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月の裏側

世界はキラキラおもちゃ箱・読者の広場。まずは規則をごらん下さい。

八岐大蛇

2017-09-11 05:13:52 | 動物図鑑


ヒュドラと同じように、大勢による暗愚の状態を表す。頭と尾が八つある大蛇。この怪物は若い女性を食い物にしていたが、一人の英雄の知によって撃退された。

頭が二つという状態は、知恵の倍増を表すことがあるが、三つ以上になるとそれはもう責任の放棄である。多数の頭はみな、他の頭に責任を押し付けられると思って好きなことをやり始める。

大勢の中にいると、馬鹿は安心して、自分の行動の起因を、他のやつに求めるのである。要するに、あいつがやっているから自分もやっているのだ、誰かがやっているから自分もやっていいのだ、だからどんなことをしてもいいのだという心理である。

みんながやっていればなんでもやっていいのだと思い込み、ひとりではとてもできないことをやることがある。大勢でやれば、びっくりするようなことさえ平気でできる。

八岐大蛇は美女を好んだ。それを手に入れるために結託し、人間の男が集団で馬鹿をやったという暴虐の象徴である。

多頭の怪物は、あまりにも凶暴になる。自分の力を錯覚して、狂うからである。








ケルベロス

2017-09-07 05:25:19 | 動物図鑑


頭が三つあるという犬の怪物。冥府の神ハデスに忠実な、地獄の番犬である。恐ろしい声で吠え、死者が冥府に降りるときは通すが、冥府から出ようとするときは必ずとらえ、肉のようにむさぼり食うという。

昔から犬はよく番犬として使われた。主人の家を守り、不審者の侵入を防ぐ役割である。その性格から、冥府の番犬という役割をも与えられたものであろう。黄泉路は一方通行だ。死者はもう戻って来てはならない。死はそれにふさわしい時期がくれば、完全に人間を支配し、それに逆らうことは許されない。

神の絶対支配の隠喩である。

人間は死に赴くとき、この世界には絶対にあらがうことのできない権力が存在することを、学ぶのである。

獰猛必殺のこの猛犬はしかし、何度か生きた人間に敗れたことがあるという。死に抗う人間は様々な方法でケルベロスをだまそうとしたのだ。だが、だれも、ケルベロスの主人である、死そのものには、かなわなかったという。






人魚

2017-09-03 05:23:47 | 動物図鑑


上半身が人間で、下半身は魚類。湖沼や海などの水域に棲み、陸上では生活しない。男性の人魚はマーマンといい、女性の人魚はマーメイドというが、人魚というと、女性の人魚を思い浮かべることが多い。

若い女性の姿をした人魚は悲恋の象徴である。人間と恋をすることもあるが、それがかなわぬままに悲劇に終わる。時には陸上の男を誘惑して水に誘い込み、溺死させることもある。

水は女性性によくなじむ性質をもつ。常に低きに流れる。すべての命に愛を与えて育てる。なくてはならないものだが、それゆえに馬鹿にされることがある。

古来より、人間は女性を侮蔑し、馬鹿にして殺した女性を水の中に捨ててきた。水の中にすむ人魚は、その女性の霊魂が帰って来た時の姿をも感じさせるのである。ゆえに人魚の恋は常に悲恋に終わるのだ。

水に流すということばがあるが、自分のやったことは水に流しても消えるわけではない。巡り巡って波のようにまた押し寄せてくる。男が馬鹿にして異界に葬った女は、いずれ、美しい人魚となって帰ってくる。そしてかつて愛した男に何かを訴えるのである。

しかしアンデルセンの童話では、人魚姫は泡になって消え、もう帰ってくることはない。

すべての恨みを捨て、何もいらないと言って人魚が消えていくとき、男は永遠に取り残される。そして人魚の夢ばかり追いかけるようになるのである。






シマウマ

2017-08-30 05:52:07 | 動物図鑑


ウマとは言うが、系統的にはロバに近いという。しかし人には慣れにくく、家畜化に成功した例はない。

交錯の象徴。シマウマの模様は、黒地に白なのか、または白地に黒なのかということはよく言われるところである。だが実際はどうでもいい。白も黒もどちらも等分にまとっているところにシマウマという存在が表現できる何かがある。

背景が闇であれば白が浮き立つ。逆に明るければ黒が浮き立つ。どちらにいても奇妙な存在だ。闇も光もまとうている。蝙蝠のように、どちらに属することもできるが、どちらにも属することはできないという風にもとれる。

シマウマを見ていると、時にシマウマが見えなくなる。あきらかに、白も黒も等分にまとっているということが、どちらの世界にも存在できないという、何者かを感じさせるのである。

彼らはウマやロバに似ているが、ウマやロバほど人間に心は開かない。十分にかわいらしい形をしているが、明らかに何かが違うのである。

この世界には、絶対にあけてはならない世界への扉があることを、彼らはにおわせるのだ。







コウモリ

2017-08-26 05:09:41 | 動物図鑑


獣でありながら鳥のように空を飛ぶ動物。天鼠(てんそ)ともいう。

しかしその姿は鳥のようにすがすがしくはない。

体は黒っぽく、顔もあまり美しいとは言えない。骨と皮膜で形作られた翼はかなり奇怪な形をしている。

超音波という普通は聞こえない不思議な声を発して行動する。

人や獣の血を吸うものもいる。

夜行性であり、昼間は洞窟のような暗いところで、天井に足を引っかけてさかさまにぶら下がって眠る。

人が悪魔というものを思い描くとき、よくこの動物をモデルにするのは、彼らのこういう習性による。

しかしコウモリの霊魂は罪を犯しているわけではない。彼らは神の定めた生命に従って生きているだけである。人間の思いなどわからない。

ただ人間は、彼らの存在によって、神に逆らい、光を避けて生きるものの姿を想像することができるのである。

それがコウモリの使命なのである。






キメラ

2017-08-22 05:54:26 | 動物図鑑


頭は獅子、体は山羊、尾は毒蛇という怪物。口から炎を吐き、人間を苦しめていたが、ペガサスに乗った英雄ベレロフォンに滅ぼされた。

合成獣の代名詞でもある。神の創造の法則を乱す、不正な創造を予感させる。

人間はその科学力で、遺伝子を操作することすらもできるようになった。シャーレや試験管の中で生殖細胞を操り、ある程度受胎を操作することもできるようになった。

クローンという肉体を創造できる可能性も見た。

その技術の行く先には、キメラのようなまがまがしいものを生み出し、かつてない暴虐の獣をこの世界にもたらす可能性もあるのである。

霊魂を無視した肉体の創造は、想像をはるかに超えた歪んだ未来をもたらす。人間はこの伝説の獣に、タブーの壁を感じねばならない。

肉体創造の技術よりも先に、霊魂の進化の道を学ばねばならない。







2017-08-18 10:00:05 | 動物図鑑


人間の苛立ちを掻き立てる昆虫。

夏に、特有の翅音を立てて飛んでくる不快さはひときわである。

人間の肌に円筒状の口吻を刺し、血を吸う。吸われた後の皮膚は、蚊の唾液に反応してアレルギー反応を起こし、異様にかゆい。

ほんの少しとは言え血を奪われ、後に不快な症状を残していかれることに、人間は時に憤慨する。このほとんど15ミリ以下の小さな虫を駆逐するために、様々な製品を作る会社が繁栄していることに、彼らがどんなに人間を苦しめているかがわかる。

小さな虫だが、構造はすばらしく、神の表現としては実に巧みである。生き物の中ではほとんど最小限の機能をもたせ、実に巧妙にできている。

だが、人間の徳分の向上により、蚊の害は減少しつつある。彼らによる苦しみを味わわねばならないのは、霊魂に野生の色を残した人間のみである。向上した霊魂を持つ人間は、ほとんどこの昆虫に悩まされることはない。

その点で、人類の向上の一つの道しるべと言える存在である。ゴキブリの存在は、人類に罪の影があることを教えるが、カの存在は、人類に野生の影があることを教えるのである。







ゴキブリ

2017-08-14 05:42:30 | 動物図鑑


人類に最も嫌われている昆虫。

見るだけでぞっとする者もいるであろう。ゆえに画像は小さくした。

人間の住環境に棲みつき、時々姿を見せるだけで、人間の悲鳴を浴びる。それほど害があるわけではないのだが、とにかく不潔なのと不快なのとで、忌み嫌われている。油でぎとぎとした姿や、繁殖力が鋭く、一匹いれば百匹はいると言われていることがまた気色悪さを掻き立てる。

これを駆除する殺虫剤などを製造する企業も、よく繫栄している。ある意味、人類の敵と言える生物である。

しかし、傾向として、あまり心に暗部を抱えていない人間は、それほどこの虫を嫌わない。嫌うのは、過去に自分が嫌なことをしたことがある人間に多い。

自分の家の中に気色が悪い虫が棲んでいるということは、自分の記憶の中に、かつて自分がなしたことに関する、気色が悪い記憶が棲んでいるということに、投影されるのである。

ゆえにゴキブリは、人間の、忘れ去りたい罪の意識の象徴であるともいえる。







ミツバチ

2017-08-10 05:54:20 | 動物図鑑


社会性を持つ昆虫。蜂蜜などをとるために、人間に家畜化された。

その活動はほとんど神がやっていなさるが、すばらしいものである。彼らは分業し、支えあい、他者に施しをし、美しい巣を建築する。食べ物を加工したりもする。

まるで現在の人間の都市社会のようである。高度に発達した知性が存在しない限り、こういう表現はできない。

人間はミツバチから、社会の営み方を勉強することができる。

なお、ミツバチの社会は、民主制ではない。女王による、絶対王政である。それですべてがうまくいっている。






サイ

2017-08-06 06:09:06 | 動物図鑑


一本から数本の角を有する奇蹄目の大型動物。角のない個体もある。

鼻先に角を有し、特にインドサイはそれが一本しかなく、それの進む方向に歩くことから、自己存在の自主性、唯一性、独立性の隠喩として、釈尊に採用された。

硬い皮膚を持ち、大きな体に角を持つ姿は、重戦車のようだが、性質はおとなしい。

その角は、工芸用、漢方薬の原料として珍重されるため、密猟が横行している。

角からとれる薬は犀角と言われ、麻疹の解熱剤として効果があるとされるが、その薬効は疑問視されている。

自己存在の自主性の表現として、独自の存在感を持つその動物が、たいした薬効もない薬の材料として乱獲され、滅びることがあれば、それは人類の精神に大きな影響を及ぼすと考えられる。