
これは、グンゼ産業(現GSIクレオス)が、1980年代の終わりから90年代にかけて販売していた『HIGH-TECH MODEL(ハイテックモデル)・KAWASAKI 500 MACHⅢ』です。グンゼ産業とは、あの衣料・繊維メーカーのグンゼの系列会社で、GSIクレオスと社名を変更した現在でも、グンゼ・ホビー部門としてプラモデル用の塗料、フィギュア、模型の販売をおこなっています。HIGH-TECH MODEL(ハイテックモデル)とは、“より精密で、よりリアルな模型をめざして、ハイテックを駆使した部品で構成した新しい発想による高級模型キット”(箱書きより引用)、ということのようです。具体的には、プラスチック以外に、ホワイトメタル、ステンレス・アルミロッド、ゴム、ビニル製のパイプ、精密なエッチングなど、様々な部品が使われています。そのため作成難易度も上がり、箱にわざわざ上級者向と記載されていたり、値段の方も(当時の価格で)5,000円~とまさに高級模型キットでした。特筆すべきはそのラインナップで、フィアット500、アバルト695SS、アバルト アセットコルサ、フェラーリ 250GTO、アルファロメオ GTA 1300 ジュニア、ロータスエラン、トライアンフ TR2、TR3、オースチンヒーレー スプライト MK-1(カニ目)、フォルクス ワーゲン、メッサーシュミット、BMW イセッタ、コブラ・デイトナクーペ (以上車)、メグロ500、ホンダ RC110、CR110、ヤマハ YDS1、カワサキ650 W1S、BMW R69S、BSA GOLDSTAR (以上バイクで、これらは抜粋)と、マニアックというか、エンスー向けというか、高いお金を出してでも作ってみたいと思わせるラインナップでした。模型好きや、旧車好きの人には有名なシリーズで、当時は模型店でよく見かけることができました。これは、その中のKAWASAKI 500 MACHⅢのモデルということになります。

このプラモ、写真はなんだか箱が煤けて見えるかと思いますが、これはリサイクルショップで最近見つけたものではなく、当時購入して現在までもっていた当時ものです。私は、普通のプラモでさえあまり綺麗には作れないのですが、90年代当時中型のバイクに乗っていましたので、マッハの精密模型がすごくかっこ良く思えて、思わず衝動買いをしてしまいました。『KAWASAKI 500 MACHⅢ』とは、川崎重工が1969年に発売したオートバイで、500cc2ストローク3気筒のエンジンを持つモデルです。過激なエンジン特性と、前輪荷重のバランスの悪さ、あまり効かないブレーキなどから“じゃじゃ馬マッハ”などと呼ばれ、乗り手を選ぶバイクとして知られていました。もちろんリアルタイムの世代ではないのですが、漫画や雑誌に登場して不用意にスロットルを開けると3速までウイリーするなど、伝説のバイクいった扱いで紹介されてました。それで、昔から変わったものや、精密玩具が好きでしたので、プラモの腕も顧みずの購入となりました。上の写真は、箱を開けたところですが、普通のプラモデルとは異なり、スチール製の棒やピン、エッチングなどの金属部品が目に付きます。2枚の説明書が付いていますが、まず必要工具(ラジオペンチ、ヤスリ、ワイヤーブラシ、水ペーパー、ドリル、ピンバイス、ニッパー、金切バサミなど)の説明から始まっています。

プラの部品は、これだけしかありません。メッキは塗装で表現することが難しいため、フェンダーなどのメッキパーツ、塗装やデカールを貼る必要のあるタンクや、サイドカバーなどがプラ部品になります。ライトやウインカー用の透明パーツも、クリアーパーツとして準備されています。メッキパーツで抜けている中央の部分は、ホイールのリム部品でした。

タイヤ、シート、ハンドルのグリップなどは、グニャグニャの軟質のプラ(ゴム?)製です。右側は、タンクとサイドカバーに貼るデカール。黒マッハ用と、赤・白のマッハ用の2種。

メタルロッド、アルミロッド、ピン、マイクロリベット、スプリング、パイプ、エッチングなど。要は、スポークなど金属で構成されている部品は実際にワイヤーを張り、ホース類などは実際にビニルパイプで、サスペンションは実際に小さなスプリングで再現するということですね。凄いのは緻密なエッチングで、チェーン、スプロケット、メーターの計器盤などが再現されています。

ホイールにスポークワイヤーを張ったところ。内側はエッチングパーツ、外側のリムはメッキのプラパーツで再現されています。私は、ここで挫折(いきなりかよ)。当時、友達が作ってくれるとのことで預けたのですが、彼もスポークを張り終えたところで挫折。以後、20年近くそのままとなっています。モデラーの方のサイトを見ますと、自分でプラ製のスポーク部分を切り落とし、スチールワイヤーを張るテクニックを見ることができますが、これはメーカー自らが初めからそこまで準備してくれているんですね。ちなみに、これワイヤーも長さを計って自分で一本ずつ切る必要があります。

箱には、番号が1、2と振ってあり、メタルパーツが袋に小分けされて入っています。

ホワイトメタル製のフレーム、ハンドル、マフラー。マフラーなどは、本物と同じように金属磨きで磨いて光沢を出すようになっています。またメタル部品は、ただ組めばよいわけではなく、微妙な修正をしながら合わせる必要があります。

5~6ミリ程度のキャブレター。この辺は、圧巻ですね。

エンジン部分。金属の地肌、質感など、メタルパーツが一番生きる部分だと思います。

エンジンカバー。ちゃんと極小のkawasakiロゴが。

シリンダー。3気筒エンジンのため3個。空冷のためフィンが刻まれてます。1.5~2センチ程度の部品。

フロントフォーク、スイングアーム、ペダル類などの細かな部品。このような細かな部品が小さな袋に小分けされて、メタルパーツで36個準備されています。

カラーの完成写真が付いています。これは、おまけではなく実際に完成品を見ながら組み立てるためのもの。金属棒を自分で曲げてエキパイや、シートバーを作るなど(説明書には寸法しか書かれてない)、素材を自分で加工する必要がありますので、実際に見ないと説明書だけでは分かり難かったりします。

限定生産でマニアむけに極少量が作られるものならば他にもあるかと思いますが、大手が量産品として出した製品と思えないマニアックさですね。部品が全てランナーに繋がっている普通のプラモと比べても、バラバラの全く異なる素材部品の集まりですから、パーツのチェック・管理だけでも大変かと思います。(検品証が入っており、検品した人の印鑑が押されている)。惜しむらくは、このすばらしく贅沢なモデルが絶版品でもう作られていないということでしょう。(マッハとW1は、近年再販されたようです)。このような贅沢なものが作られてたというのは、やっぱり時代がバブル期だったからという事なのかも知れませんね。