鉄人 須藤 將のホームページ

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「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その1

2009-07-22 01:36:46 | 車・バイク
ノンフィクションの小説で、出版を目的に書いています。コメントをお願いします。

第1章 プロローグ モルディブ諸島

スリランカ航空の飛行機の窓から見下ろすインド洋は残光の中にブルーグリーンに輝き、点在するさんご礁の白さと島の緑の陰影がとても美しく、杉浦紘しばらく見とれていた。
もうすぐマーレ空港である。
隣の席で、由香里がモルディブ諸島のパンフレットを読んでいた。
二人は、昨日、四谷の聖イグナチア教会で結婚式を挙げ、六本木ヒルズのグランド・ハイアットホテルで披露宴を執り行ったばかりであった。

杉浦は、早稲田大学理工学部機械工学科4年の時、1991年のル・マンでロータリーエンジンの787Bが優勝したシーンをテレビで見てロータリーエンジンに興味をもち、教授の推薦で内定していたトヨタ自動車への就職をキャンセルし、遠い親戚である山本健一の口利きで面接、試験を受けて翌年4月にマツダに入社した。
配属は、ロータリーエンジンの開発がやりたいと人事に何度もかけあって、パワートレイン開発本部第2エンジン開発部ロータリーエンジン設計グループに配属になった。
グループリーダー田島誠司の下でロータリーエンジンの設計を行なうことになった。
配属されると、すぐに先行技術プロジェクトに抜擢され、アイドリングのような低回転低負荷時にロータリーエンジンの弱点があり、それをどうやって克服するかというテーマで技術研究所と共同開発することになった。

アイドリング時を中心とした燃焼安定性を改善したいと目論見で、どういう手段があるかとプロジェクトメンバーで議論した。その中で、杉浦はサイド排気を主張した。
そうすると、サイド排気の考え方はロータリーエンジン四十七士の昔からあったのだそうだ。
過去、何回もトライされたそうだ。それで何百時間回すと、エグゾーストポートがオイルのカーボンでどんどん詰まってきて、最後割り箸1本しか通らないような状態になって、糞ずまりになってしまうのだそうである。
技術研究所の赤木祐治リーダーが、いったん燃えたガスを次の吸気工程に持ち込んでしまう、内部EGRの量を極力減らす手段として、サイド排気というものに最もポテンシャルがあるだろうと意見を述べた。
エグゾーストポートがオイルのカーボンで詰まる現象は、最近のコンピューター制御を用いれば解決できるのではないかと田島リーダーがバックアップしてくれた。
そこで、サイド排気を採用したロータリーエンジンを試作して実験することになった。
杉浦が図面を書いて、試作して回してみたのはいいだが、もうガッタンガッタンしてアイドリング時さえまともに回らない・・・。
杉浦は、テストベンチの担当の西田に呼びつけられた。

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