆さまのご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまに対しまして、深くお詫び申し上げます。

 また、多くのお客様が今回の事故で負傷されました。弊社といたしまして、心からのお見舞いとお詫びを申し上げますとともに、一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

 お客様の安全を守るべき鉄道事業者として、今回の事故は決してあってはならないものであり、今後あらゆる側面から事故の再発防止に全力をあげて取り組んでまいります。また、被害にあわれたお客様、ご遺族、ご家族の皆さま、マンション住民の皆さまには、全社あげて誠心誠意対応させていただく所存です。

 今回の事故原因の徹底的な究明は、再発防止への取り組みの元となることから、弊社といたしましては、現在行なわれている関係機関による調査、捜査に、全面的に協力してまいります。

 あわせて、お客様の救助活動に全力であたっていただきました消防、警察を初めとする関係機関各位、そして救助活動にご理解とご協力をいただいた地元の皆さまに、この場をお借りいたしまして衷心より御礼申し上げます。

 重ねてではございますが、今回の脱線事故について会社を代表いたしまして謹んでお詫び申し上げますとともに、今後の再発防止への真摯な取り組みをお誓いいたします。

平成17年4月30日

西日本旅客鉄道株式会社
代表取締役社長 垣内 剛



JR西日本

「福知山線列車事故相談室」
の開設について


平成17年5月2日
西日本旅客鉄道株式会社


 福知山線塚口~尼崎駅間で発生した快速電車脱線事故によりお亡くなりになられたお客様のご遺族の皆さま、
ならびに負傷されたお客様などのご相談窓口として、次のとおり「福知山線列車事故相談室」を開設しました。
 
1 開設月日 平成17年5月2日(月)

2 業務内容
(1) お亡くなりになったお客様のご遺族のご相談対応など
(2) 負傷されたお客様のご相談対応など
(3) その他被害を受けられたお客様に関わる対応など

3 場所 JR西日本本社ビル1階(大阪市北区芝田二丁目4番24号)

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