銀座平野屋には普段お客様の目にはふれないけれど、
素敵なものが数々ございます。
それは江戸からの粋を伝えるものであったり、
先人の技や美を伝えるものであったり様々です。
その中で銀座平野屋には、先人の技が光る逸品がございます。
「帯留 扇面秋草(せんめんあきくさ)」
材質:銀の彫金 ※幕末から明治にかけて制作されたと思われる。
扇面に秋草を彫りだして彩色したもの。
帯留は、元々「帯が崩れないように固定する紐」という意味でした。
最近では結び目を後ろに回した帯締めの前につける飾りものを「帯留」として区別することが多いです。
(帯留をつける時は、「三分紐(さんぶひも)」という細めの帯締めを使うこともよくあります。)
飾りものという意味での帯留が登場したのは幕末頃からで、
刀の飾りである刀装具(とうそうぐ)など
男性用の精巧な細工物を女性の帯に飾ったのがはじまりとされています。
刀装具『武者』材質:銀に金の彫金。払子をかまえた武者の動きが見事です。
刀装具『蜂』 渡金(ときん:金メッキのこと)製?。細部に渡ってリアルな蜂です。
刀装具『秋草』小菊と秋の葉を結ぶ紐に金を使用しています。
たった数ミリの小菊がかわいい!
明治になって廃刀令によって失職した彫金師達が装飾品を作るようになり、
軽妙で緻密な細工の帯留も多く作られました。
彫金師の技や美的センスが小さな帯留に光っています。
それはさながら小さな美術館のようではないでしょうか。
帯留「花筏」材質:銀に金。小舟(筏)の立体感や金銀の花々の精巧な作りが見事です。
帯留「仙人」材質:銀。金の彩色の入った目の眼光が鋭い!
立体感ある彫りの素晴らしさがわかると思います。
帯留「相撲」材質:銀。
立体的に人物を掘り出すことで、わずか4センチの中に
相撲の力強い勝負の躍動感が表現されています。
帯留「流水」材質:銀
筆で描いたような絵画的な表現が特徴の片切彫り(かたぎりぼり)で
流水や飛び散る水を表現しています。繊細な仕事です。
江戸の金工の流れをくむ美術的な帯留めもあり、実際に帯留めとしても使用できます。
帯留「翁(おきな)」 材質:銀の彫金 ※幕末から明治にかけて制作されたと思われる。 (写真の撮り方で少々色が暗めになってしまいました)
翁(おきな)は、年取った男、老人を親しみ敬って呼ぶ語。長寿の証
帯留「俵に鼠」 材質 銀・金・真珠 ※幕末から明治にかけて制作されたと思われる。
子孫繁栄、冨の象徴として縁起のいい動物で、装飾品にも多く使われたモチーフです。
帯留「つくし」 材質 四分一 +金(先端部分)※幕末から明治にかけて制作されたと思われる。
※四分一(しぶいち)=銀と銅の合金。銀の比率が四分の一であることから名付けられた。
煮色仕上げで銀灰色を示すことから朧銀(ろうぎん・おぼろぎん)とも呼ばれます。
さらに宝石や蒔絵など贅沢な素材を使用したものも作られるようになり
帯留は和装を愛する人々の間で広まっていきました。
現在は、アクリルや七宝、ガラスなど様々な素材が用いられています。
また、帯留を別の小物に活かし、小粋なアクセサリーとしても使用されています。
銀座平野屋のお客様でも、帯留をループタイにして愛用されている方もいらっしゃいますよ。
銀座平野屋では、目利きとして多くの帯留を収集した先代主人から貴重な帯留を受け継ぎ、
職人の素晴らしい技術を見ることができます。
そして現在もなお、職人の手によって新たな作品が生み出されています。
本当に小さな美術館ですね。
帯留は奥深いものですので、また機会がありましたら・・・。
参考文献「すぐわかる きものの美 髪飾りからはきものまで」
監修 道明美保子 東京美術
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9月19日より川西阪急にて開催しておりました「大江戸工芸展」は
連日盛況のうち、昨日無事に終了いたしました。
まことに有難うございました。
そして本日9月26日(水)~10月2日(火)久留米岩田屋にて
「大江戸のれん市」に出店いたします。
場所は本館9階催事場です。
皆様のお越しをお待ち申し上げます
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