夕方、
ひぐらしの声に
誘われて
裏庭に出ると
からすうりが
つぼみを
ほどきはじめていました
ひぐらしと
からすうりは
暮れゆく情景と調和して
もの悲しく、
妖しいまでに
美しい
独特の
世界を紡ぎだす
ゆるゆると
白い糸をほどいて
一夜(ひとよ)限りの花を開き
ぼうっと白く
浮かびあがって
美しく
清らかに
そして妖しく
ゆらめく
からすうり
かなかなと
夕空の
夕空の
青を震わせて鳴く
ひぐらし
ひぐらし
はじめは一匹だったのが
いくつもの声が
追いかけて
重なって
遠く、近く、
また遠く
さざ波のように
夕闇に
波紋を広げていく
からすうりの
幽玄に
魅入られ
悲しいほど透きとおる
美しい
調べ
愁いを秘めた
音色で奏でられる
輪唱に
耳を傾け
心を寄せていると
この身も
心も
透きとおって
消えてしまいそうになる
淡く
儚く
暮れていく光のなかで
波のように
揺らぐ
からすうりの花と
ひぐらしの声
夜が
降りてくる
澄んだ美しい闇が
いざなう
神隠しにあいそうな
仄暗き
夏の夕暮れです
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