拈華微笑 ネンゲ・ミショウ

我が琴線に触れる 森羅万象を
写・文で日記す。

 絆のビリヤード

2021年11月09日 | ヨーロッパの風

  一昨日、相方の両親宅へ訪ねたとき、いつものように義父とビリヤードをしたが、今回は1 勝 5 敗 で私は大敗した。

 

  4,5年前の私の定年退職と義理の両親の老齢化にともない、私は2週間に一回のペースで両親宅を訪ねるようになった。

  義父は昔、ヨーロッパでは結構名の通ったオペラ歌手、義母はフランス語教師で二人共ある意味典型的『西洋人』であるが、

  こんなに頻繁に彼らに接するまで、私の周りに西洋を特に感じさせる要素が特になかったので、意外に身近なところに『西洋人』がいて

  それを観察する『歩く東洋人』馬骨がいることの『縁』を感じぜずにいられない今日このごろである。

 

  何せ初めの頃は、私はフランス語も全く話せず、彼らの社交の入り口である『クラッシック音楽』とは無縁x1000の10乗…の距離にあり、

  彼らにとって、私は典型的日本人?無口でニヤニヤして何を考えているかちっとも解らない系・・・の人間であったから、家族が集合した時など

  最初の2,3の質問のあとは、あまり話しかけてこなく、それはそれで有り難かった。

  皆ワインで乾杯してから何杯か飲む習慣があるので、酒に弱い私は誰よりも早く酔って眠くなるので、

  サロンのソファで堂々と横になる非常識権を獲得し、後半のデザートの時間まで放置していただいた。

 

  義父とはこんな感じであったので、年に5,6回、顔を合わせるとき、義父は彼の書斎の横にある小さなビリヤード台に私を招き、

  私の知っているビリヤードとはだいぶ趣の違う、よりゲーム性のつよいミニビリヤードのやり方を教え、会うたびにこのゲームをするようになった。

  およそ30年の歳月が流れ、ついに私もビリヤードに開眼したのか最近急に強くなったのと反比例して、義父の腕は衰え、不調のときは敵方の私の玉を

  誤って突いてしまう時があるほど軽いボケが彼を襲う。

  昨年義母が長期入院していたときは不調の絶頂のときで、玉を突かず、キノコ状に立っているピンを玉と勘違いして突くこともあった。

  最近はそんなボケもなくなったが、それでも私が若干手加減をすることが多くなっていた。

  しかし、一昨日は義父自身が何度も頭をひねるほど、昔の完全無敵の義父になって絶好調であったのだ。

  音楽以外はこれといった趣味があるわけではない義父にとって、2週間おきの私とのこのビリヤード対決は案外、彼の人生に少なからぬ刺激を

  与えているのかも知れない…。 

  言葉を介す必要のないビリヤードが、娘婿である私、東洋人と西洋人の彼との一種の『絆』となっている。

       

  義父は禅の老師といっしょで、これまで30年間『無指導』で教えることがなかった。

  最近ようやく、私は全体を感じることができるようになり、勝つことが増えてきた。・・・でも、それが彼の『教え』であったのだろうか?

          

  

  



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