蕎麦は〈コシ〉が肝心などと謂われますが、手打ち蕎麦屋の多くは、その〈コシ〉に悩まされていたりします。
ただし、〈コシ〉といっても腰痛の事ですが…
蕎麦屋は長時間の立ち仕事,加えて厨房の床は固く、足元が冷えます。決して腰に良い環境とは言えません。
そして蕎麦打ちが腰に打撃を与えていきます。
仕事となるとある程度の量を打ちます。蕎麦打ちは毎日の事ですから体調の良し悪しに係らず蕎麦を打たなければなりません。腰には少しずつ疲労が蓄積され、いったん腰を痛めるとなかなか回復しなくなります。結果として腰痛にずっと悩まされる事になるのです。
さらに自家製粉をすると玄蕎麦・石臼等重量物の上げ下ろしや運搬、また中腰の腰に負担がかかる無理な姿勢での製粉作業が通常業務の他に(腰に)加わります。
製粉作業は蕎麦の為に暖かい場所で扱う訳にいかないので、基本的に寒い(冷える)場所での仕事になります。蕎麦粉には良くても人間の腰にはキツイものがあります。
私の場合、開店時から石臼を手で碾いて粉を作っていたので、必要以上に腰を痛めたのだと思います。毎日少なくとも2時間は碾いていましたから。やがて腰痛は酷くなり、数年前には全く動けなくなった時がありました。
腰痛は仕事のみならず生活全般に支障をきすので、厄介な事この上ありません。
仕事をすればするほど腰痛になり、蕎麦を追求すればするほど腰痛になる現実があります。腰痛の為に残念ながら蕎麦屋を諦めざるを得なかった人も少なからずいます。好きでやっている蕎麦屋ですから思う様に仕事をしたい。しかし腰痛が起これば思うように動けない。蕎麦の腰を考える前に自分の腰を強くする事を考えるという、なんとも笑うに笑えない状況です。
蕎麦を追求しつつ腰痛と何とか折り合いをつけ、蕎麦屋を続けるにはどうしたら良いのか?
蕎麦を切るのが蕎麦屋なれど、腰の痛みは何故切れぬ~そんなこんなで試行錯誤の日々が続きます。