goo blog サービス終了のお知らせ 

昇任試験の記録

昇任試験の記録や発見を残すもの。でもって、試験前の最終点検に使う。ぬ

憲法10分(統治)4

2013-12-25 20:14:17 | 憲法
統治行為
すべて司法権は、最高裁判所および法律の定めにより設置する下級裁判所に属する(76条)

裁判所は一切の法律上の争訟を裁判するが次のような限界がある
○憲法が明文で認めた限界(議員の資格争訟裁判、裁判所の弾劾裁判)

○確立された国際法規や条約に基づく限界(治外法権)

○事柄の性質上裁判所の審査に適しない事項(国会の自律権=懲罰や議事手続き等、政治部門の自由裁量行為、統治行為)

統治行為とは国家機関の行為のうち高度の政治性を有するため、法的判断は可能であっても司法審査から除外される行為をいう

判例
○安保条約は主権国としてわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有し、司法審査になじまない。一見極めて明白に違憲無効でない限り裁判所の司法審査権の範囲外(砂川事件)

○衆議院の解散のごとき国家統治の基本に関する高度に政治性のある国会行為は、有効無効の判断が法律上可能であっても裁判所の審査権の外にある(苫米地事件)




違憲審査制
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則、処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である(81条)

違憲審査制は、憲法の最高法規性や基本的人権の尊重(国民の権利自由の侵害を排除)を根拠とする

違憲立法審査権の性格は、具体的争訟を裁判する際の付随的審査権と解されている

※具体的事件と無関係に違憲性を審査することはできない(警察予備隊違憲訴訟)

下級裁判所にも違憲審査権を有し、条例や裁判所の判決も違憲審査の対象となる

違憲判決の効力については、当該判決を受けた法律は効力を必ずしも失わない(個別的効力説=多数説)

※一般的効力説(法令は当然に効力を失う)

違憲審査制の限界
○統治行為

○法律は一般に合憲性の推定を受け、明白な誤りがなければ違憲と判断すべきでない

○違憲判断をせずに事件を処理できる場合、違憲判断を避けるべき




租税法律主義
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない(83条)

租税の賦課徴収は法律によることが必要である(84条)

※財政を国会のコントロール下においている

租税とは国や地方公共団体が課税権に基づいて使用する経費に充当するため強制的に徴収する金銭給付をいう

※使用料・手数料の徴収についても租税法定主義は適用される(専売価格、郵便料金など)

租税法律主義の内容は、課税要件法定主義、課税要件明確主義の2つである

○納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の課税要件のほか、租税の賦課徴収の手続きは法律で定める

○課税要件は法律で明確に定める必要がある

※課税要件の定めを政令・省令に委任することは、具体的・個別的であればできるが、一般的、白紙的なものは許されない

租税法律主義の例外は地方税、関税の2つである

※地方税は地方公共団体の自治権に基づく条例、関税は条約に基づく協定税率などで定める


財政に関する国会の権限として、租税に関する議決、国費支出の議決、債務負担行為の議決、予算の議決、予備費の議決(支出の承諾)、決算審査、財政状況の報告がある

※予備費の承諾は支出後のはじめての常会で得ることになっている

公金支出の制限
○宗教上の組織・団体の、使用・便益・維持のための公金の支出や財産の利用

※政教分離の原則の財政面での保障

○公の支配に属しない慈善・教育・博愛事業への公金の支出や財産の利用

※国費濫費の予防と慈善事業の公権力への依存排除が趣旨

※私学助成は監督がなされており、公の支配に属する事業のため除かれる


租税の賦課徴収について、憲法は永久税主義によるが、一年税主義(毎年議決を要する)を排除するわけでもない

通達は形式上国民や裁判所を拘束せず、租税負担者に有利な措置(減免等)を通達のみで行なうことは許されない

政策上の目的で、特定の企業、国民に有利な取扱をする措置は法律に基づく限り当然認められる


法律の正しい解釈として通達により新たに課税物品を追加することは課税要件法定主義に反しない(判例)



条例制定権
条例とは地方公共団体が自治権に基づき制定する自治法をいう

※直接憲法によって与えられ、個々の法律の授権・委任を必要としない

長その他の専属的権限に属する事項については条例を定めることができない

条例は法律の範囲内で定めることができ、法律に矛盾抵触する条例は無効となる

条例の制定範囲
○国の法令が全国一律に同一内容の規制をかける趣旨でなく地方独自の規制を容認する趣旨なら、条例の制定は可能

※全国一律に規制をかける趣旨なら上乗せ規制は不可

※法の目的を条例が阻害することがなければ条例の制定は可能(徳島市公安条例事件)

○法律に規制がなくても法律で画一的に定める趣旨でないなら、条例の制定は可能

※法律をおかない目的が規制をおかず放置すべきという趣旨なら、条例の制定は不可

条例と財産権
財産権の内容は法律によるとの規定にかかわらず、条例による制限は可能である(奈良県ため池条例事件)


条例に刑罰規定を課すための法律の授権は、政令による罰則の具体的委任と異なり、相当程度に具体的で限定されていればよい




一の地方公共団体のみに適用される特別法
法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票で過半数の同意を得なければ国会は制定できない

※国会の法律案の可決後に、住民投票を行って、過半数の同意後に国会の議決が確定して法律となる

手続き(地自法261条)
○国会又は参議院の緊急集会で議決
○議長が当該法律を添えて内閣総理大臣に通知
○当該法律を添えて直ちに総務大臣に通知
○総務大臣は通知の日から5日以内に地方公共団体の長に通知
○長は通知の日から31日以後60日以内に選管に賛否の投票を実施
○投票結果の判明後、長は5日以内に関係書類を添えて総務大臣に報告
○直ちに内閣総理大臣に報告
○当該法律の公布手続きをとり、衆参両議長に通知

特別法の例は、広島平和都市建設法や長崎国際文化都市建設法がある


この特別法の成立には住民投票を要件とするが、廃止には住民投票を要件といないは(首都建設法を首都圏整備法で廃止)




憲法改正
憲法改正は憲法の改正手続き条項に従い、条項の修正削除追加をし、憲法典を増補することで意識的、形式的に改変をくわえることをいう

両議院の議院のほか、内閣が発議を行うことを憲法上禁止はしておらず、認めるか否かを法律に委ねていると考えられる


改正手続きに関する法律
○投票権を有するのは18歳以上の日本国民である

○憲法改正の発議の日から60日以降180日以内に国民投票を行う

○有効投票数の2分の1を超えるときに国民の承認があったとする


憲法改正の限界
改正無限界説と改正限界説があり、改正限界説では国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を否定する改正はできない

※憲法改正手続きから国民投票をはずすこともできない


憲法10分(統治)3

2013-12-25 20:14:03 | 憲法
内閣総理大臣
最高裁判所長官の指名や最高裁判所裁判官・下級裁判所裁判官の任命を行なうのは内閣(×内閣総理大臣)



内閣の総辞職
憲法は内閣が国会(特に衆議院)の信任に基づくものとする議院内閣制を行政権の基本体制とし、衆議院の不信任決議と内閣の衆議院解散で均衡をはかる

内閣の不信任決議が可決された場合、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職する必要がある

※参議院も問責決議を行えるが法的効果はない

信任決議は内閣にも提出権がある

内閣は内閣総理大臣が欠けた場合、総選挙後に新国会が召集された場合には、選択の自由をもたずに総辞職する

※欠けた:死亡、国会議員の地位を失う(資格争訟や除名)、自発的辞職

※長期入院や生死不明の事故の場合は、あらかじめ指定された国務大臣が臨時に職務を行う(総辞職の必要はない)

※新国会召集により辞職した場合も、新首相が天皇に認証されるまでは最小限の事務を行う





条約
条約は広く文書による国家間の合意をいい、形式上の条約のほか、協定・協約・議定書・宣言・憲章を含む

条約を誠実に遵守するものとされ、法律や政令と同様に天皇によって公布される

条約の成立手続き
○内閣が外国と交渉
○内閣が任命する全権委員が署名・調印
○内閣が批准(←ここで確定)
○国会の承認(事前又は事後)
○天皇は批准を認証
○天皇が公布

事後に国会の承認が得られなければ国内に効力は生じないが、国際法上は批准で効力が生じているから内閣は相手国との交渉で条約の取消・改廃を申し入れることとなる

国会は条約の内容に修正を加えることはできない

条約は法律に優位する(国際協調主義、国会の承認を要する)

憲法は条約に優位するというのが多数説(文言上条約は違憲立法審査権の対象ではないが、違憲審査の対象ではないということではない)

※「一見極めて明白に違憲無効と認められない限りは」裁判所の違憲審査権の範囲外(砂川事件)




最高裁判所の権限
すべて司法権は、最高裁及び法律の定めにより設置する下級裁判所に属する

裁判所は、国会議員の資格争訟及び裁判官の弾劾裁判を除き(どちらも国会が行う)、一切の法律上の争訟を裁判する

最高裁判所は長官1名と判事14名で構成され、長官は内閣の指名に基づき天皇が任命、判事は内閣が任命し天皇が認証する

最高裁判所は裁判権のほか、訴訟手続・司法の内部規律・事務処理に関する規則制定権、下級裁判所の裁判官指名権、下級裁判所や裁判所職員を監督する司法行政権を有する

最高裁判所裁判官の国民審査
任命後はじめて行われる衆議院議員総選挙時
初回国民審査から10年経過後はじめて行なわれる衆議院議員総選挙時

裁判の対審及び判決は公開法廷で行う

※政治犯罪、出版、国民の権利(第3章)が問題となる事件以外で、裁判官の全員一致で公序良俗に反する恐れがある場合には非公開にできる


最高裁判所は
下級裁判所の司法権行使にかかる具体的な指揮命令権はない

下級裁判所の裁判官の任命権を有せず(指名権のみ)最高裁の指名した名簿に基づき内閣が任命する

規則制定権を下級裁判所に委任することはできる




司法権の独立
すべて裁判官は、良心に従い独立して職権を行い、憲法及び法律にのみ拘束される

※司法権は公正に行われなければならず、職権行使にあたり他の国家機関や政治的社会的諸勢力から独立が保障されることを意味する

※「憲法及び法律」には命令、規則、条例、慣習法、判例法も含む

司法権独立の内容は、裁判官の身分保障、最高裁による下級裁判所裁判官の指名権、最高裁の規則制定権

裁判官の罷免は
分限による裁判で決定された場合(心身の故障により職務をとることができない)
弾劾裁判所で罷免の決定を受けた場合(職務上の義務違反、裁判官の威信を失墜させる非行)
国民審査で罷免を可とする投票が多数だった場合に限られる

裁判官の懲戒処分を行政機関が行うことはできない(司法部が行う)

裁判官はすべて定期に相当額の報酬を受け、在任中は減額されない

裁判官は意に反して免官、転官、転所、職務停止、報酬の減額をされることはない

裁判官の懲戒処分は戒告及び過料のみである


国民審査制は解職の制度であり、白票を罷免を可としない投票の数に数えることは制度の趣旨に合致する(判例)

司法権に対する国政調査権は司法権の独立を侵害し、権限を逸脱する(浦和充子事件)

国会に設置される弾劾裁判所の裁判は公開の口頭弁論により行われる

罷免された裁判官に資格回復を求める余地はある(5年間経過したとき、新たな証拠があったとき)



裁判官の独立
司法行政の監督権が裁判官の裁判権に影響を及ぼしたり制限することはない

裁判官の罷免の訴追は、各議院の議員で選挙された訴追委員で組織する訴追委員会が行う(国会法)




裁判官の身分保障
何人も裁判官の罷免の訴追をするよう訴追委員会に求めることができる

※訴追そのものは各議院の議員で組織する訴追委員会が行う



※分限裁判は裁判官の免職と懲戒を決定するために裁判所分限法により内部的処分として開かれる裁判

※分限裁判は、当該裁判官が刑事被告人として起訴されたり、国会による弾劾裁判が開かれれば、これらが優先され分限裁判の手続は中止される



憲法10分(統治)2

2013-12-25 20:13:58 | 憲法
衆議院と参議院の関係
両院制では、1つの国会として同時に活動し、同時に召集され、独自に議事を開き、議決し、閉会する

両院協議会のほか、両議院の合同審査会(国会法)や議案の発議者や委員長が他の議院へ出席して提案理由を説明するなどの独立活動の例外がある


任期
○衆議院:4年または解散のときまで
○参議院:6年(3年ごとの通常選挙で半数を改選)

定数(公選法)
○衆議院は480人(小選挙区300人、比例代表180人)
○参議院は242人(選挙区146人、比例代表96人)

議員の年齢要件
○衆議院は満25年以上
○参議院は満30年以上




衆議院の優越
憲法改正の発議、皇室財産授受についての議決は、両院が対等の関係に立ち、意思の合致が必要とされる

法律案を衆議院が可決し、参議院が否決(修正可決)したときは、衆議院が元の案を出席議員の3分の2以上で再び可決すれば法律として成立する

※参議院が60日間議決しなければ否決とみなして、再可決の手続きへ移行できる

予算の議決は、先議権のある衆議院で可決し、参議院が否決(修正可決)し、両院協議会を開いて意見の一致をみないときは、衆議院の議決が国会の議決となる

条約の承認、内閣総理大臣の指名は、衆参議院の議決内容が異なり、両院協議会を開いて意見の一致をみないときは、衆議院の議決が国会の議決となる

※参議院が、予算の議決・条約の承認で30日間、内閣総理大臣の指名で10日間議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となる(両院協議会は開かなくていい)

法律によって衆議院の優越を規定することもできる(国会の臨時会及び特別会期の決定、国会の会期の延長、会計検査官の任命の同意)




国政調査権
両議院は各々国政に関する調査を行うことができる(62条)

国政調査権の性質については、独立権能説と補助権能説があり、後者が妥当とされる

独立権能説は、国政調査権を議院の他の権能と並ぶ権能であり、他の権能と関連しない事項も国政全般にわたって調査できるとするが、補助権能説は議院の持つ権能を行使するために必要な事実を明らかにする補助手段であると考える

個人の刑事責任を摘発する目的、世論形成のための情報提供をする目的などは許されない

◇調査権の範囲と限界
議院内閣制の下で、国会は行政部に対し広い監督権を有し、このために調査権を持つ必要がある

外交処理・国の防衛に関しては、秘匿を要する事項ではあるが、一概に調査権の範囲から除外されるべきではない

犯罪捜査、検察事務に関しては、刑事司法の公正に触れるおそれがあり、調査権の行使に自制が要請される

具体的な裁判に関しては、司法権の独立を侵すことから調査権の行使は許されない

※裁判所と異なる目的(政治的背景や社会的意義を明らかにして立法目的や行政監督目的で法の運用や行政のあり方を調査)なら許される。許されないのは判決の批判のためなど


◇調査の方法
調査の方法として、証人の出頭及び証言並びに記録の提出がある

証人、参考人とも出頭の義務はあるが、証人には罰則規定があり、参考人にはない

※罰則の適用には、議院(委員会)の告発が起訴条件(判例)

証人は、本人や近親者等が訴追を受けるおそれがあったり、医師他の場合の守秘事項について、事由を示して宣誓や証言を拒むことができる

公務員が機密事項の申し立てをしたときは、公務所・所管官庁の承認がなければ証言又は書類の提出を要求できない

憲法上の調査の手段は制限的列挙ではなく、参考人に任意の協力を求めたり、議員を派遣することもできるが、強制手段は憲法の定める以上の手段をとることはできない

※法律で捜索・押収権限を認めることは許されない




内閣の権能
憲法73条
○法律の誠実な執行と国務の総理
国会の制定した法律を誠実に執行し、最高の行政機関として行政権を統括して行政各部を指揮監督すること

※たとえ憲法に違反する法律であっても内閣に憲法適合性を審査することはできない

○外交関係の処理
○条約の締結
実質上外国に対して日本国を代表するのは内閣である

○官吏に関する事務の掌理
人事行政に関する事務をいう

○予算の作成と国会への提出

○政令の制定

○大赦等の決定
恩赦の決定には国会の承認は必要なく、内閣による決定と天皇の認証により行なう

※恩赦:大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除、復権

憲法73条以外に定める内閣の権能
○天皇の国事行為に対する助言と承認

○司法部に対する権限
最高裁判所長官の指名、最高裁判所裁判官・下級裁判所裁判官の任命

※最高裁裁判官&高等裁判所長官は天皇の認証が必要

○臨時会の召集
国会議員が内閣に国会の召集を要求するために必要な要求数は、どちらかの議院の総議員の4分の1以上

○緊急集会の開催

○予備費の支出
予備費の支出には国会の承認が必要。ただし事後承認でよい。

○決算の提出

○国会及び国民への財政状況の報告


憲法に定められてはいない内閣の権能
○衆議院の解散の決定

○国会への法案提出など




内閣総理大臣と内閣
内閣は首長である内閣総理大臣とその他の国務大臣で構成される(66条1項)

内閣の3要件
○内閣総理大臣は国会議員であること(67条1項)
○国務大臣の過半数が国会議員であること(68条1項)
○内閣総理大臣および全国務大臣は文民であること(66条2項)

◇内閣総理大臣
国会議員から国会の議決で指名され、国会議員であることは資格要件であるばかりでなく在職要件でもあるが、衆議院の解散(任期満了)のときは、次の国会召集の時に辞職するからそれまでは在職する

国務大臣の任免を閣議にかける必要はない(内閣総理大臣の専権)

国務大臣を在任中に訴追するときは、内閣総理大臣の同意が必要である

※訴追は起訴のほか逮捕拘留も含まれ、現行犯の場合も同意が必要

※同意なき公訴の提起は無効となり、公訴時効は停止する


※身体の拘束を伴わない捜索・押収等は同意不要

内閣を代表して法案を国会に提出し、一般国務、外交関係を国会に報告し、行政各部を指揮監督する

内閣総理大臣は代表権の一部を国務大臣に委任することはできる

内閣総理大臣は法律、政令に連署する


内閣総理大臣が欠けたり、事故あるときは、あらかじめ指定する国務大臣が臨時にその職務を行なう(欠けた時は憲法上総辞職)


◇国務大臣
国務大臣が国会議員としての地位を失ったために議員が過半数を満たさなくなった場合も、内閣は直ちに行為能力を失うわけではない

過半数要件は在職要件であり、速やかに憲法の要請に合致するよう国務大臣の任免を行なうべきである

国務大臣は両議院にいつでも議案について発言するため出席でき、内閣の構成員として閣議に列し、意思形成に参加し、案件のいかんを問わず(×権限の属する事項につき)、内閣総理大臣に閣議を求めることができる


国務大臣への不信任決議に特に法的効果はない


憲法10分(統治)1

2013-12-25 20:13:54 | 憲法
臨時会と特別会
会期は国会の活動能力のある期間をいい、議決に至らなかった案件は原則としてのちの国会に継続しない(国会法)

※例外:議員が議決して委員会に閉会中も継続審議するよう付託したとき

常会は毎年1回招集され、会期は150日と定められ、両院の一致した議決で1回に限って会期を延長できる

※期間内に議員の任期が切れる場合、任期末日をもって終了

臨時会は臨時の必要に応じて
○内閣の職権又はいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求時に召集される

○衆院選挙、参院選挙の任期満了30日以内に選挙が行われ、新議員の任期から30日以内に招集される

特別会は衆議院の解散総選挙後にはじめて召集される国会で、解散の40日後に行われる選挙の日から30日以内に召集される

臨時会と特別会の会期は両院の一致した議決で決められ、2回に限って延長できる




国会の召集と会期
定足数は会議体で議事を開き議決を行うため最小限必要とされる出席者数をいう

開催の定足数は総議員の3分の1であり、総議員とは法定議員数(×在職議員数)である(通説)

委員会の定足数は、開催は委員の半数、議決は委員の過半数である

定足数を欠く議事や議決は違法だが、政治的な追及はともかく法的手段はない

両議院の会議は公開される(会議の傍聴、会議録、マスメディアの報道)

※例外:10人以上の議員が発議し、出席議員の3分の2以上の議決があるときは秘密会を開催できる

委員会は傍聴は許されないが、秘密会を除き報道関係者の傍聴は許される

表決数は有効な会議の意思となるために必要な賛成の数で、通常は出席議員の過半数である

棄権者や白票も出席議員数に含まれ、棄権や白票は結果として反対と同じ取扱となる

3分の2以上の特別の多数を要する議決
○憲法改正の発議(総議員の3分の2)
○議員の資格判断
○秘密会の開催
○議員の除名
○衆議院で法律を再議決する場合
(以上は出席議員の3分の2)

表決の結果、可否同数となった場合議長が決する(議長の決裁権)




衆議院の解散
衆議院の解散とは衆議院議員の任期満了前に議員全部の身分を失わせることをいう

解散されると同時に会期は終了し、参議院は同時に閉会となる

参議院に解散はなく、法律で定めることもできない

衆議院の解散を公示するのは天皇だが、実質的な解散決定権は内閣にある(通説先例)

※根拠は議員内閣制の本質に求められ、内閣が特に信任を負う衆議院との両者の均衡を確保する手段

衆議院の自律的解散を認める説もあるが、根拠規定がなく、解散の機能を両者の均衡確保に求めることとも矛盾するから認められない

衆議院が内閣に解散を求める決議をすることは可能だが法的拘束力はない


内閣は衆議院の不信任決議(信任決議案の否決)後10日以内に限って解散権を行使できる(69条)

69条以外に内閣に解散権を認める根拠規定はないが、判例通説は国民主権の考え方から認める
○内閣と衆議院の対立の打開を国民に期待する
○衆議院が民意を代表しているか疑わしい
○国家の重要政策に民意を問う必要がある

すべての解散のうち4回は不信任決議を受けた解散だが、これ以外は内閣による解散権の行使である




参議院の緊急集会
内閣は国に緊急の必要がある時に参議院の緊急集会を求めることができる

※国会の一院のみで例外的に国会の権能を代行

衆議院議員の任期満了後の期間中には開催できない(衆議院解散の場合のみ)

災害や治安上の緊急事態が発生した場合に限られず、平常の国会の職務についても緊急性があれば緊急集会を求める理由になる

緊急集会を求める権能は内閣の一身に属し、参議院が自発的に集会を行うことはできない(天皇の国事行為も不要)

緊急集会は会期の定めがなく、緊急の案件が全て議決されれば議長が宣言して終了する

緊急集会中は、参議院議員に明文規定のある不逮捕特権のほか、免責特権も認められる

衆議院のみが持つ権限(内閣不信任決議)や権能を超えるもの(憲法改正の発議、内閣総理大臣の指名)は緊急集会では議決できない

緊急集会での議決は次の国会で速やかに衆議院に提出するが、10日以内に同意を得られない場合、以降効力を失う




国会議員の特権
国会議員が歳費を受ける権利は憲法上認められており、法律により実費弁償的な手当も支給される

※歳費の額は一般職の国家公務員の最高の給料額より少なくない額(国会法)

議員は法律の定める場合を除いては国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は議院の要求があれば釈放される

※緊急集会は会期中にあたるが、委員会審議は会議中にあたらない

逮捕は刑訴法の逮捕・勾引・拘留などの身体の拘束を意味し、身体の拘束を伴わない訴追まで禁ずるものではない

不逮捕特権の例外は院外における現行犯と院の許諾がある場合だが、議院の要求があれば釈放されなければならない

※院内の現行犯は議院の自律権の問題

※院の許諾に期限や条件をつけることはできない(無条件の許諾)


※確定刑による自由刑の執行は不逮捕特権に含まれない



国会議員は、議院で行った演説、討論、表決について院外で責任を問われない

免責特権は国会議員に限られる

※政府委員、公述人、参考人は含まれず、内閣総理大臣を含む国務大臣の大臣としての発言にも認められず、地方議員にも及ばない

「議院で行った」とは議院の活動として職務上行った演説等であり議事堂外の行為も含まれる

※私的な会話、院内の発言を外部に公表する行為は職務行為ではなく免責されない

※議員の職務行為に付随する行為は、具体的な行為の目的や態様を考慮して免責特権が認められる余地もある

免責の内容
◎名誉毀損罪のような刑事責任
◎損害賠償責任のような民事責任
○公務員としての懲戒責任
※政治的責任や倫理的責任は免れない



国会の議決
両院の意思が不一致となった場合、直ちに衆議院の優越に訴えるのではなく、両院の意思の一致のための両院協議会を開催する

※両院制の下、各議員が相互に独立して活動する原則の例外

衆議院の優越が憲法上認められる事柄(予算の議決、条約の承認、首相指名)につき両院の意見が一致しないときは、両院協議会の開催が義務づけられる

※法案の議決は、衆議院が要求(59条)、参議院が要求し衆議院が同意、後議の議院が先議の議院に同意しないため先議の議院が要求(国会法)したときに開かれる


両院協議会は各議院で選挙された各10人の委員で構成され、秘密会とされる

定足数は各議院の協議委員の3分の2、議決は原則として出席委員の過半数、協議会の成案とする議決は出席委員の3分の2以上の特別多数が必要(国会法)

両院協議会では意見を異にする事項と当然影響を受ける事項の範囲を超えて審議することはできない

両院協議会の成案を各議院が修正することはできず、可否を決するのみ


憲法10分(人権)5

2013-12-25 20:13:45 | 憲法
公務員の労働基本権
最高裁の判断には変遷がある

第1期
公共の福祉論、全体の奉仕者論という抽象的な原則に基づいて公務員の労働基本権を否定(政令201号事件)

第2期
公務員の労働基本権の制約は「国民生活全体の利益保証という見地からの内在的制約のみ可能」
→争議行為の処罰について二重の絞り理論を採用(全逓東京中郵事件、都教組事件、全司法仙台事件)

※二重の絞り理論:争議行為もあおり行為も処罰対象は違法性の強いものに限る

第3期
公務員の地位の特殊性と職務の公共性を考慮して憲法上当然には保障されておらず、現業・非現業とも争議行為禁止を合憲と判断(全農林警職法事件、岩手教組事件、全逓名古屋中郵事件)


※公務員も勤労者として労働基本権の保障は必要だが、公務員関係の存在と自律性の維持に必要な限度で制限することが可能(通説)




財産権
国民が有する具体的な財産権の保障(個別的保障)と私有財産制(制度的保障)の2つの側面がある

財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律で定められ、自由国家的公共の福祉のほか社会国家的公共の福祉による制約を受ける

条例による財産権への制限が可能とされるのは、条例が民主的手続きを経て公選された議員による議会で制定され、準法律的な要素をもつから(奈良県ため池条例事件)

私有財産は正当な補償の下に公共のため用いることができる

公共のためとは、道路などの公共用のほか、農地改革など特定個人に利益を与える場合を含む

補償の必要性は侵害対象が一般的か特別か、損失が受忍限度を超えるか否かで判断(特別犠牲説)

正当な補償の意味につき、判例は相当補償説(農地改革事件)と完全補償説(土地収用補償事件)が併存しているみたい

※完全補償説では客観的な市場価額を補償され、相当補償説では財産を合理的に算出して補償される

立法の不備があった場合、財産権の制限に対する正当な補償につき、憲法に基づいて直接請求することが認められた(河川付近地制限令事件判決)


財産権の保障規定に対して、法律で社会主義をとることは認められない

※憲法の規定は私有財産制の制度的保障(×プログラム規定)で、社会主義への移行には憲法改正が必要


財産権への法律による制限は広範に認められるが、立法目的との関係で必要性・合理性いずれも肯定できず違憲とされた例がある(森林法共有分割制限規定事件)




裁判を受ける権利
裁判を受ける権利とは、民事刑事行政家事等一切の争訟につき法律で定められた裁判所で裁判を受ける権利

民事行政事件では裁判所への訴訟を提起できる受益権、刑事事件では被告人が公平な裁判を受ける権利としての自由権の性質をもつ

陪審制度は判決が資格を有する裁判官によってなされる限り違憲ではない

非訟事件は本質的に行政作用であり、対審・公開・判決という手続きは必ずしも適用されない(判例通説)

※終局的に事実を確定し、当事者の主張する権利義務に存否を確定するような裁判ではないから

実質証拠の原則の適用は、全く裁判所の事実認定権を奪うものではなく不合理であれば違法と判断して取り消す余地はあるから違憲ではない

※実質証拠の原則:行政庁の事実認定が合理的な証拠によるかどうかだけを裁判所が認定する原則


明治憲法時代は民事・刑事事件は司法裁判所、行政事件は行政裁判所(司法権と独立した特別裁判所)で審議していた

法改正により短縮された出訴期間を遡及適用することは、その期間が著しく不合理で実質上裁判の拒否となるものでなければ、憲法に違反しない




刑事手続きの保障
法律の定める手続によらなければ、生命、自由を奪いその他の刑罰を科せられない

※通説は手続のほか内容も法律で定める必要があると解する罪刑法定主義の根拠規定


何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない

現行犯の場合を除き、権限を有する司法官憲が発する理由を示した令状によらなければ逮捕されない

※令状主義、司法官憲とは裁判官を意味する

※緊急逮捕は、厳格な制約の下にあって被疑者の逮捕を認めるもので33条の趣旨に反するものではない

※一定の重罪につき急を要するため逮捕状を請求できない場合に、理由を告げて逮捕し、事後に直ちに逮捕状を手続きして、おりないときは釈放する

※別件逮捕は、両事実に密接な関連があれば逮捕・勾留中の被疑者を付随して取調べても違法とはいえない


抑留・拘禁は、直ちに理由を告げられ弁護人に依頼する権利を与えられなければされない

拘禁は、正当な理由がなければされず、要求があれば直ちに本人及び弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない

※抑留は一時的拘束、拘禁はより継続的な身体の拘束


33条の場合を除き、正当な理由に基づき権限を有する司法官憲が発する捜索場所、押収物の令状がなければ、住居・書類・所持品につき侵入・捜索・押収を受けない

※33条(現行犯、逮捕令状)の場合は捜索令状が不要

※第三者所有物の没収を定めた関税法の規定は所有者に防御の規定を定めてないことから違憲(第三者所有物没収事件)


公務員による拷問及び残虐な刑罰は絶対に禁ずる

※死刑制度は、生命に対する国民の権利も公共の福祉に反する場合は剥奪でき、執行方法が残虐でなければ合憲


刑事被告人(×被疑者)は
公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する

すべての証人に審問する機会を充分に与へられ、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する

いかなる場合にも資格をもつ弁護人を依頼でき、自ら依頼できないときは国で附する

※迅速な裁判を受ける権利は具体的権利であり(×プログラム規定)、免訴による裁判の打ち切りとした(高田事件)


何人(○被疑者)も自己に不利益な供述を強要されず、強制・拷問・脅迫、不当に長い抑留・拘禁後の自白は証拠とできず、唯一の証拠が本人の自白のときは有罪(刑罰)とならない

※黙秘権、自白の証拠能力

※公判廷における被告人の自白はそれのみで例外的に犯罪事実の認定がなされ有罪となった例がある

※行政手続に対する罪刑法定主義、令状主義、黙秘権や自白の証拠能力(31、35、38条)の適用は、実質的に刑事責任追及のための資料収集に直接結びつく手続には保障が及ぶ

※川崎民商事件:国税通則法に基づく帳簿検査は刑事責任を問うものでなく違憲ではない

※氏名は原則として不利益な事項に該当せず、その供述に対して黙秘権を認めない


実行の時に適法であつた行為、既に無罪とされた行為は刑事上の責任を問はれない

同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない

※事後法による処罰、一時不再理の原則、二重処罰の禁止の規定


抑留・拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは法律の定めるところにより、国に補償を求めることができる

※刑事補償請求権は、違法・適法を問わず、抑留・拘禁を受けて無罪判決を受けた者が行使でき、金銭の支払いにより行われる


その他の主な判例
明文規定のない所持品検査、違法収集された証拠等の証拠能力

不起訴となった事実に基づく抑留拘禁と刑事補償にかかるもの


憲法10分(人権)4

2013-12-25 20:13:40 | 憲法
結社の自由
憲法の基礎秩序の破壊を目的とする結社への事後的な規制は可能だが、事前抑制は精神的自由への規制立法に対する合憲性判断の理論に照らして違憲の疑いが強い




表現の自由
報道機関の報道は、国民の知る権利に奉仕するものであり、報道の自由も表現の自由の保障のもとにある(博多駅テレビフィルム提出命令事件)

表現が真実でなく、専ら公益をはかる目的でないことが明白であって、かつ被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る恐れがあるときに事前差し止めが許される




通信の秘密
通信の秘密の保障とは、公権力が通信の内容を積極的に知ろうとすること、職務上知りえた秘密を漏えいすることの禁止が内容

通信業務の従事者も公権力に含まれ、職務上知りえた通話相手の氏名は報道機関や家族であっても知らせることは許されない

郵便官署が衆議院の国政調査権による報告の請求に対して郵便物の内容を回答することは許されない

※国政調査権は国民の基本的人権(プライバシー権)を侵害しない範囲で行使できる権限

犯罪捜査のために検察官(○裁判官)の照会に応じて保管する郵便物の差出人の住所を回答することは許されない




居住・移転の自由
居住移転の自由とは自己の住所又は居所を自由に決定し移動できること

居住移転の自由には人身の自由、精神的自由権、経済的自由権(×生存権)の性質がある

海外渡航の自由は、通説判例は外国移転の自由(×13条×居住移転の自由)を根拠とする

外務大臣の旅券発給の裁量は
外交の複雑さ・専門性から外務大臣に相当の裁量を認めることは許される(判例)

害悪発生の相当の蓋然性が客観的に存在しない場合は適用違憲(学説、判例はあまりに漠然としてる)

外務大臣の旅券発給の裁量について、外国に移住する自由には一時旅行する自由も含み、この自由も旅券法に定める公共の福祉による合理的な制限に服すことから憲法に違反しない(帆足計事件)




職業選択の自由
職業選択の自由とは自己の従事する職業を決定する自由

選択した職業を遂行する自由である営業の自由も職業選択の自由に含まれる(判例通説)

職業選択の自由に対しては、社会的相互関連が大きく、社会国家の理念実現のための政策的配慮に基づいた積極的な規制を加えることが必要

規制は消極目的の規制と積極目的の規制がある


距離制限規定に関する判断
○公衆浴場の距離制限は、公衆衛生を守るための消極目的の規制ととらえ合憲(公衆浴場距離制限判決)

○小売市場の距離制限は、中小企業保護政策という積極目的の規制ととらえ合憲(小売市場距離制限事件判決)

○薬局の距離制限は、薬局の乱立による薬の安全性低下を防ぐという消極目的からの規制ととらえ違憲(薬局距離制限事件判決)

※競争の激化=経営の不安定=法規違反による不良医薬品の供給の危険、の考え方は認めず、行政上の取締りの強化によっても立法目的は達成可能と判断


職業選択の自由は人格権としての性質をもつ(薬局距離制限事件判決)

営業の自由への規制のうち、電気・ガス事業等の特許制は積極目的の規制にあたる

警察比例の原則とは、規制措置は社会公共に対する障害の大きさに比例したもので、目的を達するための必要最小限度にとどまるという原則をいう




学問の自由
学問の自由の内容は、学問的研究の自由、研究成果発表の自由、教授の自由をいう

教授の自由は高等教育だけでなく普通教育においても一定の範囲で認められる(旭川学力テ事件)

※一定の範囲→児童・生徒に十分な批判能力が備わっておらず、教育の機会均等を図る上で全国一定の水準が求められることの制約あり

大学の自治は学問の自由を制度的に保障するものとして認められ、教授その他研究者の人事、施設管理、学生管理を内容とする

※施設管理、学生管理はある程度まで認められる(判例)

大学の自治は教官、研究者に認められるが、学生には認められず、大学に認められる自治の効果を享受する立場

学生の集会は真に学問的研究とその発表のためでなく、政治的社会的活動の集会は大学の自治として享受できない(東大ポポロ事件)




社会権
すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(25条1項)

生存権の性質には、プログラム規定説・抽象的権利説・具体的権利説がある

プログラム規定説は国に政治的・道徳的義務を課したにとどまり、国民に具体的権利を付与したものではないとする見解(判例)

※国に裁量の余地が広範に認められ、憲法が生存権を保障した趣旨を実質的に形骸化するとの批判

抽象的権利説は国に法的義務を課しているが、生存権を具体化する法律によってはじめて具体的権利になるとする見解(通説)

※立法がなされない限り裁判所による救済がなされないとの批判

具体的権利説は国民に具体的な権利を保障した規定で、立法がない(不十分な)場合に25条を根拠に出訴できるとする見解

※裁判所に事実上の立法作用が生じ、三権分立に反するとの批判


朝日訴訟では生活保護受給権の相続と生存権の法的性質について判断

生活保護受給権は被保護者に対する一身専属的な権利で、譲渡できず、相続の対象ともならない

生存権の法的性質として、25条は国の責務として宣言したにとどまり、国民に具体的権利を付与したものではなく、なにが健康で文化的かの判断は厚生大臣に委ねている


公的年金と児童扶養手当の併給禁止規定は、文化の発達の程度、国民の生活状況、国の財政事情をもとに高度に政策的判断が必要(堀木訴訟)

勤労権は国会に対して労働の機会を与えるよう要求し、できないときは失業保険等の対策を要求しうる権利

日常の不足食料の運搬に対する罰則規定は、25条が具体的権利を保障したものではないから憲法に違反しない(食糧管理法違反事件判決)

26条の規定は授業料不徴収の意であり、教科書等の費用負担はできるだけ軽減するよう配慮することが望ましいが、財政事情等を考慮した立法政策の問題(教科書費国庫負担請求判決)




教育を受ける権利
教育を受ける権利は、社会において有意義な生活を送るために不可欠な教育の重要性にかんがみて保障している

教育を受ける権利は、性質上子どもに対して学習権が保障されている

教育を受けさせる責務は、一次的には親、親権者にあり、社会的側面として国が教育制度の維持、教育条件の整備の責務を負う

教育権(教育内容を決定する権限)の所在は、国家教育権説、国民教育権説、折衷説(判例通説)がある

国民教育権説では国は教育の条件整備の義務を負うにとどまるが、国家教育権説とともに極端かつ一方的であるとの批判がある

教師に一定の教育の自由はあるが、国も社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定すべき立場にあり必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能を有する(旭川学力テスト事件)


各人の精神的、肉体的な能力に応じて異なった教育をすることは許される(その能力に応じて、ひとしく)

子女の保護者には教育を受けさせる義務があり、違反したときには学校教育法に罰則規定がある

憲法10分(人権)3

2013-12-25 20:13:35 | 憲法
精神的自由権
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する(21条)

表現の自由から派生的に導かれる権利は、知る権利、報道の自由、取材の自由、反論権がある

判例では反論権は認めてない(サンケイ新聞事件)、取材の自由は十分尊重に値する(博多駅テレビフィルム事件)

※取材の自由も公正な裁判のために制約を受け、取材ビデオテープの差押えは合憲(博多駅テレビフィルム提出命令事件、リクルート疑惑日本テレビビデオテープ事件、TBSビデオテープ差押事件)

○その他の判例
取材源の秘匿まで21条によって保障したわけではない(石井記者事件)

法廷内での撮影禁止は違憲ではない、取材の自由といえど被告人その他訴訟関係人の権利を不当に害することは許されない(北海タイムス事件)

公務員に秘密の漏洩をそそのかしても、真に報道の目的で、手段・方法が社会通念上是認されるものなら違法性を欠くが、取材対象者の人格を著しく蹂躙するなど社会通念上是認できない態様のものは違法(西山記者事件)


◇表現の手段及び形態
21条の言論、出版その他一切の表現の自由、には絵画、映画、ラジオ、テレビなどの媒体を含む

集団示威(デモ)行進もいわゆる動く集会として表現の一形態である


◇結社の自由
結社とは共同目的を有する多数人の集団をいい、継続的・組織的な点で集会と異なる

結社の自由は民主主義の維持発展に不可欠の要素であり、に参政権的要素がみられる(政党の存立根拠でもある)

結社の自由の内容は、団体を結成する(しない)自由、団体に加入する(しない)自由、脱退の自由、あるいは団体としての意思形成活動について公権力の干渉を受けないことである

公益法人等の設立に行政官庁の許可を要件とすることは、許可自体が取引の安全との見地から行い、団体の存続を否定する趣旨でないことから合憲

犯罪活動や憲法の基本的秩序の破壊を目的とする結社は公共の福祉の制約により認められない

※結社に参加しない人の人権や利益との調和を考える


◇検閲の禁止
憲法上禁止されている検閲の主体は行政権だから、裁判所が仮処分により表現物を事前に差し止めることは検閲の禁止に反しない(北方ジャーナル事件)

検閲の対象は思想内容の表現物等であり、発表前に網羅的・一般的に審査した上でその全部又は一部の発表を禁止すること

検閲は公共の福祉に反する場合でも行うことは許されず、絶対的なものである

税関検査、教科書検定は検閲にあたらない(税関検査訴訟、家永訴訟)

※税関検査は表現の自由の事前抑制ではない、網羅的に審査するものでない、税関が思想内容の統制を使命としない、最終判断ではない

※教科書検定は教科書に採用されずとも一般図書として販売可、発表前に審査を行っておらず検閲に当たらない、文部大臣の合理的な裁量権の範囲


◇通信の秘密
通信の秘密に反する行為とは公権力が内容を積極的に知ろうとすること、職務上知りえた秘密を漏洩することをいう

※プライバシー保護とも密接に関連する

通信の秘密の例外は、裁判所による信書や官署の保管する記録物を証拠物として差し押さえる場合などがある(刑訴法)

通信の秘密に信書の差出人・受取人の氏名・住所は含まれる


◇公安条例の合憲性
街頭行進、デモ行進を行う際に、公安委員会に届出又は許可を要することを定めた条例であり、判例は合憲の立場をとる

一般的許可制で事前に抑制することは憲法の趣旨に反するが、合理的かつ明確な基準により許可を要するものを限定する場合は合憲

→公共の安全の差し迫った危険が予見できるときは不許可とすることができる(新潟県公安条例事件)

いかなる規制が必要最小限度のものかは許可、届出の用語、概念のみで判断すべきでなく、条例全体の精神を実質的有機的に判断すべき

→許可制でも不許可の場合を限定するなど実質的に届出制とかわらないので合憲(東京都公安条例事件)


◇その他
わいせつ文書の規制は、単に芸術的思想的文書というだけでなく、描写叙述の手法、思想との関連性等を総合的に判断し、時代の社会通念に従って判断すべき(チャタレイ事件)

選挙運動の文書頒布の制限、戸別訪問、事前運動の禁止等は、選挙の公正の確保から一貫して合憲の立場

→買収等の害悪の生ずる明白にして現在の危険があると認められるもののみを禁止しているのではない(明白かつ現在の危険の基準の適用を否定)


◇明白かつ現在の危険の法理
表現内容を直接規制するために、近い将来実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白であり、実質的害悪が重大であり、規制手段が害悪を避けるのに必要不可欠であることの3つの厳格な要件を必要とする考え方(最も厳格な違憲審査基準)




信教の自由
信教の自由の内容は、内心における信仰の自由(信仰を持つ、告白する自由)、宗教的行為(儀式や布教宣伝)の自由、宗教的結社の自由

※これらはする自由とともにしない(消極的)自由も含む

内心における信仰の自由は、思想良心の自由とともに絶対的に保障されるが、告白は表現の自由と同様の制約を受けることがありうる

宗教的行為の自由は公共の福祉の制約をうけるが、他の精神的自由権同様必要最小限の制約である

宗教上の加持祈祷行為により他人の生命身体に危害を及ぼして死亡させたときは信教の自由保障の範囲を逸脱する(判例)

大量殺人を目的としたサリンの大量生成は著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為である

→宗教法人法に基づく宗教法人の解散命令制度は信教の自由との関係で違憲ではない(オウム真理教解散命令事件)

※宗教法人の世俗的側面が対象、法人格を有しない団体として結成存続を図ることも可能


◇政教分離の原則
国家が特定の宗教と結びつくことがないよう、憲法上特定宗教団体への特権付与の禁止、国家の宗教教育その他宗教活動の禁止、宗教上の組織への公金支出等の禁止を規定

○津地鎮祭事件の趣旨
政教分離規定は国家と宗教の分離に関する制度的保障だが完全な分離は不可能だから、国家と宗教のかかわり合いが社会的文化的諸条件に照らして相当とされる限度を超えることを許さない趣旨

宗教的活動とはその目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進、圧迫、干渉等になる行為(目的効果基準)

宗教的活動を考えるときは、行為の場所、一般人の宗教的評価、目的等の諸般の事情を考慮し、社会通念に従って判断すべき

※補完的な追加基準
→施設の性格や無償提供の経過、一般人の評価などを考慮し、社会通念に照らし判断すべき(空知太神社訴訟)



殉職自衛官の護国神社への合祀申請行為に対する自衛隊員の協力行為は合憲(殉職自衛官合祀事件)

市が戦没者の忠魂碑を移設し、敷地を無償で貸与した行為は合憲(箕面忠魂碑・慰霊祭訴訟)

靖国護国神社が挙行した例大祭等に県が玉串料を奉納したことは目的効果基準に照らして違憲(愛媛県玉串料訴訟上告審)


宗教法人への免税措置は他の公益法人等に認められる特典を認めているだけだから特権付与の禁止には反しない

宗教団体が保有する文化財の修理に国が補助することは宗教面に着目して行われるのでなければ特権付与ではない

憲法で禁止される国の宗教教育とは、特定の宗教を宣伝し、広めることやそれを排斥することを目的とするもの

→歴史的見地から行われる宗教一般の教育や社会的素養を養うための宗教の社会生活上の意義解明などの教育は許される

法律に定めても公権力が特定の宗教を強制することは不可能

信仰を理由として一般的な法的義務を拒否することはできない



憲法10分(人権)2

2013-12-25 20:13:30 | 憲法
個人の尊重ならびに生命・自由および幸福追求権
憲法制定当初想定されていなかった人権は13条幸福追求権を憲法上の根拠として保護しようとするのが通説判例

○肖像、名誉、プライバシー
最高裁はプライバシー権、肖像権、人格権の用語使用には消極的だが内容は認めている

※人格権を認める判例
◇個人の容貌をみだりに撮影されない自由(京都府学連デモ事件)

◇名誉権に基づく侵害行為の差し止めを認める(北方ジャーナル事件)

◇弁護士法に基づいた前科・犯罪歴の照会に市区町村長が漫然と照会に応じることは違法な公権力の行使

◇前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が公表する理由に優越すれば公表による精神的苦痛の損害賠償を請求できる(ノンフィクション「逆転」事件)

→事件の歴史的社会的意義、人物の当事者としての重要性、著作物の目的や実名使用の必要性に照らして

◇みだりに指紋の押捺を強制されない自由

◇外国人登録原票の登録事項確認申請を義務づける制度は13条に反しない

→立法目的に十分合理性があり、確認事項も必要最小限、戸籍制度がない外国人には許容される

◇人格権に基づく損害賠償と空港使用の差し止めを最高裁は行政訴訟の方法ではともかく、民事訴訟の方法では認められない(1、2審は認めた)(大阪国際空港公害訴訟)


○環境権
良好な環境を享受しうる権利で、最高裁に判例はなく下級審も憲法上の権利として消極的


○知る権利は表現の自由の前提として認められ、前提として報道の自由も保障(博多駅テレビフィルム提出命令事件)

※個人が思想・意見を形成する前提となる事実や思想・意見を収集する権利

※表現の自由○→知る権利○→報道の自由○→取材の自由△(尊重)→×アクセス権


○学習権
教育を受ける権利から導かれ、最高裁も認める(旭川学テ事件)


未決拘留者の新聞・図書等の閲読の自由を法律により制限することは可(よど号ハイジャック新聞記事抹消事件)

→監獄の規律・秩序の維持上放置できない障害が生じる場合、防止のために必要かつ合理的な範囲内で一定の制限を受ける

自己消費目的の酒類製造に、酒税法が製造目的を問わず一律に免許を要求することは許される(どぶろく裁判)

→酒税法による規制は立法府の裁量を逸脱する著しく不合理なものとはいえない




法の下の平等
立法者拘束説(法内容平等説)と立法者非拘束(法適用平等説)があり、前者が通説判例

立法者拘束説によれば、立法者を憲法の規定が拘束する(しない)し、平等の意味は相対的(絶対的)平等で、合理的な理由による差別も許される(許されない)

立法者拘束説では、14条後段の列挙事由は単なる例示(限定的な事由)であり、自由国家的・機会平等(社会国家的・実質平等)を理念とする

※人種、信条、性別、社会的身分、門地により、政治・経済・社会的関係において差別されない


合理的差別とした判例
○私企業が特定の思想信条を持つ者の採用を拒否(契約自由の原則、三菱樹脂事件)

○女性の再婚禁止期間(父子関係を巡る紛争の未然防止、再婚禁止期間違憲訴訟)

○条例制定権

○障害福祉年金と児童扶養手当の併給調整条項(堀木訴訟)

○給与所得者の必要経費に関する概算控除制度(経済実態を把握する立法府の政策的技術的判断の尊重、サラリーマン訴訟)

○尊属殺・尊属傷害致死重罰規定(尊属に対する尊重報恩は道義的倫理的見地から保護に値する)

※尊属殺重罰規定は、法定刑が必要な限度をはるかに超えるから違憲


(不合理な差別とされた判例)
○女性の定年齢を男性と差をつける就業規則(女性であることのみを理由とする差別、日産自動車事件)

○女性労働者のみ結婚を退職事由とすること(住友セメント事件)



法の下の平等など憲法に定める国民の権利と義務の各条項は、性質上可能な限り内国の法人にも、外国人にも適用される(八幡製鉄事件)




請願権
請願権は国または地方公共団体の機関に対して、それぞれの機関が処理しうる事項に関して苦情要望を申し出る権利

請願を受けた機関は、誠実に処理する義務を負うが、請願内容どおりの処理を行う義務はない(請願法)

請願は、選挙権の有無を問わず、法人や外国人も何人でも行うことができる

請願者は平穏になされた請願を理由に法律上の差別(公権力による差別)を受けることは許されない

※暴力的請願には差別待遇が可能

請願できる事項には他の制度が存在するか否かに関わらず行うことができるので、公務員の解職や国への損害賠償請求も可能

国会への請願は議決により処理し、内閣へ送付すべきものは内閣へ送付し、内閣は誠実に処理して経過を請願者本人に通知するとともに、毎年処理の経過を議院に報告する




国家賠償責任
公権力の行使に当たる公務員が、職務を行うときに、故意過失により、違法に他人に損害を加えたときに国家賠償責任が生じる

国会の立法行為や裁判所の判決も対象であり、職員に権限行使の意思に関わらない外観主義をとる

法令上具体的な作為義務があれば不作為も違法な加害行為となり、損害には生命、財産、健康のほか精神的損害も対象となる


国家賠償請求が認められれば、国又は公共団体は損害賠償責任を負うが、公務員個人に故意又は重過失があれば求償権を行使できる

→直接公務員個人に損害賠償を求めることについては、国の賠償責任で被害者の救済は事足りるから、あえて公務員個人に賠償を請求する必要性があるとはいえない(判例)

国家賠償の請求にあたり、違法な行政処分の取消または無効確認をあらかじめ得ておく必要はない

→損害の賠償は違法な国家の行為による現実の損害に着目して補填を求めるもので、法的効果を否認し、法的義務の拘束を免れるものではない


加害行為を行った公務員や加害行為そのものの特定がされていなくても、国や公共団体は賠償責任を負う

→複数の公務員の行為で損害を受けたときに加害行為を特定するよう求めるのは酷

損失補償の対象となる損失に精神的損失は含まれない


憲法10分(人権)1

2013-12-25 20:13:23 | 憲法
天皇
明治憲法と違い天皇は統治権の総覧者ではない(司法・立法・行政権の三権が属しない)

内閣は天皇の国事行為に助言と承認を行い、全面的に責任を負う(天皇の政治的無答責)

天皇は全部又は一部の国事行為を委任できるが、法律の定めが必要

※国事行為の臨時代行に関する法律の「委任」、皇室典範の「摂政」

皇室の費用(公的・私的を問わず)はすべて予算計上し、国会の議決が必要

皇室の私有財産の授受には、有償・無償にかかわらず国会の議決が必要

※皇室が特定の個人や団体と特別の関係にたつことを防止するため


天皇の意思による生前の退位は認められておらず、天皇が崩じたときに皇嗣が直ちに即位する

天皇には刑事責任のほか民事裁判権は及ばない(日本国の、日本国民統合の象徴)(判例)

天皇の認証がない国務大臣の任免、条約の批准は有効(×無効)である

※認証とは内閣など他機関により有効に成立している行為等につき、公に確認・証明するもの



天皇の国事行為
国事行為の分類
◆行為そのものが形式的、儀礼的なもの
◆認証行為
◆それ自体は国政の権能だが実質的決定権が他機関にあり形式的儀礼的なもの

天皇の国事行為にかかる内閣の助言と承認には絶対的に拘束される

※天皇の発意を内閣が応諾する閣議は認められない

天皇の私的な行為(散歩、旅行、外国への訪問など)には内閣の助言と承認は必要なく、責任も負わない

※6、7条
●内閣総理大臣の任命(国会の指名)
●最高裁判所長官の任命(内閣の指名)
○憲法改正・法律・政令・条約の公布
○国会の召集
○衆議院の解散
○国会議員総選挙の公示
○国務大臣等の任免・全権委任状等の認証
○大赦等の認証
○栄典の授与
○批准書の認証
○外国の大使・公使の接受
○儀式(例えば即位の礼)の実施



憲法9条
9条は前文と同じ基盤に立つ理想の宣言としての性格があり、裁判規範としての性格は希薄

憲法は、自衛権を放棄しているのか、自衛戦争を禁じているのかという議論がある

※自衛権:他国の急迫又は不正の侵害に対し、対抗排除するために真にやむをえない防衛手段をとる国家の権利

最高裁判所の9条解釈
○わが国が主権国として持つ固有の自衛権は否定しない(砂川事件)

○自衛のための戦力の保持に関する判断は統治行為である(長沼事件)

政府の9条解釈
○戦力・交戦権放棄は不戦条約の範囲を超え、最も徹底した軍備廃止を誓っている

○自衛のための最小限度の実力の保持を禁じているものではなく、自衛隊は憲法上禁止される「戦力」にあたらない

○自衛権の行使は必要最小限度にとどまるが、集団的自衛権はその範囲を超え許されない

※集団的自衛権は国連憲章で認められている



基本的人権保障規定の私人間適用
憲法は本来「公対私」を予定し、私人間の関係を予定しておらず、私的自治の原則に委ねる考え方をとる

学説は無効力説、間接適用説、直接適用説があり、通説判例は間接適用説

※民法等の法律を通じて憲法の理念実現を図る、例えば公序良俗違反

憲法の自由権と平等権の規定は国又は公共団体と個人の関係を規律し、私人間の調整は私的自治の原則にゆだねられ、直接適用されない(企業の行為が国の行為に準じる高度に公的機能を有する場合も)

企業が特定の思想・信条を有するものの本採用を拒否することは憲法の保障する思想・信条の自由に違反しない(三菱樹脂事件)

※法律により特別の制限がない限り違法視することはできない


私立大学が学生の政治活動を理由とする退学処分の内部規定を置くことは教育を受ける権利を侵害せず、規定が違憲かどうかを論ずる余地はない(昭和女子大事件)

就業規則で女子の定年齢を男子より低く設定することは、法の下の平等に反しないが、性別を理由とする不合理な差別として公序良俗に違反し無効(日産自動車事件)



基本的人権と公共の福祉
「公共の福祉」の文言の性質による分類
○内在的制約説:公共の福祉は人権相互の矛盾衝突を調整する、すべての人権に内在的に存在する制約

※12・13条は訓示的・倫理的規定

○外在的制約説:12・13条の公共の福祉は、人権の外にあって制約できる一般的な原理

※22・29条の公共の福祉は訓示的規定。チャタレイ事件判決に近い
※公益や公共の安寧秩序といった概念に頼れば、明治憲法における法律の留保のように簡単に人権侵害が肯定される恐れがある

○内在・外在二元的制約説:公共の福祉は自由国家的制約と社会国家的制約の2つに分類

社会国家的制約(政策的外在的に行う強い制約)は経済的自由権(22、29条)や社会権(25~28条)に限られ、ほかは必要最小限の内在的制約のみ

※自由国家的制約には必要最小限度の基準、社会国家的制約には必要な限度の基準で違憲審査
※基準が抽象的で判例の集積を待つ必要があるほか、制約内容いかんでは外在的制約と大差なく、条文に根拠を求めてない
※自由権と社会権が相対化しており、新しい人権の根拠が生まれてきていることに対応してない

☆内在的制約説では12、13条の規定の有無にかかわらず制約でき、外在的制約説では12、13条の規定ゆえに制約できる?


基本的人権制約の具体的判断基準による分類
○比較衡量論
すべての人権を制限「する利益」と「しない利益」を比較衡量して、前者の価値が高い場合に人権を制限できるとする理論

※○全逓中郵事件、博多駅テレビフィルム提出命令事件、×東京都公安条例事件

※同程度の重要な人権間で調整する原理だが、公権力と人権が対立した場合公権力側に比重が高まる危険性がある

○二重の基準論
精神的自由権の規制は基準を厳しく審査(合憲性の推定は働かない)し、経済的自由権の規制は基準を緩やかに審査(合憲性の推定が働く)

※立法府の裁量を尊重(小売市場許可制合憲判決、薬事法違憲判決など)

※経済的自由権への制約基準はさらに2つに分類
◇警察的規制(消極目的規制)は、より緩やかな手段がないかを審査するとする「厳格な合理性」の基準
◇政策的規制(積極目的規制)は、規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限り違憲とする「明白の原則」


チャタレイ事件判決
表現の自由を制限できる根拠を12条・13条の「公共の福祉」に求めた

東京都公安条例事件:集団行動による表現の自由に対して必要最小限度の措置を事前に講ずることはやむをえない

※公共の安寧秩序を維持する利益を考える「比較衡量論」は採用していない

都教組事件判決:地方公務員の争議行為の禁止・罰則規定を適用できる場合を限定的に解釈した


憲法2013

2013-11-18 00:33:24 | 憲法
憲法の生存権の規定は、判例は抽象的権利説をとっている(×プログラム規定説×具体的権利説)

国会の定足数は3分の1

国会議員は法律の定める場合を除いて、国会の会期中は逮捕されない。


司法権の作用(具体的な争訟に法を適用・宣言・裁定)に違憲審査権は含まれない。

司法権は具体的事件性がなくても審査を行うことがある(民衆訴訟)。


条約の承認は30日以内に参議院が議決しないときに衆議院の議決が国会の議決となる。
※法案60日、内閣総理大臣の指名10日

憲法改正の発議には各議院の総議員の3分の2以上が賛成が必要(法定数か在職議員数かは争いがあるみたい)

生活保護給付金の増額を求めた朝日訴訟では、本人死亡により結果として憲法判断をしてない

天皇には民事裁判権は及ばない

婚外子の相続分に関する民法の規定を、法の下の平等を定めた憲法に違反すると裁判完全一致で判断

衆議院において可決し、参議院においてこれを修正議決した法律案は、衆議院において過半数でこれに同意する議決をすれば、法律となる(H24出題)


憲法2007

2007-10-31 00:34:36 | 憲法
公衆浴場距離制限に関しては、昭和30年の判例のほか、平成元年に新判例がでている。
結論は変わりない(距離制限規定は合憲)が、前者は衛生面低下の防止という公共の福祉(消極目的)に照らして合憲、後者は公衆浴場の転廃業防止という積極目的に照らして合憲となっている。

財産権を保障した憲法29条はプログラム規定ではない。

財産権の制限に対する正当な補償とは、相当又は合理的な補償を意味する、というのが判例である。ただし、土地収用法による補償は、完全な補償(収用前後において財産的価値が等しい状態)が必要らしい。

現行犯の場合を除き逮捕の際に令状が必要である。ただし、事前の令状が必要かというと、緊急逮捕の場合には、事後の令状でも許される。

公務員は憲法擁護義務を負うが、この公務員には地方公務員も含まれる。

国民には勤労の権利と同時に勤労の義務があるが、この義務は国民全員に課せられてるのではなく、勤労の能力と機会があるのに勤労しない人に生存権等が及ばないとする趣旨である。

国会は唯一の立法機関だが、最高裁判所の規則制定権は、憲法が定める例外である。

参議院の緊急集会では、内閣の提出案件とこれに関する事項のみ審議する。議員の発議は案件に関連するものに限定される。

国会の会期延長も、衆議院の優越が認められている。(国会法)

内閣総理大臣の指名、予算の議決、条約の承認については、両議院の議決が異なる場合、両院協議会をひらく義務がある。

衆議院が解散された場合、解散の日から40日以内に総選挙を行い、選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない。

国政調査権は、国会ではなく各議院の権能である。

国政調査権が及ばない行政権の内容の例として、刑事司法のうち、起訴・不起訴について政治的圧力につながる調査の続行が考えられる。

不逮捕特権の例外の一つは、院外の現行犯であり院内の現行犯は含まれないので、院内の現行犯なら不逮捕特権を主張できる。

最高裁判所の裁判官の任命手続
長官は、内閣の指名と、天皇の任命、国民審査である。
その他の判事は、内閣の任命と、天皇の認証、国民審査となる。
☆その他の判事について長官に指名権はないようだ。

内閣総理大臣が、国会議員を除名された場合どうなる?

⇒内閣総理大臣は国会議員である必要があるので、その地位を失う。
また「内閣総理大臣が欠けた場合」に相当するため、内閣は総辞職をしなければならない。

政党による党員の除名処分については、司法審査の対象になりうるが、処分の妥当性ではなく、処分の手続きに違法性があるかだけを審査する。
☆宗教団体の除名は必ずしも審査対象にならない。判断基準が宗教の教義になる場合、裁判所で判断しようがないから。

条約の違憲審査については、一見きわめて明白に違憲無効な場合のみ、司法審査の対象となる。放棄しているわけではない。

地方議員の除名処分は手続きの違法について司法審査の対象となるが、国会議員の除名処分=資格争訟は対象ではないと、憲法で定めている。

裁判官は、任期(10年)中報酬を減額されることはないらしい。

裁判官の懲戒処分は、行政機関が行なうことはできない。

政治事件、出版の犯罪、人権問題は、対審を非公開にすることはできない。

判決はすべての事件で非公開にすることはできない。

最高裁判所長官の指名、最高裁判所のその他の裁判官と下級裁判所の裁判官の任命は、合議体としての内閣の権能。

国会議員であると否とにかかわらず国務大臣は、議院から出席を求められたときは出席しなければならず、また、秘密会の場合を除いて、いつでも議案について発言するため議院に出席することができる。

調査権により調査を行う場合には、議会は、予め予算の定額の範囲内でその調査のために要する経費の額を定めておかなければならない。