社会の鑑

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警察庁サイバー局新設構想とマスコミ

2021-08-28 15:46:00 | ノンジャンル
問題の本質を理解しないマスコミ
-警察庁サイバー局新設に対するマスコミの反応-

 6月24日、国家公安委員会後に開催された記者会見で、突如、松本光弘警察庁長官は、「サイバー事案への対処能力の強化を図る」ため、「警察庁にサイバー局を設置」し、「一定のサイバー事案について捜査を行うための組織(直轄隊)を設置」することを明らかにした。
 直轄隊は、警察庁の地方機関である関東管区警察局に置かれるという。これでは、地方機関とはいえ、警察庁が自らサイバー事案を捜査することとなり、捜査は都道府県警が担うという、戦後警察の原点に抵触するものである。
 この構想は、翌25日と26日にかけて、各マスコミで取り上げられた。
 このことについては、筆者は、「警察庁のサイバー局・直轄隊創設は国家警察の再来-権限のさらなる拡大、監視機能が強まる危険-」週刊金曜日1339号(7月30日号)と「警察が目指す『戦前回帰』-『サイバー犯罪』を大義名分に権限拡大-」紙の爆弾9月号で、厳しく批判した。

 このサイバー局新設についての、マスコミの、その後の動きを紹介しよう。
・山陽新聞、7月3日、「サイバー局創設 海外機関との連携進めよ」との社説
・日本経済新聞、7月4日、「スキあり、サイバー捜査網 権限巡り欧米と落差」
・神奈川新聞、7月19日、「警察庁サイバー部隊 深刻な脅威に対処せよ」との社説
・日経クロステックス、7月21日、渡辺洋司のセキュリティー異説真説「警察庁サイバー局が『最低評価』の日本浮上のきっかけになるか、その期待と課題」渡辺洋司・サイバーセキュリティクラウド
・読売新聞オンライン、7月28日、「対サイバー攻撃 国際連携カギ…警察庁 『直轄』部局新設へ」との解説
・中國新聞、7月30日、「警察庁のサイバー局創設 国際連携強め攻撃防げ」との社説
・時事ドットコム、8月25日、「『代表不在』サイバー捜査にただよう危機感 警察庁が組織を新設する理由」

 それらの論評の多くに共通することは、①欧米各国では、国の機関が対応しているという実情、②国家の関与が疑われる大規模攻撃の存在、③国際機関との協調である。
 「サイバー犯罪・攻撃には国境がないからだ。サイバー局創設を機に、各国の捜査機関と信頼関係を築いて国際的連携を深め、社会インフラや国民を守らなければならない。」との主張や「近年、サイバー攻撃は中国やロシア、北朝鮮など国家レベルの関与が疑われ、大規模化や巧妙化が進んでいる。だが、現行の都道府県警察の枠組みでは、こうした大規模な攻撃への対応に限界もある。
 欧米では高度な専門性や技術力を持つ国家機関が捜査を担うのが一般的で、今回の組織改正は世界的な流れに沿った形だ。遅ればせながら、警察庁が「世界標準」に肩を並べるようになるといえよう。」との主張もあるが、欧米基準を日本に当てはめなければならない理由にはならない。
 国にはそれぞれ歴史がある。警察制度についても同様だ。
 国家警察が存在さない日本で、このような主張を行うことは無理がある。
 現在の制度を前提とした議論をすべきであって、枠を超えた議論は、現実的ではない。まさに、それは、サイバー局の新設を理由とした国家警察の復活である。 
 これらに共通しているのは、サイバー局の新設を国際連携の視点から歓迎していることであり、国家警察の復活や警察の内務省化の視点は全く欠落している。
 中國新聞は、「皇族の護衛や警戒に当たる皇宮警察本部を除き、国が直接捜査を担うのは、1954年の警察庁設置以来、初めて。従来は、警察庁は警察行政に特化し、捜査は都道府県警察が担ってきた。歴史的転換と言えよう。」と主張している。
 なぜ「歴史的転換」と割り切ってしまうのか。その根源にある問題に触れてこそ、その本質が明らかとなるのである。
 警察の内務省化、警察の戦前への回帰は、絶対に許してはならない。それこそが、警察改革の原点である。



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