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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ミヒャエル・ナウラ/ヨーロピアン・ジャズ・サウンズ

2012-10-18 23:07:55 | ジャズ(ヨーロッパ)

以前からちょくちょく取り上げている澤野工房のヨーロッパジャズ復刻版シリーズですが、今日はドイツのピアニスト、ミヒャエル・ナウラをご紹介します。ヨーロッパの中でもフランスや北欧、オランダ、ベルギーあたりはジャズが盛んというイメージがあるのですが、ドイツのジャズシーンと言われても正直ピンと来ません。ブルーノートにリーダー作を残したユタ・ヒップ、前衛派ピアニストのヨアヒム・キューンを辛うじて知っているぐらいでしょうか?このナウラなんて全くの初耳ですし。ただ、1963年録音の本作は一部コレクターの間では有名だったそうです。



共演ミュージシャンはペーター・ラインケ(アルト)、ヴォルフガング・シュリューター(ヴァイブ)、ヴォルフガング・ルシャート(ベース)、ジョー・ネイ(ドラム)で全員地元のミュージシャンだそうです。クインテット編成ですが、サックス+トランペットではなくサックス+ヴァイブという所がユニークですね。曲は全6曲で3曲がナウラのオリジナル。残りがオリヴァー・ネルソン、ジャッキー・マクリーン、タビー・ヘイズのカバーですが、有名曲は1曲もないので正直第一印象はすごく地味です。ただ、演奏の質が思ったより高く、聴いているうちに魅力に目覚めていきます。シュリューターの硬質なヴァイブの音色、ラインケの伸びやかなアルト、そして端正なリズムセクションが織りなすサウンドはハードバップ特有の奔放さこそないものの、いかにもドイツ的な様式美を見事に備えています。特に自作のバラード2曲“Night Flower”“Gruga Mood”は素晴らしいですね。スピーディなマクリーンのカバー“Dr. Jekyll”もまずまず。ドイツジャズ侮るべからず!と言ったところでしょうか?漆黒の闇にメンバー5人の顔がずらっと並ぶジャケットもインパクト大ですね。

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ウィルトン・ゲイナー/ブルー・ボギー

2012-10-10 23:05:49 | ジャズ(ヨーロッパ)
マイナーレーベル第4弾はテンポ・レコードに残されたウィルトン・ゲイナー「ブルー・ボギー」です。以前ご紹介した澤野工房発売の1枚ですね。テンポはイギリスのレコード会社で他にもタビー・ヘイズ、ジミー・デューカーらの録音が残されているようですが、彼らはともかくこのウィルトン・ゲイナーというテナー奏者については全く未知の存在でした。ジャケットを見ればわかるように黒人で、ジャマイカからロンドンに渡ってきてプレイしていたようです。同じような経歴の持ち主でトランペッターのディジー・リースがいますが、ブルーノートにリーダー作を残す幸運に恵まれた彼と違い、このゲイナーは終生無名のままヨーロッパでひっそり演奏活動を行っていたようです。



1959年録音の本作はワンホーンのカルテット編成で、他のメンバーはテリー・シャノン(ピアノ)、ケニー・ナッパー(ベース)、ビル・エイデン(ドラム)。全て地元イギリスのジャズメン達です。ハードバップ全盛期とあってゲイナーのプレイも本場の黒人ジャズを強く意識したもので、テクニック的に特筆すべきものこそないものの、哀調を帯びたブルージーなプレイには捨て難い魅力があります。曲は全6曲。スタンダードの“The Way You Look Tonight”、クリフォード・ブラウンの“Joy Spring”のカバーもありますが、お薦めはむしろ自作曲の方。歌謡曲チックなマイナーキーの“Wilton's Mood”、ファンキー節全開の“Rhythm”、そして本作のハイライトである美しいバラード“Deborah”と魅力的な楽曲が揃っています。タイトル通りブルーに統一されたジャケットも秀逸ですね。
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ケニー・クラーク&フランシー・ボラン/ジャズ・イズ・ユニヴァーサル

2012-10-02 12:23:57 | ジャズ(ヨーロッパ)
先日ジョン・ルイスとサシャ・ディステル、バルネ・ウィランとの共演盤を紹介しましたが、ジャズ黄金期にはアメリカから多くのミュージシャンがヨーロッパに渡って活動しました。その多くは一時的なツアーでしたが、中には完全に移住してしまった人達もいます。バド・パウエル、デクスター・ゴードンらが有名ですが、今日紹介するケニー・クラークもその代表格でしょう。彼はバップ・ドラムの開祖と呼ばれ、アメリカのジャズ界でも重鎮的な存在でしたが、黒人差別の根強い本国に見切りをつけたのか56年にさっさとパリに定住してしまいます。その後の彼は現地のミュージシャンと積極的に演奏活動を行った後、1961年にベルギー人のフランシー・ボランと組んでジャズ史に名高い「クラーク=ボラン・ビッグバンド」を結成。本作はアトランティックに録音された記念すべき第1作目です。



メンバーは計13人。各国のトッププレイヤーが集まっており、さながらジャズのヨーロッパ選手権と言った趣です。ざっと国別に紹介してみましょう。ジャケットの国旗の左上からオーストリア代表カール・ドレヴォ(テナー)、ベルギー代表フランシー・ボラン(ピアノ)、イギリス代表ジミー・デューカー(トランペット)&デレク・ハンブル(アルト)、フランス代表ロジェ・ゲラン(トランペット)、スウェーデン代表オーケ・パーション(トロンボーン)、トルコ代表アフメド・ムバファクファライ(トランペット)、そしてアメリカからもケニー・クラーク(ドラム)、ベニー・ベイリー(トランペット)、ナット・ペック(トロンボーン)、ズート・シムズ(テナー)、サヒブ・シハブ(バリトン)、ジミー・ウッド(ベース)が参加しています。

曲は全7曲。誰か特定のミュージシャンにスポットライトが当たるのではなく、各人に少しずつソロの機会が与えられる形式を取っています。基本的にはこれぞビッグバンドと言った感じの華々しいホーンセクションが繰り広げられるアップテンポのナンバーが中心ですが、個人的お薦めは2曲だけ収録されているバラード。“Gloria”はカール・ドレヴォの独壇場で、そのダンディズム薫るテナーに心を奪われます。“Volutes”はゆったりしたホーンアンサンブルが幻想的なムードを盛り上げる中、前半はボランのピアノ、後半をナット・ペックのトロンボーンがソロを取ります。それ以外では最後を飾る“Last Train From Overbrook”がいいですね。キレのいいブラスをバックにベイリー、シハブ、ドレヴォ、シムズが軽快にソロを交換して作品を締めくくります。
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ジョン・ルイス&サーシャ・ディステル/アフタヌーン・イン・パリ

2012-09-29 16:40:30 | ジャズ(ヨーロッパ)
前回に引き続きフランス関連のジャズです。本日紹介するのはMJQのピアニストであるジョン・ルイスとフランスのギタリスト、サーシャ・ディステルとの共演作ですね。録音は1956年12月、MJQの一員として訪欧中のジョン・ルイスがパリで録音したもので、共演のディステルのギターもさることながらフランスの誇る名テナー、バルネ・ウィランの参加が目を引きます。リズムセクションは録音日で異なっており、12月4日がパーシー・ヒース(ベース)とケニー・クラーク(ドラム)、12月7日がピエール・ミシュロ(ベース)とコニー・ケイ(ドラム)です。フランス人のミシュロを除けば新旧のMJQメンバーというのも注目ポイントですね。



曲は全て有名なスタンダードばかりですが、演奏の質が高いのでどれを聴いてもハズレなしです。特に当時19歳(!)だったバルネ・ウィランが素晴らしく、“Dear Old Stockholm”や“All The Things You Are”での力強いテナーに思わず聴き惚れてしまいます。ジョン・ルイス最大の名曲“Afternoon In Paris”はこのために書かれたわけではありませんが、やはりフランスの空気を感じられる本作のバージョンが一際充実の出来です。ミルト・ジャクソンの名曲“Bags' Groove”ではディステルとウィランが黒人顔負けのブルージーな演奏を聴かせてくれます。ジョン・ルイスはと言うと、MJQでもそうなんですがピアノソロでも派手にアピールする訳ではなく、フランスの俊英2人をサポートしているという感じが好ましいですね。エッフェル塔をバックにしたジャケットも印象的な名盤です。
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ジョルジュ・アルヴァニタス/ソウル・ジャズ

2012-09-22 11:28:52 | ジャズ(ヨーロッパ)

今日はちょっと路線を変えてヨーロッパ・ジャズの名盤を紹介したいと思います。ジャズ好きの人なら皆さん澤野工房というレーベルをご存じだと思います。大阪の小さなレコード会社ですが、ヨーロッパの知られざるジャズメン達の録音を発掘し、続々とCD化してきました。タワーレコードなど大きなCDショップに行けば専門のコーナーがありますね。基本は今活躍しているジャズメン達の録音が中心ですが、何枚かは50~60年代の復刻版があり、本日紹介するジョルジュ・アルヴァニタス「ソウル・ジャズ」はそのうちの1枚です。録音は1960年、オリジナルの発売元はフランスコロンビアだそうです。



本作のメンバーは全てフランス人。リーダーのジョルジュ・アルヴァニタス(ピアノ)、ベルナール・ヴィテ(ビューグル)、フランソワ・ジャノー(テナー)、ミシェル・ゴドリー(ベース)、ダニエル・ユメール(ドラム)から成るクインテットです。ビューグルという楽器は聴き馴染みがありませんが、ラッパの一種ですね。おフランスのジャズということでさぞかし上品でエスプリの利いた演奏、と思ってしまう方もいるでしょうが、CDのプレイボタンを押した瞬間に聴こえてくるのはバリバリのファンキーチューン“This Here”。本家キャノンボール・アダレイ・クインテットに勝るとも劣らないホットな演奏に意表を突かれること間違いなしです。その後に続くのもセロニアス・モンク、バド・パウエル、ソニー・ロリンズ、マックス・ローチ、オスカー・ペティフォードなどビバップの名曲のカバーばかり。演奏もそれらバップ曲のフランス風解釈などではなく、全てど真ん中直球勝負。つまり、これは当時のフランスのジャズメン達の本場アメリカの黒人ジャズへの熱い想いが凝縮された1枚なのです。

オリジナルは1曲もなく全てカバーですが、当時のフランスの俊英達が集まっただけあり、演奏の質は文句なし。どの曲もアルヴァニタスの華麗なピアノソロが存分に堪能できますが(特にハードドライビングな“Oblivion”は最高!)、共演陣も素晴らしく、特にテナーのジャノーは“Sonnymoon For Two”でロリンズばりの骨太なブロウを、“Monk's Mood”では哀愁感たっぷりのプレイを聴かせてくれます。ユメールがマックス・ローチを彷彿とさせるドラミングを披露する“Mister X”もいいですね。締めくくりはメンバー全員が軽快なソロを取る“Bouncin' With Bud”。単なる本場の物マネに終わらず、確かな演奏技術と質の高いアドリブに裏打ちされた真のハードバップ名盤となっております。

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