鉄人 須藤 將のホームページ

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RX7物語その3

2009-07-23 03:26:06 | 車・バイク
内山は、国内認証のことを考えれば、オイルショックによって引き起こされた社会環境から国内向けは2+2シーターにすべきであるとの考えにいたった。後にアメリカでも、モタースポーツのホモロゲーションの関係で2+2シーター・バージョンが必要になった。

内山は、2+2シーターと前後輪の50:50の重量配分にこだわった。
基本的なパッケージングでスポーツカーとしてのハンドリング性能がきまる。国内5ナンバークラスの車幅からトレッドは1400mm前後となることから、ホイールベースは2400 mmあたりが最適パッケージングである。
優れたハンドリング性能を得るためには、50:50の重量配分とヨー慣性モーメントをできるだけ小さくできるフロントミッドシップ・レイアウトは必須であった。

そうした条件の中で、国内2+2シーターのパッケージングを実現しなければならない。
+2の後部座席は、日本人の平均的女性JF50%タイルの居住空間を確保することを目標に、レイアウトの検討が進められた。
北米2シーターは米国人男性の90%をカバーするAM90%タイルのレイアウトからフロント・シートを日本人男性の90%をカバーするJM90%タイルのスライド量にすれば、対米モデルから80mm前後寸法が生まれる。その寸法で国内2+2シーターを実現させる必要がある。
デザイナーが描いているイメージスケッチのルーフからリヤに流れるキャノピー・ラインを実現するためのリヤ・シート着座位置を検討した。
全高を低くするためにフロント・シートのAM90%タイルのヒップポイントを極力下げ、ルーフ高さを決めて、リヤ・シートのJM50%タイルのヘッドクリアランスをキャノピー・ラインから確保し、着座姿勢を検討して、国内2+2シーターを可能にした。

国内2+2シーターのパケージングがかたまり、レイアウトの詰めを行っていたとき、リヤ・サスペンションをどのような配置にするか問題になった。サスペンション形式はターゲットとするコストと性能から、スカイラインの50連勝を阻んだ常勝レーシングカーRX-3レーシングバージョンの4リンク+ワットリンクを採用することが決定していた。
この4リンク+ワットリンクをそのままの配置でレイアウトしたら、安全上、問題が生じた。
後部衝突要件でガソリンタンクからの燃料漏れの項目がある。これをクリアーするためには、ガソリンタンクの前後にクラッシュ・スペースを設ける必要がある。
RX-3レーシングバージョンのワットリンクはデファレンシャル・ケースの後部中央にピボットが溶接されていた。これでは、クラッシュ・スペースを稼ぐことができない上、衝突時にはピボットがガソリンタンクに食い込み、燃料漏れが生ずることが予測された。
これを解決するには、ワットリンクのレイアウトを変更するか、デザイナーが描いているイメージスケッチのショート・テールを変更してロング・テールにするかである。
ロング・テールのすると、デザイン上のキュートなイメージが損なわれる上に、ガソリンタンクという重量物が重心より後部に移動することにより慣性モーメントが大きくなり、操縦性能に影響がでる。
そこで、ワットリンクのレイアウトを変更し、デファレンシャル・ケースの前部右側にピボットを設けることにした。デファレンシャル・ケース前部中央部は、ピニオン・シャフトがありピボットを設けることができない。右側にオフセットさせたのだが、ロッドが非対称になった。このレイアウトで先行実験を行ったところ、車体が左右にロールしたとき、車体と車輪の左右方向のバランスが崩れてしまう。

内山は、頭をかかえた。ある日、内山が帰宅すると、小学一年の長男がおもちゃの縮尺器を使って遊んでいた。それをなんとなく眺めていたら、縮尺器をつないでいるボルトをはずして勝手な使い方をはじめた。そのとき内山の頭の中にひらめいた「ワットリンクも同じではないか」。
左右のアーム長が異なっても、取り付け位置を選べばピボットが直線で上下することが分かった。早速実車テストしたところ、RX-3と同等の性能が得られた。

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