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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

スタンリー・タレンタイン/ネヴァー・レット・ミー・ゴー

2020-10-29 20:36:23 | ジャズ(ソウルジャズ)

約2カ月ぶりの更新です。ここ3年近くはクラシックのCDばかりアップしていましたが、その間にジャズCDもいろいろと復刻されていますので、今日からはそれらを取り上げたいと思います。第1弾はスタンリー・タレンタインの1963年のブルーノート盤「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」です。タレンタインは60年代のブルーノートを代表するスターで、本ブログでも過去に5作品ほど取り上げています。当時のタレンタインは特に共演メンバーを固定せず、作品によってホレス・パーラン・トリオ、スリー・サウンズ、西海岸のレス・マッキャン・トリオ等さまざまなメンツと組んで録音を残していますが、本作は「ディアリー・ブラヴド」に続いて当時の奥方シャーリー・スコットと組んだ1枚です。ブルーノートでは他には「ハスリン」「ア・チップ・オフ・ジ・オールド・ブロック」「コモン・タッチ」でスコットと共演しています。一方、スコット自身も売れっ子オルガン奏者としてプレスティッジから多くのリーダー作を発表しており、そちらにはタレンタインがゲストとして参加。他にインパルス盤やアトランティック盤でも共演するなど、ジャズ界を代表するおしどり夫婦として有名でした。(その割には70年代に離婚してしまいますが・・・)

メンバーはタレンタイン&スコット夫妻に加え、メージャー・ホリー(ベース)、アル・ヘアウッド(ドラム)、レイ・バレト(コンガ)という顔ぶれ。“Never Let Me Go”と“They Can't Take That Away From Me”の2曲のみベースがサム・ジョーンズ、ドラムがクラレンス・ジョンストンに代わっています。オルガン入りと言うことで、一応ソウルジャズの範疇に入るのでしょうが。そこまでコテコテではありません。R&B色の強いのは1曲目のロイド・プライス作“Trouble”くらいで、後は歌モノスタンダードありブルージーな曲ありとバラエティ豊かな内容です。軽快なスタンダード“Without A Song”、スコット自作のバラード“Never Let Me Go”も出色の出来ですが、とりわけ素晴らしいのが“You'll Never Get Away From Me”。ミュージカル「ジプシー」の挿入曲であまり知られていない曲ですが、タレンタインの歌心あふれるテナーとスコットのグルーヴ感満点のオルガンが抜群にマッチした名曲・名演です。

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フレディ・ローチ/ダウン・トゥ・アース

2017-01-24 13:02:16 | ジャズ(ソウルジャズ)

2017年第2弾は先日のビル・エヴァンスから一転して、濃厚なオルガン・ジャズをご紹介しましょう。オルガン・ジャズと言えば、何と言っても以前に紹介したジミー・スミスが第一人者ですが、それ以外にもブルーノートにはベビーフェイス・ウィレット、ジョン・パットン、ラリー・ヤング、ロニー・スミス、ルーベン・ウィルソンそしてこのフレディ・ローチ等が在籍しており、60年代ブルーノートが強力にプッシュしていた路線です。ただ、日本のジャズファンのテイストにはこう言ったコッテリしたジャズはあまり合わないのか、あまり取り上げられることはないですね。かく言う私も特にオルガン・ジャズの愛好者というわけではありません。一連のオルガン・ジャズの作品群にはジャズと言うより、むしろR&B寄りのものも多く、ノリは良いけど深みはイマイチ、と言った作品も正直多いんですよね。そんな中で今日取り上げる「ダウン・トゥ・アース」はタイトル通りアーシーな要素をたっぷり含みながら、楽曲の質も高く、繰り返し聴いても飽きない内容となっています。



録音は1962年8月。ローチは前年にテナー奏者アイク・ケベックの「ヘヴィ・ソウル」にサイドマンとして参加し、本作が初のリーダー作となります。メンバーはローチに加え、パーシー・フランス(テナー)、ケニー・バレル(ギター)、クラレンス・ジョンストン(ドラム)から成るカルテットです。パーシー・フランスと言うテナー奏者に関してはあまり聞いたことがありませんが、おそらくR&B畑の人でしょう。注目すべきは個人的にナンバーワン・ジャズギタリストと崇めているバレルの参加ですね。実際にアルバム全編に渡って素晴らしいプレイを披露しており、リーダーのローチと同等かそれ以上の目立ち具合です。1曲目“De Bug”で、テーマの後に続くバレルのソウルフルなギターソロがたまりませんね。リーダーのローチはと言うと、もちろんファンキーなオルガンを聴かせてはくれますが、どちらかと言えば作曲者として大きく貢献していると思います。ヘンリー・マンシーニが作曲したミュージカルナンバー“Lujon”(これもまたなかなかの佳曲です)を除いて他の5曲は全てローチの描き下ろしですが、単にノリが良いだけでなくメロディもツボを抑えており、思わず口ずさみたくなるキャッチーなナンバーばかりです。特に“Althea Soon”と“More Mileage”の2曲が強くお薦めです!

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スタンリー・タレンタイン/ディアリー・ビラヴド

2016-02-19 23:27:58 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日UPするのはスタンリー・タレンタインが1961年にブルーノートに吹き込んだ「ディアリー・ビラヴド」です。“愛する君へ”というタイトルに、バラの花束を持つタレンタインのカラージャケットが印象的ですが、花束をプレゼントする相手は前年に結婚したばかりで本作でも共演しているシャーリー・スコットでしょうね。スコットは女流オルガン奏者として50年代後半に颯爽とシーンに登場。この時点で名門プレスティッジに10枚を超えるリーダー作を録音していた売れっ子です。一方のタレンタインも前年に「ルック・アウト!」でブルーノートにデビューするや、立て続けに4枚ものリーダー作を発表するなど当時ブルーノートが会社を挙げて猛プッシュしていた存在です。そんな公私ともにホットだった2人による共演とあって、アルバムの方も充実した内容です。メンバーはタレンタイン(テナー)&スコット(オルガン)の新婚カップルに加え、ドラムのロイ・ブルックスが加わったトリオ編成です。オルガン入りの編成にベースが加わっていないことはよくありますが(ハモンド・オルガンにはフットベースの機能があるため)、そういう場合はギターが加わっていることがほとんどですので、テナー+オルガン+ドラムのトリオは珍しいですね。にもかかわらず、生み出されるサウンドは豊潤で奥行きのあるもので、たった3人で演奏しているとはとても思えません。



全7曲。うちタレンタイン自作のブルース“Wee Hour Theme”と古い黒人霊歌の“Troubles Of The World”の2曲を除いて、後は歌モノのスタンダード曲です。オルガン入りのジャズはソウルジャズと呼ばれ、どうしてもR&B寄りのギトギトした演奏になりがちですが、本作はポップな選曲とタレンタインの歌心あふれるテナーのおかげで非常に聞きやすい作品に仕上がっています。1曲目“Bahia”はアリ・バローゾというブラジル人作曲家の作品で、コルトレーンのカバーでも知られています。冒頭、タレンタインのアーシーなブロウで幕を開けますが、その後は彼の真骨頂とも言えるメロディアスなアドリブでサンバの名曲を鮮やかにソウルジャズに料理しています。“My Shining Hour”もコルトレーンが「コルトレーン・ジャズ」で取り上げていましたが、個人的にはこちらの方が上と思います。タレンタインの目の覚めるような素晴らしいテナーソロの後に続く、スコットのグルーヴィなオルガンが最高です。アルバムタイトルにもなった“Dearly Beloved”はジェローム・カーン作曲でフレッド・アステアが歌ったスタンダードですが、トリオのホットな演奏によりパワフルなソウルジャズに生まれ変わっています。お薦めはこの3曲ですが、けだるいブルース風の“Yesterdays”やティナ・ブルックスの名演でも知られるバラード“Nothing Ever Change My Love For You”も捨てがたい魅力を放っています。

結局、タレンタインとスコットはジャズ界きってのおしどり夫婦として60年代だけで10枚を超えるアルバムで共演。ブルーノート盤「ハスリン」やインパルス盤「レット・イット・ゴー」等多くの名盤を残しましたが、70年代に入るとあっさり離婚してしまいます。夫婦間に何があったのかわかりませんが、伝えられている理由は音楽上の志向の違いとか。ちょうどこの頃、タレンタインがフュージョン路線に転向したのと関係があるのかもしれませんね。もちろん、本作の時点でそんな未来のことはわかるはずもなく、幸せの絶頂にあった2人が生み出した最高にハッピーなジャズが味わえる珠玉の一枚です。

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カウント・ベイシー・プレゼンツ・エディ・ロックジョー・デイヴィス

2015-10-31 22:26:08 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日はカウント・ベイシーのルーレット・レーベルの再発コレクションからの1枚です。ルーレット時代のベイシー楽団と言えば「アトミック・ベイシー」「チェアマン・オヴ・ザ・ボード」等の名盤が有名ですが、今日ご紹介するのはビッグバンド作品ではなく、当時バンドの花形ソリストだったエディ・ロックジョー・デイヴィスのテナーを大々的にフィーチャーしたコンボ作品です。ロックジョーはR&Bの流れを組むソウルジャズ界の大物として名門プレスティッジに20枚近くのリーダー作を残していますが、なぜか日本では彼の作品は全くと言っていいほど無視され、CDでお目にかかる機会はまずありません。どうやら彼のようにブリブリ吹き鳴らすテナーは“ホンカー”と呼ばれ、ジャズを芸術と崇める評論家からは大衆音楽として切って捨てられたようです。ただ、本場アメリカでのステイタスが高かったということは、御大ベイシーが全面的にバックアップした本作からもわかります。ベイシー楽団には他にもフランク・フォスター、フランク・ウェス、エリック・ディクソンら名だたるテナー奏者がいましたが、ここまで大きくフィーチャーされたのはロックジョーだけですからね。



メンバーは計6人。ベイシー楽団の3人、つまりカウント・ベイシー(ピアノ)、ジョー・ニューマン(トランペット)、ブッチ・バラード(ドラム)とエディ・デイヴィス・トリオ、つまりロックジョー(テナー)、シャーリー・スコット(オルガン)、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)の3人の組み合わせです。名義上のリーダーであるベイシーがソロを取る場面は少なく、代わりに女流オルガン奏者として売り出し中だったスコットがソロにバッキングに大活躍し、濃厚なソウルジャズの雰囲気を醸し出しています。曲はスタンダードが6曲とロックジョーのオリジナルが4曲。オリジナルはどれもR&B色の強いコテコテの曲ばかりで、特にスコット→ベイシー→ニューマン→ロックジョーが次々と卓越したソロを取るブルース“A Misty One”が秀逸です。スタンダードは“Broadway”“Marie”等アップテンポのナンバーではロックジョーがホンカーの本領を発揮してワイルドにブロウしまくりますが、スローナンバーの“Don't Blame Me”“Save Your Love For Me”では一転してダンディズムあふれるバラード・プレイを聴かせてくれます。個人的にはバラードの方により魅力を感じますね。日本では不当に過小評価されたロックジョーですが、その実力を知る上でも聴いて損はない1枚です。なお、録音年月は1957年12月です。

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ハンク・クロフォード/ザ・ソウル・クリニック

2013-04-21 23:18:20 | ジャズ(ソウルジャズ)
保守的なジャズファンからはモダンジャズの範疇に入れてもらえないことも多いソウルジャズですが、当ブログではこれまで分け隔てなく紹介してきました。ただ、本音を言うとこのジャンルには単に当時のヒット曲をインストゥルメンタルで演奏するだけの安易な企画が多いのも事実です。特に60年代半ば以降はその傾向が顕著ですね。ビートルズやモータウンが爆発的にヒットしたのもこの頃ですので、ジャズ界もその嵐に飲み込まれたのでしょう。今日ご紹介するハンク・クロフォードも後年になるとやたら大編成のゴテゴテしたアルバムが多くあまり食指が動かないのですが、以前にご紹介した初リーダー作「モア・ソウル」とその続編とも言える本作(1961年録音)はシンプルな編成でコンセプトもしっかりした好盤です。



メンバーはリーダーのクロフォード(アルト)に加え、フィリップ・ギルボー(トランペット)、ジョン・ハント(フリューゲルホルン)、デイヴィッド・ニューマン(テナー)、リロイ・クーパー(バリトン)、エドガー・ウィリス(ベース)、ブルーノ・カー(ドラム)。前作「モア・ソウル」とドラム以外は全員一緒です。ただ、ソロを取るのはほぼクロフォードのみで、他のメンバーはアンサンブルに徹しています。1曲だけ例外がスタンダードの“What A Difference A Day Made”。ここでは全編にわたってトランペットのギルボーが素晴らしいバラードプレイを聴かせてくれます。アルバム中最もジャズ色の強い曲で、ひそかに個人的ベストトラックかも?他は“Please Send Me Someone To Love”“Playmates”とR&B色の強い曲が中心で、重厚なホーンアンサンブルをバックにクロフォードがソウルフルなアルトを聴かせてくれます。試験管片手に何かを実験中?のクロフォードを写したジャケットもユニークですね。
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