olatissimo

この島で生まれた息子はなんと中学生。ほぼ育児日記です。

ジャッジされるということ

2021-03-15 | バレエ
音楽でもバレエでも
今まで息子が出場したコンクールでは、
「合格・不合格」、
上位入賞者の順位、
そして音楽の場合は講評が頂ける
(バレエは、評価は無く
お土産もらえるくらいだった・笑)
というのが定番でした。


ところが
今回初エントリーしたバレエコンクールは、
フィギュアスケートの大会ように
演技終了と同時に技術点と芸術点が
ボードに表示され、
さらに後日、詳細を記した
ジャッジシートが送られてくる
というスタイル。


容赦なく現実を突きつけられるわけね。

怖っ・・・


さて。
これが届いたジャッジシートです。
こういう世界を知らなかった私には
驚くことがいろいろ。


上記表の上には、
技術点と技術順位、芸術点と芸術順位、
総合点と総合順位が記されています。


おそらく
こういうジャッジシートが公表されない
他のコンクールでも
同様の基準で採点されているのだと思いますが、
こうもつまびらかにされると
圧倒されます。

まず思ったのは、
短時間の演技中に、これだけの項目を
鋭くチェックできる審査員って、すごい!
ということ。
男子の演技などほんの1分ですから。
さすが・・・



ジャッジの内容を見てみると
技術点は、内容の細かさに驚いたものの、
採点の基準が理解しやすく、納得できる。
実際、各審査員の採点のばらつきも
それほど大きくはありません。


しかし、問題は芸術点。


まず、項目内容に目が点です。


「容姿」

ルッキズムが問題となるこの時代、
こんなにも堂々と「容姿」と書かれていると、
いけないものを見てしまったような気分になる(笑)

とはいえ、まあ、
容姿が重要な基準にならざるを得ない分野は
あるよね。

でも、願わくば、その「基準」が
徐々に変わってきてほしい、とは思う。
あらゆる肌の色合いの、
身長や体つきなど
様々な個性のダンサーが受け入れられ、
活躍できるバレエ界であってほしい。
そういうバレエが見たい。
おそらく、アメリカを中心に
ヨーロッパでも
徐々に変わってきてはいるのだろうけれど。


さて、ジャッジシートに戻ると、
お次は「透明感」ときた。

分かるような、分からんような…
説明し難いこと
この上ない項目ですね。


表現力、音楽性、役の解釈などは
言葉としては馴染みのあるもので、
そりゃ当然評価されるべきものだと
納得できるのだけれど、
その基準となると、私のような素人にはさっぱり…



そして芸術点は、
各審査員による
評価のばらつきが大きいのも特徴でした。

というか、約一名、激辛の審査員がいたんです。
3名の審査員が「B+」でも、
一人だけ「D」をつける審査員が。

これは・・・
どう考えればいいのでしょう・・・

この方、他出場者に対しても辛口なのか、
息子のテイストが
好みに合わなかったのか・・・?


しかし、その激辛審査員、
「将来性」だけは
少し良い評価を入れています。
他審査員より良いわけではないけれど
悪くもない、みたいな。

今はダッメダメだけど、
この先、何とかすれば何とかなるかもよ?
ってことなんだろうか…


ようわからん。


まあいいや。


芸術を評価されるということは、
こういうことなのだと
腹をくくるしかないのでしょう。



気になるのは、
この評価を見て、息子はどう感じたか、
ということです。

私だったら、
こんな風に「D」と書かれたら、
納得できないまま
へこんでしまいそう。
その審査員を恨めしく思ったり、
バレエから逃げたくなったり
するかもしれない。


息子は、ある程度
審査されることに慣れていますが、
でも、こんな風にジャッジの中身を
見せられるのは初めてです。


理不尽さを感じるんじゃないかしら。

不信感からヤル気を失ったりしないかしら。

プロを目指す訳じゃないんだから
ジャッジなんて必要ない、と
コンクール出場を断った方が
良かったんじゃないかしら。

などなど、
ひとしきり考え…考えあぐね、
当の息子に感想を聞いてみました。


すると、
ミスター・ポジティブな息子は、
こんなジャッジシートを前にしても
とにかく「良いところ」に
焦点が定まるんですねー。

こちらが拍子抜けるほど、気分上げ上げ(笑)


「ここが良かった
ここも良かった
ほら、ここなんて、こんなに良いってよ
でも、こことここはやっぱ弱いんだよな~。
それがはっきり分かったから、
これから練習すべきことが定まって良かった
そこを集中的に気をつければ、
次はもっと良くなるってことだよ!」


笑えるほどポジティブ(笑)
じゃあ、この激辛審査員の「D」については…?


「この人はそういう人なんだよ。
でも、「将来性」は
けっこう良いポイントつけてるじゃん?
こんな冷たいこと言ってるけど、
ホントは僕に期待してるんだよ」


え。まさかのツンデレ疑惑?!


「こうやってハッキリ出されると
ヤル気でるわぁ。
次もこのコンクール、出よう~♪」


まいりました。

この子の「根拠の無い自信」は
砂上の楼閣だと思っていたので、
世間の荒波にさらされ
現実を突きつけられると
途端にへしゃげてしまうんじゃないかと
心配していたのだけど、
実はその砂、コンクリートのように
練り固められているのかもしれない(笑)
ちょっとやそっとじゃへこたれない。


彼は、私とは違った。
当たり前だけど。


その様子を見て、
ロバート・デ・ニーロの
「芸術家の卵に贈る言葉」を
久々に思い出しました。
この意気揚々とした卒業の日に、
君たちには新しい扉が開かれようとしている。
一生拒絶され続ける扉だ。
避けられないことなんだよ。
これが卒業生がよく言う実社会というやつだ。

拒絶されると辛いだろう。
でも私の実感では、拒絶というのは
自分の実力の問題ではないことが大半だ。

君の最善が不十分なこともあるだろう。
これには多くの理由があり得る。
でも君が全力を出し続ける限り、君は大丈夫だ。

学校でオールAを取ったことがあるかい?
もしあるなら、良かったな、おめでとう。
(会場笑)
でも実社会では、君はもう二度と
オールAなんか取ることはない。
良い時もあれば悪い時もあるんだ。
私が今日言いたいのは、それで大丈夫だということだ。


がんばれ、若者!


甘っちょろ二世であるはずの息子も、
主に芸術分野で徐々に叩かれ慣れて(笑)、
私が思うよりずっと強くなっていたようです。


芸術活動をすることと、
芸術的な表現を評価されることとは
別次元の話で、
もちろんプロに評価はつきものだけど、
普通の子どもの芸術活動には
コンクールなど必要ないんじゃないかと
懐疑的だったこともあるのだけれど、
息子がコンクールを通して
人前で演じることの楽しさと共に
こういう前向きな強さを持てるようになったなら
なんだかんだと出続けて良かったのかな、
と思ったりもします。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (candycandy)
2021-03-15 19:59:59
soratombo さま💕

バレエのジャッジシート、初めて拝見し、同じく「容姿」と「透明性」に目が釘付けになってしまいました‼️

容姿って、単なるルックスのことですか⁉️違いますよね⁉️違うって言って~💧って感じ。(笑)

この役をするにあたり「相応しいか?」っていう「容姿」だと思うことにします~😆

それに「透明性」‼️
確かに「見た目」の必要な職業には、「透明性」とか「オーラ」って、ルックス、に加えて欲しいポイントだけど、それを紙の上に点数化するって、やっぱり芸術って、奥深い~💧
特にバレエは、深すぎるぅ~💧

プリンス、うちの息子のピアノの先生と同じスタンスです💕

よい評価は「いただく」
悪い評価は、一応見て、自分流でかみ砕き、血や肉にする感じ。違うかな。

soratombo さまのお陰でまたひとつ知らない世界を知ることができて感謝します💕
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Unknown (soratombo)
2021-03-16 08:23:10
candycandy さま

コメントありがとうございます♪

容姿は、先生によると、そのまま「すがたかたち」ということで…顔の造作というよりむしろ身体のバランス(つまり顔の大きさ?)、細さ、手足の長さ、足の形などを見られるのだそうです。(大人になると、これに身長が加わる)
努力で何とかなるのは細さだけ。なんともはや…😭

透明感などは、それを評価するのも難しければ、評価されたところで、今後どう改善して行けば良いのか困惑するような項目ですよねー。
「オーラがある」なんてことも良く言うけれど、実際何なのかと言われると…(笑)

息子さんのピアノの先生のスタンスに共感します。そうなんですよね。コンクールの評価は、モチベーションアップと次の成長につなげなくちゃ!
私は分かっていても無駄に悪い評価に囚われがちなので、それが出来る強さを持つ人はすごい!と心から思います。
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