銀座平野屋女将日記

銀座平野屋210年のあゆみと老舗女将の嫁日記

粋の総合芸術ーたばこ入れ(その3)-

2019-05-13 | 日記

 

銀座平野屋には普段お客様の目にはふれないけれど、素敵なものが数々ございます。

それは江戸からの粋を伝える物であったり、先人の技や美を伝えるものであったり様々です。

その中で銀座平野屋には、先人の技が光る逸品もございます。

  

 

(その1)(その2)に続き、 たばこ入れの中から「利休形たばこ入れ」のご紹介です。

 

 まずは1つ目。

 

『格子伍呂地(こうしごろじ) 利休形たばこ入れ』
(上)叺(かます)11.5×7cm
(下)きせる筒20×2.7cm
 
 
赤と白のチェック柄(格子)が目を引く生地です。
伍呂(ごろ)』と呼ばれる生地で、
近世イギリスやオランダから輸入された毛織物です。
独特の乾いた手触りで、地厚な印象です。
主に夏用の陣羽織や火事羽織、合羽などに使用されたようです。
 
 
周囲を革で縁取っているので、細部まで気を配って作成されたことがわかります。
 
 
 
きせる筒の入れ口も革で縁どられているんです。





叺のかぶせ(蓋部分)には、
熨斗(のし)結びの形の前金具がついています。(幅2.3cm)
 
 
 
 
写真から生地のゴソっとした感じがわかるかと思います。
 
そして、かぶせ部分とかぶせ下部分に、スナップ状の金具が見られます。
こはぜではありません。
かぶせ下側の円形の金具を「つく」
かぶせ側の細長い金具を「裏座」と呼びます。
 
 
 
この二つの部品、気持ちがいいほどぴったりと合います。
スナップボタンなどない時代に、
ぴったり合わせる金具を作るのは、
すごいなあといつも思ってしまいます。
こんなに小さな金具にも職人の技が光っているんです。
 
 
 

 

 

2つ目です。 

『絹地花文卍崩し 利休形たばこ入れ』
(上)叺(かます)12.5×6.8cm
(下)きせる筒20×2.5cm

 

ご紹介した利休形たばこ入れの中で最もシンプルなものです。

花模様に青い卍崩し柄の絹で作られました。

 

中の様子。黒い絹で裏地をつけてあります。

金属製のこはぜと、こはぜ掛けが見られます。

実にシンプル。

余計な飾りも、豪奢な生地もない。

ありふれた生地を使い、シンプルに作られたたばこ入れ。

「千利休」は侘び茶を大成させた茶人です。

余計なものを省き、ただ茶を点て、もてなすことに心血を注ぎました。

このたばこ入れが「利休形」本来の姿かもしれませんね。

 

 

 

利休形以外のたばこ入れについても、この回で少し触れたかったのですが

ショックが大きいことがあったため、本日はここまでにさせて下さい。

  

なお、利休形たばこ入れ」あと一回お付き合い下さい。

 
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粋の総合芸術ーたばこ入れ(その2)ー ✳︎5/13再編集

2019-05-13 | 日記

 

✳︎なんと!

この「たばこ入れ(その2)」記事を他の編集中に一部を残して

削除してしまいました!(大号泣)

残っていた部分はそのままですが、記憶を頼りに再度記事を書きました。

あやふや記憶なので、全く同じには書けませんでしたー(泣)

文章に勢いがない。。。

相当頑張って書いた記事だったので、ショックも大きいです(泣)

最初見た時と内容が違うーと思われた方がいらっしゃると思いますが、

ご容赦くださいませ。✳︎5/13記



 

銀座平野屋には普段お客様の目にはふれないけれど、素敵なものが数々ございます。

それは江戸からの粋を伝える物であったり、先人の技や美を伝えるものであったり様々です。

その中で銀座平野屋には、先人の技が光る逸品もございます。

  

 

(その1)に続き、 たばこ入れの中から「利休形たばこ入れ」のご紹介です。

 

 まずは1つ目。

 

『絞り染め地 利休形たばこ入れ』
(上)叺(かます)12.5×6.8cm
(下)きせる筒19.6×2.8cm
 
 
浴衣の三尺帯を思わせるような絞り染めで作られたたばこ入れです。
娘さんの着物で作られたのかなと思わず想像してしまうような
かわいらしい印象の生地です。
 
 
こはぜ部分は金属製です。
赤い紐状のこはぜ掛けに引っ掛けて使います。
 
たばこ入れといっても高級なものばかりではなく、
身近な生地でも作られたという良い例ですね。
 

 

 

2つ目です。 

『蜥蜴革地 利休形たばこ入れ』
(上)叺(かます)12.7×6.5cm
(下)きせる筒21×2.7cm

 

トカゲの革製のたばこ入れです。

現在なら当たり前に使っていますが、当時は珍しいものだったのでしょう。

 

中の様子。絹で裏地をつけてあります。

金属製のこはぜと、こはぜ掛けが見られます。

 

内部を開くとこのようになっています。

ここに刻みたばこなどを入れます。

しっかりとした作りなので、今でも使えそうです。

 

 

参考までに。叺の各部分の名称はこのようになっています。

こはぜの材質も種類が色々あるようで、

主に金属製(金、銀、銅、鉄、四分一、真鍮などの合金)や

鼈甲、象牙、木、海松など使われています。

この画像のような半月型(爪形)が大半ですが、

中には彫刻など装飾を施したものもあるようです。

 

 

 

ところでたばこ入れは、きせるを使っていた時代のものと思われると思いますが、

まだ現在でも使われています。

  

先日3/18に、浅草の浅草寺の「示現会(じげんえ)」の“堂下げ”撮った一コマです。

 

✳︎堂下げ(どうさげ)→浅草寺の示現会の前日に、

三社祭で有名な浅草神社から神輿3基が浅草寺本堂に渡って

本堂内部で一晩過ごす(堂上げ)。

3/18の示現会の朝に、本堂より神輿が担ぎ出されて浅草神社に戻る。

これを「堂下げ」という。

 

赤マル部分をご覧ください。

神輿渡御の執行役員の方の半纏の帯に

扇子と一緒にたばこ入れが下がっています。

 

赤マルのアップです。

正にたばこ入れです!

ここにたばこを入れて使います。

ひょっとしたら小銭やガム程度なら入るかもしれません。

同じようなものは、お祭り用品の店で購入できるようです。

この方以外にがま口タイプのたばこ入れを下げている方が数名いらっしゃいました。

一服する為の道具にこだわっている、正に「粋」の世界!

それが現代にも生きているんですね。

 

 

しかしなぜ、半纏にこういったたばこ入れを使うのか。

神輿担ぎの談によると

半纏の帯に小物をはさむと、帯が緩んできた時に落として危険!

半纏の袂に小物を入れると、神輿を担ぐ時や神輿の担ぎ棒を抑える時に

他の人に当たって危険!

だそうです。

 

つまり、実用と粋を兼ね備えた、

持ち手の愛着を感じさせるものが現代のたばこ入れなんですね。

 

 

 

 昔のものが、時代の変化に合わせて形を変化させながらでも

使われ続けているのはステキなことですね。

 (でもたばこは健康に注意して吸いましょう!)

 

まだ続きます。

 
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