ごくまれ日記

思いついたこと、書きたいことをごくまれに投稿します。

ガリア戦記

2008-02-08 10:38:21 | つれづれ
カエサルの『ガリア戦記』(国原吉之助訳)を一気に読了した。
2000年前の書物を読んで、いにしえのローマ市民と同じ熱狂を共有できることがまずうれしい。

カエサルの文章の流麗さは、ラテン語の原文を読んでいるわけなのでそれをうかがい知ることはできないが、感じるのはとてもシンプルな文章であること。無駄な部分がない。

驚いたのは、敵の事情について非常によく調べていること。これだけ情報を集めているから、数年でガリアを征服できたのだろう。ビジネスでも同じことがいえる。

また、カエサルは無敵だというイメージは強いが、いろいろな局面で負けていることが意外だった。それをほとんど隠さず書いているのも驚きである。しかし、負ける戦いではできるだけ被害が少なくなるようにしている。というより、自ら戦おうとして仕掛けた戦争は確実に勝ち、不意に仕掛けられたものや形勢不利とあらかじめわかっているものについては無理をしないということだろう。

それから、これも意外と感じたことだが、クレメンティア(寛容)の精神をモットーとしているが、蛮族に対してはあまりそうではないと感じる。特に約束を破って裏切ったガリア人に対しては、皆殺しや両腕を切り落とすなどの冷酷な処置も行っている。カエサルは人道主義から寛容な姿勢をとっているのではなく、それが政策として最も適切だからそうしているだけなのだろう。

ガリア戦記はカエサルが書いたものが7巻目までで、その後はヒルティウスが8巻を書き足し、『内乱記』への橋渡しをしている。

ついつい次が気になるので、『内乱記』へ進み彼がルビコンを渡るところを読んでみたいと思う。その後、アレキサンドリア戦争、アフリカ戦争、ヒスパニア戦争について書いたと言われているが、その原典は現代までに失われ、ヒルティウス作といわれる『アレキサンドリア戦記』や、『アフリカ戦記』『ヒスパニア戦記』に続いていく(国原吉之助『ガリア戦記』361ページ、講談社学術文庫)。

『アレキサンドリア戦記』をぜひ『内乱記』の後に読んでみたいと思うものの、邦訳は存在していない模様。英文版ならあるのだろうか。

ガリア戦記に関する感想で共感した部分が多かったのが下記の論評。
http://www.gaku.net/ukki/%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%88%A6%E8%A8%98.html

戦争はインフラ(特に城壁を超える壁を目の前に作るなど、工事の発想がすごい)だということを知り、実践したのはローマ人が最初ではないか。

それにしても、2000年前のヒーローが直接書いたものを読めるなんて、ロマンがあっていい。カエサルよありがとう。