olatissimo

この島で生まれた息子はなんと中学生。ほぼ育児日記です。

『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』

2021-03-09 | 読書メモ
 
この本、「いかアサ」と略すそうです。
(序論にそう書いてある)

「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」
(通称「いか超」)
をパクっているとしか思えない!(笑)

と思いきや、実際には、
15世紀に出版されたアーサー王物語の章タイトルに
「いかにして誰々が何々したか」が多用されていて、
そのオマージュとなっているということです。

また、本文中の重要固有名詞は赤字で書かれていて
とても読みやすいのですが、
それは「ウィンチェスター写本」とやらを
想定したからだそうです。

随所にマニアのこだわりが詰まっているんですねぇ。


****


さて。


この本によると、
アーサー王は日本のサブカル界に
君臨しているそうです。


知らなかった。


「アーサリアン・ポップ」とか言うそうです。

絵本、小説、映画、アニメ、マンガ、
テレビドラマ、演劇舞台、ライトノベル、
ソーシャルゲーム、二次創作…など、
手広く発展しているそうです。


小説くらいしか知らなかったわ。

映画やテレビドラマなどは
まぁあるだろうと思っていたけれど、
日本というより
本家(イギリス)か分家(アメリカ)での話かな、と…

もちろん、
本家、分家、隣家(フランス)などでも
アーサー王物語は大変人気なのだそうですが、
この本が扱うのは日本の事情のみ。

小説、アニメ、マンガ、
演劇(宝塚)、ゲーム界において
アーサー王物語がいかに展開していったか
を追っています。

各章を別々の筆者が担当しているので、
内容的に多少の重複がみられますが、
この1冊で幅広い分野をざっと概観できるので、
アーサー王物語とはなんぞや?
の入り口に立っていて、
一体どの本を手に取れば良いのか
分からないでいる私にとっては、
非常にありがたい構成です。


小説は夏目漱石の『薤露行(かいろこう) 』
カズオ・イシグロの『忘れられた巨人』
大きく取り上げられていました。

難解な擬古体で書かれているという
夏目漱石に挑む気力はないので、
カズオ・イシグロを読んでみようかな、と。


また、児童文学の斉藤洋
マンガ『金色のマビノギオン』の山田南平
自らの創作について語っておられて、
非常に興味深かったです。


宝塚では
1968年の「トリスタンとイゾルデ」から
2017年の「キング・アーサー」まで
16回もアーサー王物語を題材にした作品を
上演しているそうです。
たしかに、宝塚との相性は良さそう。


アニメとゲームに関しては・・・
読もうとしたんですけどね、
どうにも興味が閉じてしまって
全然頭に入ってこなくて
あーこりゃダメだと断念。
すみません、ごっそり飛ばしました。

これら(特にゲーム)を入り口に
アーサー王の世界にハマる人も
多いらしいんですけどね…。


面白かったのが、
各章の間に挿入されている
『沈め!アーサー王物語の沼』
というコラムです。

アーサー王マニアである椿侘助さんが
アーサー王物語の魅力について、
推し騎士の萌えポイントについて
熱く語っておられます。
その熱量につられて
思わず引き込まれてしまいそうになる(笑)


巻末の一児資料集(抜粋文付き)、
用語解説、人物相関図、年表は
後々、ハマり出した時に役立つかと。

また、
最後の「執筆者たちの円卓」には、
錚々たる専門家である執筆者の方々の
「推し騎士(推し作品)」とその理由
書かれていて、お茶目(笑)
専門家だって、一ファンなんだよね~!


なんというか、
マニア(専門家)の方々の
ウキウキとした熱い思いが伝わってきて、
こちらまでウキウキ気分になれる本でした。


****


ひとつ、注意点を。

この本、3種の装丁で出版されているのですが
(アーサー版、ランスロット版、ガウェイン版)、
中身は同じです。

それが分からなくて、
図書館で予約する際
うっかり3冊注文するところだった!
(司書さんが、しばらく悩みながら調べて、
そのカラクリに気付いてくれた)

なにそれ、ややこしい~!
と司書さんと顔を見合わせて
笑ってしまったのですが、
きっとこれもマニアの心を鷲掴みにする
オプションなのでしょうね(笑)


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