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旦那さ~ん♪ お燗ですよ! - 根津雙柿庵のブログ-

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蕎麦汁小考2…蕎麦汁概論

2012年07月09日 | 蕎麦

はじめに

蕎麦汁は、蕎麦屋の旗印だと思います。

その蕎麦屋の姿勢と店主の考えを、良くも悪くも表すのではないでしょうか。

以前は、一年を通し、蕎麦の状態を一定のレベルに保つ事はなかなかに難しく、特に夏場は粉の質に苦労したそうです。

そうした時期には、汁は粉を補う意味もありました。

通年で一定の味と質を維持できる蕎麦汁は、その店の味を保つ為、今以上に重要な位置を占めていた事は想像に難くありません。

それ故、秘伝の味として、蕎麦汁だけは店主だけが、その材料、割合、製法を他の誰にも知らせない店も多くあったそうです。

現在でも多くの蕎麦屋に蕎麦汁を大切にする伝統は引き継がれ、多くの蕎麦屋が手間と経費をかけ、自分の店で鰹節を毎朝削り、出汁を取って蕎麦汁を取るという地道な作業をつづけています。

ここ近年は、手打ちや、自家製粉の店が増え、蕎麦汁の意味合いも変わってきました。

いい状態の蕎麦粉で打った蕎麦は、塩や水でも少量なら美味しく食べられるものです。

蕎麦汁の役割は、蕎麦に寄り添い、蕎麦本来の力を引き出し、更にはより美味しく食べる為の汁とい方向に向かう事となりました。更に塩分や糖分、自然素材等、人々の健康指向や、情報のオープン化といった社会的な影響もあります。勿論、営業的要素、つまりコストや価格、味の流行、地域や来客層の指向等も考慮に入れなければなりません。

まだ色々とありますが、だいたい上記の要素をふまえ、従来からの基本線はふまえつつ、現在の、そしてこれからの蕎麦汁の方向性は決まっていくと考えられます。

蕎麦汁の種類

蕎麦汁の種類は、大きく分けると、次の2っに分類できます。

◎冷たい(絡む)汁の系統…辛汁(つけ汁)

◎温かい汁(吸う)の系統…甘汁(かけ汁  ・種汁)

呼び名は、店により、また地域により異なります。

蕎麦汁の材料

汁の材料は、基本的には醤油と砂糖と味醂に出汁(江戸では鰹節のみ)といった単純な組み合わせで出来ています。 これも地域により、店によって割合は異なります。上記の基本材料

から何かを引いたり、また独自に何かを足したりして工夫して作られています。

次は、蕎麦汁についてもう少し具体的に、まず「かえし」について考えていきたいと思います。


蕎麦汁小考 1 …蕎麦汁序説

2011年10月26日 | 蕎麦

いったい蕎麦汁は、だいたいの人が醤油基調の同じ様な味の汁を思い浮かべるのではないでしょうか。 これは、温/冷にあまり係わりないと思います。

醤油基調以外の蕎麦汁といえば、ひと昔前まではカレー味のものでしょう。

最近は、塩やオリーブオイル、クリームとかトマト系の汁もあります。

しかし、現在あるどこの蕎麦屋でも、従来通りの醤油基調の汁が本筋という事に変わりはありません。

蕎麦汁は、大きく分けて2種類あります。冷たい蕎麦用の「つけ汁」と、温かい蕎麦用の「かけ汁、種汁」です。

それぞれ別の呼び方もあって、「つけ汁」は(辛汁)、「かけ汁」「種汁」は(甘汁)等と呼んだりもします。汁の呼び名は、これと決まっている訳ではなく、地域や店によって様々です。

しかし、基本的な材料は醤油と砂糖と味醂、それに出汁という点でほとんど共通しています。

関東のだいたいの蕎麦屋が、醤油に味醂と砂糖を合わせて「かえし」という汁をつくり、それを鰹出汁で割る手法をとっています。

今は「かえし」をスーパー等でも売っている事もあるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

この「かえし」も、蕎麦屋によって多少の材料や割合の違いがありますが、基本線は変わりません。

では、そうした蕎麦汁はいつ頃から作られる様になったのでしょうか?

おおまかにいうと、江戸府内の蕎麦屋に関して言えば、1600年代後半から文献上確認する事が出来ます。

一方蕎麦汁に目を移すと、この頃の料理本には(味噌)(大根卸ろし)(生醤油)等と書かれています。材料と江戸の消費拡大という条件が整った江戸時代後期になり、現在と同じ材料と製法の「蕎麦汁」を文献上に見受けられる様になります。    

つまり、蕎麦汁の形は江戸時代後期以降と考えられるのです。

蕎麦汁は、第二次大戦後材料と情報に大きい変化がありましたが、現代とに近い形になってからおおよそ百年以上、基本的なものは変わらずにきている様です。

これから少しずつ、資料にも当たり、蕎麦汁について考えていきたいと思っています。


手打ち蕎麦屋と腰痛の切っても切れない関係

2011年10月07日 | 蕎麦

蕎麦は〈コシ〉が肝心などと謂われますが、手打ち蕎麦屋の多くは、その〈コシ〉に悩まされていたりします。
ただし、〈コシ〉といっても腰痛の事ですが…

蕎麦屋は長時間の立ち仕事,加えて厨房の床は固く、足元が冷えます。決して腰に良い環境とは言えません。

そして蕎麦打ちが腰に打撃を与えていきます。
仕事となるとある程度の量を打ちます。蕎麦打ちは毎日の事ですから体調の良し悪しに係らず蕎麦を打たなければなりません。腰には少しずつ疲労が蓄積され、いったん腰を痛めるとなかなか回復しなくなります。結果として腰痛にずっと悩まされる事になるのです。

さらに自家製粉をすると玄蕎麦・石臼等重量物の上げ下ろしや運搬、また中腰の腰に負担がかかる無理な姿勢での製粉作業が通常業務の他に(腰に)加わります。
製粉作業は蕎麦の為に暖かい場所で扱う訳にいかないので、基本的に寒い(冷える)場所での仕事になります。蕎麦粉には良くても人間の腰にはキツイものがあります。

私の場合、開店時から石臼を手で碾いて粉を作っていたので、必要以上に腰を痛めたのだと思います。毎日少なくとも2時間は碾いていましたから。やがて腰痛は酷くなり、数年前には全く動けなくなった時がありました。
腰痛は仕事のみならず生活全般に支障をきすので、厄介な事この上ありません。

仕事をすればするほど腰痛になり、蕎麦を追求すればするほど腰痛になる現実があります。腰痛の為に残念ながら蕎麦屋を諦めざるを得なかった人も少なからずいます。好きでやっている蕎麦屋ですから思う様に仕事をしたい。しかし腰痛が起これば思うように動けない。蕎麦の腰を考える前に自分の腰を強くする事を考えるという、なんとも笑うに笑えない状況です。

蕎麦を追求しつつ腰痛と何とか折り合いをつけ、蕎麦屋を続けるにはどうしたら良いのか?

蕎麦を切るのが蕎麦屋なれど、腰の痛みは何故切れぬ~

そんなこんなで試行錯誤の日々が続きます。