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(07/06/01)

死者の書

2006年02月25日 | 丁稚 定吉の映画日記
わてが丁稚の定吉だす。
東京に下京した折、岩波ホールで「死者の書」を観て来ました。
いわゆる人形アニメーションという手法を使った作品で、その人形の作者でこの映画の監督が川本喜八郎。わての思春期の過敏な心に美の意識を植え込んだNHK人形劇三国志の人形の作者です。
シニア料金を払う女性で岩波ホールはあふれかえっていました。その全てが同じくらいの年齢、同じくらいの大きさ、同じような色、同じような臭い、レプリカントか?と思うような老眼鏡をかけたヨーダの集団。人形師の作る人形に共通の特徴があるとするならば、やはり人間とは神の作りし人形なのだろうか?という思いを強くしました。
川本喜八郎の人形の共通の特徴は切れあがった眼差しの鋭さと、その目の表情の豊かさ、そして透き通るまでの肌の美しさ。人間に例えて言えば柳楽優弥みたいなものです。
人形アニメ特有の「ちょっとずつ動かして動いているように見えるようにしたんだろうな」というご苦労様感よりも、物理的には動かないはずの表情の変化に驚かされました。
そこに音楽がマッチして、こう優雅っぽいというかベータ波出まくりというか、とろろんとした時空を超越した官能の極致というものを思い知らされたような気がします。
死者に魅入られた女が、その死者を思い曼荼羅を作る、こんな浮世離れした純愛は生身の肉体を持たぬ人形にしか演じられないでしょう。汚れた役者の肉体などではとてもとても…。
念仏を唱えるにしても「なむあみだほとけ」。「なむあみだぶつ」のような「ぶ」とか「つ」といった本能的にあからさまな汚さをイメージさせる有声音を使わない、そんなレベルまで作りこんであります。
大和由紀の「あさきゆめみし」というマンガがありましたが、あの時代感や美意識をお持ちの方は万難を拝して観るべき作品です。
現実とは遊離した官能のひとときというべき時間を過ごせました。

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5 コメント

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ほほぉ~ (ぽこすけ)
2006-02-28 19:34:11
岩波でかかるとは相当な良作でしょうね。

名前は聞いた事がないのですが、チェックしてみたいです。

あとソ連の「雪の女王」や日本の「くもとチュウリップ」も観てみたいですね。
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人形アニメ (mam)
2006-03-02 00:10:28
岩波ホールとはそんなに催し審査が厳しいのですか?

人形アニメってものすごく大変なイメージがあります。

人形五体のちょっとした角度の違いでいろいろな気持ちを現し、何コマも撮る・・・高い技術と根気のいる作業だなと思います。



ソ連の「雪の女王」は名作のようですね。

mamはまだ見た事がありませんが、昔人形アニメーションが好きな人がオススメだと言っていました!
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Unknown (わてが丁稚の定吉だす)
2006-03-02 00:26:00
岩波でかかる価値が分かる大人の方には自信持ってお薦めでします。拡大公開の方向性もあるようですので地方は無理かもしれませんがある程度の大都市でなら公開が期待出来そうです。

くもとチューリップは日本最初のアニメでしたっけ?

わてはトムとジェリーが大好きなんですが、連れに「欲しがりません、勝つまでは」の時代にトムとジェリーをやってる国には勝てないよね~、と言った時に反論されたのが多分そのことだと思います。確かに観てみたい!
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そです。 (ぽこすけ)
2006-03-05 23:26:18
 「くもとチューリップ」が正しい題名でした。



 確かに戦中に作られた映画ですが、よく検閲を通ったものだと。

 手塚御大などは同じ瀬尾監督の「桃太郎 海の神兵」で泣いたとか、よく言われますがやはりプロパガンダはプロパガンダで。



 あ~、話はそれましたが政治の話題をしたいのではないのでぐいませんごめんなさい。



 そういや検閲官の話で三谷さんが書いた映画があったような気がしましたが、なんか無性に観たくなってきました。明日TUTAYA行こうっと。



 妄言失礼致しましたm( __ __ )m
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Unknown (わてが丁稚の定吉だす)
2006-03-07 00:08:20
三谷作品の「笑いの大学」ですね。

検閲って人間が行なっている以上、そこになにかドラマがあって通るべきでないものが検閲を通ってしまうようなこともあったんでしょう。そんなドラマはなかったのかもしれません。

でもなんかそういうドラマを予感させるような作品ってワクワクさせてくれます。
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