文化調査船「ガラクタ号」 プログ版

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「猥褻(わいせつ)表現」は反社会的で有害なのか?

2008年03月02日 06時17分25秒 | 個人的な感想とか意見
警察の「猥褻表現の取り締まり」に対して、摘発・逮捕された側は「表現の自由」を主張することが多いようですが
審査本数減少で危機感=メーカー要望も、基準緩和-ビデ倫わいせつDVD事件(時事通信) - goo ニュース
「不当な介入」と抗議=表現の自由侵害、理解できず-審査部部長逮捕でビデ倫(時事通信) - goo ニュース
「表現の自由の侵害」 ビデ倫が警視庁の捜査を批判(朝日新聞) - goo ニュース

ちなみに「猥褻(わいせつ)」とはどのような概念なのでしょう。
ウィキペディアには、判例によれば、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」と定義されるとあります。
またその性格として、何かがわいせつであるか否かは、その時代、社会、文化に対応した一般人の性に関する規範意識を根底に置きながら、社会通念によって具体的に判断されるものである。とあります。

そして刑法ではこのように規定されています。
刑法第174条(公然わいせつ) 公然とわいせつな行為をした者は、6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法第175条(わいせつ物頒布) わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。


刑法第174条について考えてみます。「表現の自由」に反して適用される可能性があるのは「演劇系」の表現行為でしょうか。ひっかかる語句は「公然と」ですね。対義的概念は多分「内密に」「秘密に」といったものでしょう。その表現行為が「わいせつ」とみなされるもので、かつ不特定の「多数」に見られる「可能性」がある場合は適用されることになります。以前は女性の乳首が見えるだけでアウトでしたが、今では芸術性が高そうな前衛演劇や舞踏(バレエ)では、いたずらに強調されていない露出の場合にスルーされるようです。「性的興奮や羞恥心」を煽ることが目的ではなく、結果的にもそうではなかったからでしょう。単なる露出狂の行為との違いを示せないような表現では、法の適用以前に社会的に非難を浴びる事になります。

今回の摘発の根拠である刑法第175条をよく読むと、例え「わいせつな表現を含む著作物」であったとしても、それを制作しただけの人や組織は適用対象外ですし、著作物の購入者も取り締まりの対象ではありません。制作は日本で、販売拠点は法的に問題にならない外国で、販売方法はインターネットを使い「データ」をダウンロードかストリーミングで、日本在住の人が個人で楽しむ目的で買うという場合には適用外なのです。(印刷物やビデオ・DVDの場合は関税法69条の8第1項の適用になってしまい、個人で楽しむ目的の場合でもほとんどの場合輸入できません)対象になるのは、わいせつな表現を含む著作物を「社会に広めようとすること」です。大げさに言えば「日本の社会秩序を乱そうとする行為」を取り締まろうという法であるといえます。ウィキペディア刑法第175条によれば、法が守ろうとする目的(”保護法益”というそうです)には諸説があり、(1)性道徳・性秩序の維持、(2)社会環境としての性風俗の清潔な維持、(3)国民の性感情の保護、(4)商業主義の否定、(5)見たくない者の権利ないし表現からの自由、(6)青少年の保護、(7)女性差別の撤廃、(8)性犯罪の誘発防止、(9)表現の自由の保護 といったものが挙げられています。

写真や動画に於いて具体的な人体の猥褻部位とは「陰部」「陰毛」「肛門」「女性の乳首」があたるようです。既にこのうち「女性の乳首」が規制対象になることはないですし、「陰毛」については黙認状態です。関連記事を読んでみると、一部のAV作品では「肛門」にモザイクがを掛けてないそうです。残った「陰部」ですが、摘発されたビデオ作品では輪郭がわかるほどの細かいモザイクであったようです。しかし芸術作品では男性の陰部をそのまま描いた絵画・彫刻でも展示許可が下りることもありますし、男性器をかたどった巨大な造形物をその神社の宝物としていて祭事を行うところもあります。テレビでニュースとして放映する場合には「そのものを映さず」伝えるようにしているみたいですが、お祭りで町中を練り歩く時にはかなり多くの観光客が見守ります。映画では「シンドラーのリスト」ある場面で、状況を考慮してモザイクを掛けずに上映したそうです(TV放送も)。

漫画では時々摘発がありましたが、「成人コミック」の自主規制と販売場所の制限、コンビニでの閲覧防止措置などが印象を変えたのか、近頃はあまりニュースにはなりません。逆に一般誌とはっきり分けられた頃から、性交場面や性器の描写が際どくなったという評価もあります。活字の世界での成人向け書籍については、現在事実上取り締まりは無い状況です。一般の書店でも大量の成人向けの文庫本が売られています。近所の比較的大きな書店でも、漫画と違い成年向けコーナーに隔離されていません。新刊本が一般のものと同じコーナーに置いてあります。

ここまで来たのなら、そろそろ「猥褻表現」であっても取り締まらなくても良い気がします。

「性」そのものに対する社会通念が「秘め事」「隠すべきもの」であり、「公の場で語るべき話題ではない」とされていた時代では、守るべき社会秩序の一部として保護するのは当たり前であったのでしょう。しかし現在の日本社会は、むしろ”公然”と「性」について議論すべき状況になってきていると考えます。子供だけでなく大人にも「新しい性教育」が必要です。そしてこれからの状況によっては、「性欲を興奮又は刺激させる」ものが必要不可欠になる可能性があります。少子化対策も、晩婚化も、離婚増加も、性犯罪の抑止も、性感染症対策も、正面から「性」に向き合わない限り解決できないと思います。

また規制があり手に入れにくいものほど、裏で高額な取引対象になるものです。そういったものは犯罪組織の資金源になる事が多いとされています。当然、脱税行為などの温床になりやすいです。普通の商売と同じように管理はしても規制しないほうが良いのではないでしょうか。

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