『日本書紀』応神天皇十四年の条には、
「弓月君が百済から百二十県の人を率いて帰化し
秦氏の基となった」との記述が見られる。
列島への秦氏の渡来は、思うに、応神の王権纂奪
に伴う対外政策転換(神功の外征が誘因となった、
もしくは応神自身もその受益者の一人であった)
の一環として果敢に推進され大規模化されたので
あろうが、実はその先慫となったのが神功皇后の
母方の祖たる天日矛の渡来であった、というのが . . . 本文を読む
広隆寺の「弥勒菩薩半跏思惟像」といえば、
わが国の記念すべき国宝第一号だ。
哲学者カール・ヤスパースの言葉を借りれば、
“地上における全ての時間的なるものの束縛を
越えて達し得た、人間存在の最も清浄な、
最も円満な、最も永遠の姿の象徴”であり
人類最高レベルの芸術作品と称するに足る。
広隆寺を氏寺とするのが、渡来系氏族の秦氏。
巧緻極まる技量と卓越した審美眼を具えた仏師
や絵師を、その一門は数多く . . . 本文を読む
この趣味を始めて約三十年が経過した。
未だ有る筈のものが突如消えていたり、
疾うに消えた筈のものが残っていたり、
欣喜雀躍するかと思えば懊悩させられ、
悲嘆に陥るかと思えば胸をときめかせ・・・
感情の襞を随分と深めてもらったこの玩具には、
木の齎す深い愉悦が在ることを道半ばで知った。
ただ嵌めるだけ、而してヴィスを捩じ込むだけで
直線と曲線、樹脂と金属の混交たる冷たい物体に
視覚的・触覚的な温もり . . . 本文を読む
喫驚したいといふのが僕の願なんです。
不思議なる宇宙を驚きたいといふ願です。
・・・国木田独歩の作品の登場人物の科白だ。
“驚き”について一考してみたい。
突然、琵琶湖で化石魚が生け捕りにされれば、
学者の面々をはじめ一様に驚嘆するはず。
しかし、その椿事も月日が経つにつれ、
単なる生物学上のトピックスのひとつとして
その他大勢のニュース群に埋もれてゆくだろう。
富士の山が突如として大噴火を起こ . . . 本文を読む