くろねこなてんし

コードギアス~反逆のルルーシュ~のスザルル小説を載せたブログ。

It's more愛 ~君曜日~ suzaku side

2007-01-26 00:46:37 | スザルルリレー小説
suzaku side   森田望愛



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「…今日って4月1日じゃなかったよね?」

思わずそう訊き返すと、ルルはぽかんとした表情を一瞬浮かべたが、すぐに「何馬鹿なこと言ってるんだよ」と僕の左の手の甲を軽くつねった。

「4月なんてもうとっくに終わってるじゃないか。お前、頭おかしくなったんじゃないのか?」
「じゃ、じゃあ…さっきのは、本気ってことかい?」
「さっきのって?」

しれっとした顔でルルが訊き返す。
さっきのって? じゃないよ!

「さっき、今日はミレイさんのところに泊めてもらうって言ったよね!? それって、本気なのかって訊いてるんだけど!」
「うん」

これまた、どうってことないような口調で言うけれど、僕にとっては大問題なんだけど!
あまりのショックに思わず閉じた本を机に叩き付けてしまい、慌てて周囲に「すみません」と頭を下げた。
ここは、図書室。
さっきの声もどうやら相当大きかったらしく、周囲の目はかなり冷たい。
それは当たり前だ。
皆、試験勉強にいそしんでいるところなんだから。
かくいう僕とルルーシュも試験勉強中なので、集中してる時に騒がれるとどれだけ迷惑なのか、よく分かっている。
申し訳ない気持ちになりつつも、僕は今にも大声で叫び出してしまいそうだった。

「…うん、って…そんな簡単に言うけど、理由は? 普通、女の子の家に男の子は泊まりにいかないよ?」

少なくとも恋人でなければ。
あえて飲み込んだけれど、なんだか泣いてしまいそうだ。
僕というものがありながらそんな…。そりゃあ、ミレイさんはとても綺麗だけど(多少変わってるけど)、でも、僕たちは永遠の愛を誓ったはずだよね…?
夕べだって…あんなに…その…あれ、だったのに。
しゅんと肩を落としている僕を見て、ルルーシュはくすくすと笑う。

「何だよ、お前。もしかして嫉妬してるのか? 会長に? 俺と会長がどうかなるなんてありえないじゃん。今日だって、生徒会の仕事で泊まりに行くだけ…」
「じゃあ! 僕だって呼ばれていいはずだよね!? 僕だって生徒会役員…」

激した僕のすぐ耳元で、「ゲホゲホっ! ゴホン!」という怒りの咳払いが…。
気付けば、すぐ横に(ルルーシュが座っていない側の)二人、後ろに三人、そして、机をはさんで向い側に五人の生徒が仁王立ちになり、僕のことを睨んでいた。
うるさくするなら出て行け、と無言のプレッシャー。
ルルーシュは唇を尖らせ、

「ほら、スザクが騒ぐから怒られただろ。全くもう…」
「だ、だって…」

ルルーシュは手早く二人分の荷物をまとめると、「行くよ」と僕の右手の中指を掴んだ。
どうせだったら手、つないでくれたらいいのになと思うけど。
恥ずかしがりだから、これで手をつないだ気になってるのかも。
それとも…僕から強引につないじゃってもいいのかな…?

図書室を出て、生徒会室に向かう。
テスト前だけあって、誰も来ていなかった。
落ち着くようにと、ルルがお茶をいれてくれた。
最近、ルルがこっているジャスミンティーだ。

「…それで? ここなら周りに迷惑にはならないけど、まだ話すか?」
「まだ話すか、って…話すに決まってるじゃないか! 生徒会のことなら僕だって関係が…」

ある、とまでは言えなかった。
ルルがキスで言葉を制したからだ。
軽く押し当てられただけのキス。ふわりと香ったのは、ジャスミンの香り。
唇のキスの後、軽く鼻の頭にもくちづけられた。

「…せっかく二人きりなのに、話だけ?」
「そ、それは…。で、でも…」

紫色の瞳が薄く細められ、魅惑的な光を放つ。
下から見上げるように見つめられて、ドキドキしてしまう。
ルルの手が詰め襟にかかる。
ゆっくりとホックを外していき、気付いた時には、僕はしっかり上着を脱がされていた。
ワイシャツ越しにルルの手が触れる。
少しだけ…熱っぽい。

「話だけ、なんてつまらないな…。だって、今日はスザクだって、軍の宿舎に泊まり込みだろう? 夜は離ればなれになっちゃうのに…」

言われて、はっと気付く。
そうだ! そういえば、今日は…!
明日、僕が所属している基地では、周辺住民を招いての感謝祭が開かれる。
その準備のため、宿舎に泊まり込むことになっていた。

「で、でも…それとミレイさんとこに泊まりに行くのは話が違う…」
「もう黙れよ。…また、口、キスで塞がれたいんだ?」
「え…いや、その…そうじゃなくて…」
「してあげてもいいけど?」

くすり、と笑って、ルルは僕の肩に頭を寄せた。

「明日の感謝祭、楽しみにしてるな。ランチ、一緒に食べよう?」
「うん…」