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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

バーニー・ケッセル/お熱いのがお好き

2025-07-14 14:15:48 | ジャズ(その他)

50~60年代のモダンジャズをこよなく愛する私ですが、この時期の古い映画も結構好きで、それこそ一連のヒッチコック作品やオードリー・ヘップバーンの主演映画はあらかた見ています。ビリー・ワイルダー監督の映画も好きで、「サンセット大通り」「情婦」のようなシリアスな作品から「麗しのサブリナ」「アパートの鍵貸します」と言ったコメディまで代表作は全て見ました。「お熱いのがお好き(Some Like It Hot)」もそんなワイルダーの代表作で、トニー・カーティス&ジャック・レモンのコンビにセクシー女優の代表格マリリン・モンローがドタバタ劇を繰り広げる傑作コメディ映画です。

今日ご紹介するアルバムはそんな「お熱いのがお好き」の映画公開とほぼ同時期の1959年3月にコンテンポラリー・レコードからリリースされた作品です。映画のサウンドトラックは別に存在するようで、この作品はあくまで映画収録曲をモチーフにしたジャズ作品という扱いです。リーダーはバーニー・ケッセル。西海岸を代表する名ギタリストでコンテンポラリーの稼ぎ頭的存在でもありました。共演者には同じくコンテンポラリーの顔だったアート・ペッパー。本作では本職のアルトに加え、テナーやクラリネットも吹いています。フロントにはもう1人黒人トランぺッターのジョー・ゴードンが加わり、リズムセクションはジミー・ロウルズ(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)、シェリー・マン(ドラム)。さらにケッセルとは別にリズムギター専門でジャック・マーシャルが参加し、バックでひたすらズンズンとリズムを刻んでいます。

全10曲。全て映画の収録曲と思いますが、この映画のために新たに作られたのはオープニングトラックの”Some Like It Hot”のみ。後は元々知られている有名スタンダード曲や古いポップソングが中心です。まず、唯一の新曲である"Some Like It Hot"はベイシー風のスインギーなナンバー。ペッパーの珍しいテナーソロで始まり、ジョー・ゴードンのミュート・トランペット→ロウルズ→ケッセルとソロをリレーします。続く"I Wanna Be Loved By You"はマリリン・モンローのセクシーな歌声であまりにも有名な曲ですが、ジャズのインストゥルメンタル演奏は珍しいですね。この曲もオールドファッションなスイングジャズでここではペッパーはクラリネットを吹いています。3曲目"Stairway To The Stars"は「星へのきざはし」の邦題で知られるおなじみのスタンダード。この曲はソロはケッセルのみで、美しいバラード演奏です。4曲目"Sweet Sue"はヴィクター・ヤング作曲のスタンダード。この曲も30年代風のスイングジャズで、ケッセル→ペッパーのクラリネット→ロウルズ→ゴードンのカップミュートとリレーします。5曲目"Runnin' Wild"はアップテンポの曲で劇中でもマリリン・モンローがバンドをバックにウクレレを弾きながら歌うシーンが印象的です。メンバー全員でノリに乗った演奏を繰り広げますが、満を持してアルトでソロを取るペッパーが中でも輝いていますね。

後半(B面)最初の"Sweet Georgia Brown"も同じくノリの良いアップテンポの曲。ゴードン→ロウルズ→ペッパーのアルト→ケッセルと軽快にソロをリレーします。7曲目"Down Among The Sheltering Palms"と8曲目"Sugar Blues"は他ではあまり聞いたことない曲ですが、1910年代のポピュラーソングだそうです。前者はのどかなスローミディアム、後者はオールドファッションなスイングジャズでメンバー全員が小刻みにソロを繋ぎます。なお、ペッパーは前者はテナー、後者はクラリネットを吹いています。9曲目"I'm Thru With Love"は再びケッセルのギターソロのみをフィーチャーしたバラード。ラストの"By The Beautiful Sea"は賑やかな曲でゴードン→ペッパーのアルト→ロウルズ→ケッセルと鮮やかにソロをリレーして終わり。映画の舞台が禁酒法時代と言うことで20〜30年代風のややオールドスタイルの演奏ですが、その中でも西海岸の名手達が繰り広げるプレイはクオリティが高く、リーダーのバーニー・ケッセルはもちろんのこと、限られた出番で存在感を放っているアート・ペッパーはさすがの一言です。

 


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