SUN PATIO

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異能の記憶技師たち

2009-03-22 | 神話、民俗学
上古以前、文字が普及していない日本列島に 突出した記憶能力をもつ人々がいた。 “語り部”と呼ばれる異能集団のことである。 各氏族が保有する長大な旧辞伝承を記憶して、 必要な時・場所で物語るのが彼らの仕事。 稗田阿礼が『古事記』を口述して以降 すなわち漢字が本格的に導入される頃から この古代的職業は急速に衰微していく。 これは昭和初期にトーキーの登場によって 活動弁士(サイレント映画の解説者)が 仕 . . . 本文を読む

昧爽の散歩

2009-03-15 | 身辺雑記帳
休日の朝には珍しく払暁に目が覚めた。 そのまま暫くまどろみのなかに漂って 五官の扉のみを開け放っていると、 日輪の発する熱の仄かな反映が感じられる。 心を虚ろにしたまま瞼を薄く開け、 次第に明るみを増してゆく窓を眺め遣った。 窓外の樹木の枝葉を透過した光が 幾枝にも分光して射し入る様が視える。 夢ともうつつともつかぬ境で 「もっとも秘されるべき理は 日常茶飯の有り触れたものの内に潜む」 という密教 . . . 本文を読む

オルゴールと銃

2009-03-08 | トイガン耽美系
今し方うとうとしていて奇妙な白昼夢を見た。 かそけきオルゴールの音が何処からか聴こえる。 四方を見廻して所在を突き止めようと試みた。 どうやら室内に飾ってある銃が音の主らしい。 銃をそっと耳朶に押し当てる。冷えた鉄の感触。 音を発する源はグリップの内側に在るようだ。 恐る恐る弾倉を引き抜いていく。すると・・・ 金銀の歯車が大小無数にひしめき合いながら 緩々と回転運動する鬱然たる機構が出現した。 大 . . . 本文を読む

春は遠からじ

2009-03-01 | 身辺雑記帳
古代ローマの暦に直すと、今日が年の始めらしい。 わが国では旧暦・新暦ともに三月を弥生と呼ぶ。 じつは弥生には幾つも別名が有って、 花月、嘉月、花見月、夢見月、桜月、暮春などが 古来使われてきた。かくも多様な呼び名を見るに、 旧時代の人々の時間感覚というのは、 現代人に比して遥かに鋭敏だったようだ。 巷間で聞かれるように、この先は一雨降る毎に 冬は遠のき春が近づくのであろうか。 街中の衣類を商う所で . . . 本文を読む