鉄人 須藤 將のホームページ

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「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その43

2009-09-01 05:30:34 | 車・バイク
駆動モーターは、三相交流モーターで、当初ホイールイン・モーターが検討されたが、サスペンションのバネ下重量が大きくなり、路面への追従性が悪くなることから、車両後輪中央部に左右駆動用モーターを2個配置するレイアウトとした。モーターの定格出力240kwで、左右合計で650hp以上に相当する。
このモーターは、燃料電池スタックからの電流をDC-DCコンバーターで680Vまで昇圧し、インバーターで交流に変換して駆動される。

この2個のモーターをコーナリング時に回転差制御を行えば、リミッテドスリップ・デファレンシャルの機能を持たせることができると同時に、コーナリング特性をコントロールできるメリットがある。
制動時には、ブレキペタル力に応じて回生制動が働き運動エネルギーを回収して、リチウムイオン電池に蓄える。加速時には、燃料電池にリチウムイオン電池が加わってモーターに電気を送る。回生制動のみで制動力が不足する場合に油圧ブレーキが協調制御で加わる。
この回生制動の採用で、燃料効率が上がり、燃料タンク容量をその分少なくできるメリットがある。

水素燃料タンクは、700気圧の高圧縮水素ガスを蓄えるため厚さ2mmのステンレス鋼製プレートで製作することにした。衝突時の安全性を確保するために、衝撃G及び急激な圧力低下が生じた場合に水素ガスをカットオフする。

リチウムイオン電池は、回生制動で回収した電気や燃料電池であまった電気を蓄えたり、加速時に足らない電気を補ったりするのに必要な最小限度の容量を確保する。

駆動用の三相交流モーター自社で製作した。最初は空冷で設計されていたが、高負荷の連続運転で使用すると、モーターが高温になり、永久磁石の磁力が低下して出力が下がるキューリー現象が生じた。そこで、モーターを水冷することになった。
水冷モーターでは、出力低下現象は起こらず、目標の240kwで24時間連続耐久もクリアーした。
トルク型よりも回転数型の方が軽量にできるという観点から、遊星歯車を用いた減速機構を介してドライブシャフトを駆動することになった。

カーボンモノコックを採用した2010年規定に合カーボン性のクローズドボディも完成した。

チタン製のサスペンション部品なども完成し、四輪R&Dセンター栃木でチーフメカニックの日野栄治の下で組み立てられた。
完成した車両重量は、水素燃料車のマイナス50kgを生かすことができず、逆に約30kgほど重量が重く905 kgなっていた。

2008年5月に鈴鹿サーキットでシェイクダウンされ、各種のテストを経て、完熟走行テストに入った。

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