鉄人 須藤 將のホームページ

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「水素ロータリーがル・マンを制覇する日」その48

2009-09-09 06:13:42 | 車・バイク
F1に参戦してから5年、モータースポーツ部長の笹井は冷静だった。
「やっとここまで来た、なんて感慨はこれっぽっちもない。F1参戦を決めてから、ずっと先を見つめて計画を作った。今はただの通過点にすぎない」
どの世界にも「甘い夢」と「苦い現実」が存在する。F1も同じ。トヨタもまた、夢と現実の間で何度も立ち止まってきた。
F1で勝てない。
そうした時期、2006年秋、ACOが近年の地球温暖化問題、とりわけ温室効果ガスについての議論が高まる中、技術規則の見直しを図るためにトヨタの技術者を招集して意見を聞きたいと言って来た。
早速、笹井は沢村美雪を連れ、ACOに出かけて意見を述べることになった。
出かける前に、新社長の渡辺捷昭に挨拶にいった。
渡辺は、
「来年は生産台数でGMを抜いて世界のトップに立つ。世界のトップの企業としての自覚を持ち、なすべきことをしかりと主張してきてくれ」と笹井に言った。
そして、
「言ったことは必ず守らなければならない。ACOが地球温暖化問題、温室効果ガス削減を目標にした技術規則の策定を行なうのであれば、トヨタは率先して参加する必要がある。ル・マン参戦を含んでおいてくれ」
に笹井は目頭が熱くなった。
「来年で定年を迎えます。最後の仕事として、ACOに行って参り、帰り次第ル・マン参戦の組織を作り上げます」
と笹井は答えた。
いつの日にかの想いが実現できるのであるが、来年定年ということで、自分が直接統括していくことができない。

笹井は、帰国すると美雪を中心にル・マンチームの編成に取り掛かった。

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