鉄人 須藤 將のホームページ

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ロータリーエンジンとモータースポーツ その47

2009-09-08 05:23:58 | 車・バイク
ニューレシングカーである787のコンセプトは、オーバー350km/hカー。
前後の重量配分の最適化を図るためと、高出力化による冷却要求量の増加に対する熱交換機能の増大を図るためにフロント・ラジエーター方式を採用した。
フロント・ラジエーター化とともに、ラジエーター以外の冷却や吸気のダクト類をボディサイドに配置して、ボディの上面をフラットにした。これによって、ボディで整流されたエアを受けるリア・ウィングは、低い位置にレイアウトされた。
空気抵抗を低減するために、50mmボディ幅が縮小された。これらの対策と、リア・ホイールアーチ・スパッツの採用などで空気抵抗は、767Bに対して約30%減少した。
シャシーは、767Bをベースにリファインされた。モノコックは、剛性と安全性の向上を目的として、フル・カーボン・ツインチューブのモノコックが採用された。
サスペンションは、基本的には767Bを踏襲しているが、ボディ幅の短縮を受けて、前後共、トレッドを50mm短縮した。取り付け点を内側にずらして、アーム長は同じとしている。

近未来技術であるマツダ独自のマネージメントシステムが787用に開発された。
マネージメントシステムは以前から使用していたが、それを飛躍的に改善した。
このシステムは、横浜技術研究所の平野、宮下が担当して開発していたが、その後、宮下がマツダスピードに出向して、多大の功績を挙げた。
走行中のレーシングカーから、エンジンの稼動状況、サスペンションの状態や車両挙動などの車両走行状態をテレメーター装置でリアルタイムに把握して、車両のセッティングやコンディションの把握、燃費マネージメントやトラブル防止など総合的な車両マネージメントを可能にするものである。
また、車両上でもドライバーに重要な情報を提供する。ダッシュボード表示装置が設けられ、燃費、燃料残量、ラップタイム、最高速などの情報を提供した。
このシステムで重要な役割を果たすのが車両の走行状態を検出するセンサーで、横浜研究所で開発されたセンサー技術が投入された。
車体の四隅に、光ビームを使った車高センサーを配して、走行中の車体と路面の距離を検出して、車体のロール、ピッチなどの挙動を解析する。
フェンダー内部に、赤外線検出技術を応用したタイヤ温度センサーが取り付けられ、タイヤのトレッド表面の温度を検出、タイヤの状態を常に監視できる。
4輪のダンパー、スプリングの取り付け部には、ピエゾ素子を用いたウェイト・センサーが配置され、各サスペンションにかかる荷重を検出。さらに、サスペンション・ストローク・センサーなどが装着されて、サスペンションの状態をリアルタイムで把握できる。
これらのセンサーから得た情報は、エンジン情報とともに、車両内のデータ収集装置に一旦記憶させた後に、テレメーター装置によりピット内のコンピューターに電送される。
コンピューターは大量の情報を瞬時に解析して、レースのリアルタイムな作戦や指示、ピット作業に反映される。
こうした開発が行われている1990年2月に、松浦は、優勝プログラムの開発責任者を命じられ、マツダスピードに出向して車両トータル開発を担当することになった。
いままでは、レーシングエンジンを供給する立場で、車両を見ていたが、今度は車両の立場からレーシングエンジンに注文を付ける立場に立った。

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