鉄人 須藤 將のホームページ

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「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その34

2009-08-23 05:36:07 | 車・バイク
アメリカから帰国すると、由香里は、ALMS第9戦プチルマン1000milesに参加したメンバーを集めて、ジョンニール・クロスノフ、上月円夏と伴にマツダ797の設計要件の検討に入った。
メンバーのプチルマン1000milesの反省、記録メモと車載データレコーダーをメインに、テレメーターデーターを含む情報システムの分析から、次の4項目を797の設計テーマとした。
第1は、コーナリング重視のハンドリング性能と出力特性。
第2は、マシーンの耐久・信頼性の向上、特に駆動系。
第3は、乗りやすさ。
第4は、水素タンクの事故時の安全性確保。
第4は、ボディ・シャシー~2010年規定に合うクローズドボディ

第1のコーナリング重視の出力特性については、すぐに杉浦に依頼された。杉浦は、トルクカーブを中低速にかけてできるだけフラットな特性にすることを約束した。
ハンドリング性能については、車載データレコーダーのプチルマン1000milesのデータをベースに、ローラのシャシーを構造解析して設計変更することにした。
早速、本社のシャシー設計グループにローラのシャシー構造解析を依頼した。

第2の駆動系の耐久・信頼性の向上が急務であった。そうした時期に、ALMSでのトランスミッション不具合の話を聞きつけたマツダE&Tの松本が顔を出した。松本は、西田と伴に1990年2月にマツダスピードへ出向したときに、当時のポルシェ5速トランスミッションを改良したその人であった。
由香里は、マツダE&Tに掛け合って、松本に駆動系開発のリーダーになってもらった。
松本は、早速6速トランスミッションの改良案の作成に取り掛かった。
負荷のかかるベアリングの冷却をミッションオイルで十分に行なえる構造にして、新たにミッションオイルクーラを設けることにした。
CVジョイントの熱害対策も重要であった。ターボチャージャーの採用で、熱負荷がかなりかかりそうである。遮熱板を設け遮熱対策を十分に行なった上、フレッシュエアーを導入することにした。

第3の乗りやすさは、コーナリング重視のハンドリング性能と出力特性が確保されればかなり乗りやすいクルマになる。それに加え、マネージメントシステムとして、従来の計器板を、単純なディスプレイにして、ドライバーの負荷を軽減することにした。このディスプレイは、最新の航空機のディスプレイを参考にして開発することにした。ボディは、2010年のクローズドボディの技術規則に対応することにした。

第4の水素タンク(700気圧高圧縮水素ガス)事故時の安全性確保は、非常に難しい問題であった。
円夏はスミソニアン博物館を訪れたときに、太平洋戦争の時のグラマンが、燃料タンクの防弾対策としてタンクの内側にゴムをコーティングしていたことが、書かれていたことを思い出した。水素タンクにも内側にゴムをコーティングすることとなった。さらに、配管等の欠損で急激な圧力低下が生じた場合には、水素のタンクからの供給を自動的にカットする安全装置の開発を行なうことにした。

こうしてマツダ797の設計品質が徐々に確保されていった。

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