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玄妙な日本文化を感じる旅

2011-05-05 | 身辺雑記帳
この著名な日本庭園を訪れるのは二度目。
大池越しに京都より移築されたという三重ノ塔に
先ず目が留まる。計算され尽くした造園設計だ。
最初の訪問はもう十年近くも前のことになる。
あの時もやはりゴールデンウィークで、ネットで
知り合ったドイツ系アメリカ人を帯同していた。
その前日には府中にある三島由紀夫の墓所へ同行。
彼が墓前で巨体を不器用に折り畳んで拝礼しつつ
掌を合わせる様子を可笑しげに眺めたものだ。
外国人観光客の大半がそうであるように彼もまた
僅か数日の滞在では、この国の文化について謬見
を抱いたまま帰国の途に就くことになるだろう、
と私は朧げに予期していた。
それにも関わらず彼を案内する気になったのは、
外国人たちが鷹揚な一知半解にもとづきながらも
日本の文物から新奇な感銘を受ける瞬間の反応を
観察するのが楽しみだから。それは同時に日本人
自身が感じなくなっている感銘でもある。つまり
私は一米国人の眼を通した日本のユニークな鏡像
を幾許なりとも捉えられると踏んだのだった。

昨日は奈良市内でペルシャ人のような容貌の女性
に道を尋ねられた。“オビドーケ”に行きたいが、
どうすれば良いのか? たどたどしい英語で彼女
は伝えようとする。“オビドーケ”と“帯解”の
二語が私の中で繋がる迄には須臾の間を要した。
瞬きひとつせず私の道案内を聴く彼女の鳶色の瞳
に見入っていると、自分が西トルキスタン辺りの
街中に居て、遥かな東方の都邑の位置を異邦人に
説いているような奇妙な錯覚に暫し陥った。
そういえば、帯解も三島由紀夫に多少関係がある。
『天人五衰』という作品に描かれる月修寺なる寺
が帯解から程近い位置にあるのだ。たしか実名は
円照寺だったように思う。近々訪れたいものだ。



〔写真〕いずれも横浜・三渓園にて


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