土星の衛星に生命の可能性ってどういうこと?
THE PAGE 3月31日(火)7時0分配信
一昔前までは、地球以外の星に生命が存在するかどうかが議論になっていましたが、いまでは一般の人でも「微生物くらいいるんじゃないの?」という認識に変わりつつあります。いるかいないかではなく、どこにどういう形で存在するかが問題になっているのです。そんななか、土星の衛星「エンケラドゥス」に生命が存在する可能性が提起されました。これにはどういう意義があるのでしょうか?
エンケラドゥスは直径500キロメートルの小さな、土星の衛星です。この衛星を観測していたのがNASAとESA(欧州宇宙機関)が打ち上げた土星探査機「カッシーニ」です。エンケラドゥスは、厚さ約40キロメートルの氷に閉ざされた星と考えられていましたが、地表の氷の割れ目から海水が間欠泉のように噴き出している「プリューム」が見つかりました。さらに、カッシーニが搭載している測定器とナノシリカ粒子が何度も衝突、検出していることから、海水中にこの物質が含まれていることが分かっていました。
このナノシリカ粒子に注目したのが、東京大学の関根康人准教授らのグループです。関根准教授らの研究のポイントは3つあります。
(1)海水にナノシリカ粒子が含まれていること
(2)ナノシリカ粒子が生成されるためには、地球の海底熱水噴出孔があるはずだということ
(3)原始的な微生物を育む環境が存在しうることを初めて実証したということ
ナノシリカ粒子は地球上ではありふれた物質です。しかし、宇宙ではそうではありません。シリカは、岩石の成分が熱水に溶け、その熱水が急冷することで生まれるからです。このため、シリカがあるということは、熱水と岩石が反応している証拠となりうるのです。
海底熱水噴出孔というのは、地球の海底深くにある、地熱によって熱せられた水が噴出する穴ことです。その穴の周囲にエビや貝が集まっているのを、たまにテレビのニュースなどで目にしますね。これは生命が利用できるエネルギーであり、生命が誕生した場所として有力候補になっています。
関根准教授らは、どうやったらエンケラドゥスと同じシリカ粒子が生まれるかを実験で証明することにしました。この実験の結果、ナノシリカ粒子が生成する環境は、90℃以上の熱水が必要で、熱水のpHは8~10のアルカリ性であることが分かりました。
このことは、地球の海底熱水噴出孔と同じような環境が、エンケラドゥスのあらゆる場所に存在していることを示唆しています。このため「地球以外で生命を育みうる環境が現存することが実証されたのはエンセラダスが初めて」と関根准教授らは意義を強調しています。エンケラドゥスだけではなく、木星の衛星「ガニメデ」でも塩水の海水が存在していると考えられているため、太陽系のなかだけでも、生命が存在する星は地球だけでない可能性が出てきたというわけなのです。
最終更新:3月31日(火)14時17分