さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

シロバナサクラタデ

2012-10-12 10:34:56 | 花草木


透き通るような白さ、わずかに赤みが差して、小さな花が遠慮がちにそっと開いている。中からぴょんとカタツムリの目か何かのように雌しべがかわいらしく飛び出している。



細長い葉や赤く膨らだ節など、一目でタデだと判る。秋にはタデの仲間がいろいろ咲くがほとんど赤い花だ。白い花といえばまずサクラタデ、タデの中では最大級の、と言ってもせいぜい8mmほどの桜色の花を優雅に咲かせる。それと比べるとこちらは一回りは小ぶり、色もほとんど白、タデらしくひなびた感じだ。これはシロバナサクラタデという種類だった。名前からすると単なる色違いかと思ってしまうが、実際は独立した別の種だ。



花びらに見えるのは実際は萼で、タデ科には花弁はない。進化の上で萼片から花弁が分化する以前の古い段階だそうだ。それでもこんなにきれいならもう十分ではないかという気もする。



三つに分かれた雌しべが長く伸びている。図鑑によるとこれは雌花で、別に雄株があってそちらの花では雌しべが短いのだそうだ。ところがネットで調べると、これらは雌花雄花でなく異花柱花なのだということだ。つまり同家受粉を避けるために雌しべ雄しべの長さを変えてあって、どちらが長いかで二つの型があり、違う型の間でしか交配しないようになっているというわけだ。実際この花でも8本の雄しべはしっかり花粉を出しているから両性花のようだし、実験するとこの花だけでも一応種子はできるのだそうだ。それは雌しべが短い型でも同様とのことだ。そうした事実が明らかになっても権威ある図鑑が改まらないのは学者のいい加減さということだろうか。ところで雌しべの短い花も見たいと思って探したがこの周辺では見当たらなかった。地下茎で栄養繁殖するとのことだから、ここではすべて一つの株から広がったのかもしれない。



シロバナと言っても蕾の時はかなり赤い。ほんのりした赤みが濃かったり薄かったりして、そんなほのぼのとした色合いはいとおしいと思うくらいだ。



サクラタデとシロバナサクラタデの違いは花茎の枝別れの多少で区別できるという。サクラタデはあまり枝別れしないので見た目もすっきりしている。シロバナの方は枝別れが多く、草丈が1mほどにもなるといくつもの花穂がばらばらの方向を向いたりねじれたりしていていささか見た目が悪い。またサクラタデは今ではめったに見かけないが、こちらは日本全土に普通種だそうだ。湿地に生えるので近付けないことも多く、よく見るとこんなに魅力的だったとは今まで知らなかった。

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