ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ドン・ランディ/枯葉

2025-03-29 12:20:27 | ジャズ(ピアノ)

本日は変わったところでドン・ランディと言うピアニストの作品をご紹介します。決してメジャーではないですが60年代から70年代にかけてそこそこ活躍した白人ピアニストです。彼はジャンル分けが難しく、拠点は西海岸に置いていたもののいわゆるウェストコーストジャスとは少し違いますし、かと言って同時代のビル・エヴァンス等の叙情派とも少し違う。そもそもジャズ一筋と言うわけでもなく、セッション・ピアニストとしてビーチ・ボーイズやライチャス・ブラザース等のレコーディングにも参加していたようです。

本作はワールド・パシフィック盤「フィーリン・ライク・ザ・ブルース」と並んで彼のピアノトリオの代表作で1962年にヴァーヴ・レコードに吹き込まれたものです。原題はWhere Do We Go From Here?ですが邦題は「枯葉」です。メンバーにはリロイ・ヴィネガー(ベース)、メル・ルイス(ドラム)とそれぞれの楽器で西海岸を代表する名手が名を連ねています。

全8曲、自作曲が3曲、スタンダード等のカバーが5曲と言う構成です。オープニングは自作の"T.J.'s Blues"。コテコテのファンキー・チューンでランディが白人らしからぬ黒々としたピアノを聴かせてくれます。ファンキー系で攻めるのか?と思わせますが2曲目はガラリと雰囲気が変わり、愛らしい旋律が耳に残る”Waltzing Matilda”と言う曲。この曲はオーストラリアで昔から親しまれている歌で、国歌に準じた扱いを受けているとか。youtubeで検索すると壮麗な合唱バージョンが聴けますが、この曲を洒落たピアノトリオにアレンジしたランディのセンスが光ります。3曲目はコール・ポーターの”I Love Paris”、4曲目は"That's All"でどちらも有名なスタンダード曲。両曲とも原曲より速めのテンポで演奏されており、前者はドライブ感溢れる演奏、後者はスインギーなトリオ演奏に仕上がっており、特に後者ではリロイ・ヴィネガーの1分半にも及ぶベースソロも聴けます。

続いて後半(B面)。"Take 6"はランディのオリジナルでこちらも1曲目を超えるコテコテのファンキージャズ。ランディはホレス・シルヴァーが好きだったそうなので、その影響をうけたのでしょうが曲自体はどちらかと言うとボビー・ティモンズの"This Here"に似ています。6曲目"Interlude"もランディの自作曲ですが、こちらは一転してビル・エヴァンスも真っ青の叙情的なバラード。歌詞をつけて歌いたくなるような魅力的なメロディを持った名曲で、ピアノソロも素晴らしいです。本作でも一番の名曲・名演です。7曲目"Autumn Leaves"は邦題にもなっている「枯葉」です。他にいい曲がたくさんあるのになぜこの曲が?と思いますが、単純に日本人はこの曲が好きなのでしょう。私個人的にはこの曲は暗くてあんまり好きではないのですが。演奏自体は序盤メランコリックで中盤で盛り上がる展開で、この曲でもリロイ・ヴィネガーのウォーキングベースソロが聴けます。ラストの"Gypsy In My Soul"もスタンダード曲でドライブ感抜群の演奏です。以上、ファンキージャズから美しいバラードまでさまざまな演奏スタイルが楽しめる充実のピアノトリオ作品です。

コメント