『ピアニストの脳を科学する』の覚え書き。
暗譜や初見のメカニズム
(使用する脳の部位、ワーキングメモリや周辺視など・・・)、
演奏(打鍵)において重要な
脱力や省エネの意味(筋肉の使い方)、
ピアニストのかかりやすい疾病、
タッチの差で本当に音色は変わるのか・・・などなど、
分かりやすく書かれていました。
練習中、疑問に思うことや
先生がレッスンでよく仰ることばかり。
簡単に分かりやすく根拠が示されているので、
読みやすく、なるほど、と思いながらサラッと読めました。
(説明が簡単過ぎて、論拠や検証に疑問が残る部分もあったけど)
(かといって、専門家向けの書き方をされると、
素人には理解できないだろうし・・・。
こういう本って、書く方は難しいだろうな。)
中でも印象に残ったのが、
「フォーカル・ジストニア」という病気。
初めて知りました。
腱鞘炎のように神経と筋肉の不具合から起こるのではなく、
脳に原因があるとのこと。
痛みはないのだけれど、
意図せず手指の筋肉が固まったり、丸まったり、
動かそうと思っていない指が動いたりするなど、
思い通りに手指を動かせなくなる病気なんだそうです。
その特徴は、以下のようなものです。
●日常生活では何事も起こらないが、
ピアノを弾こうとすると、途端に症状が現われる。
●弦楽器奏者の左手や、
管楽器奏者の口の周りの筋肉でも発症する。
●弦楽器奏者の右手(弓を持つ方)には現われない。
(精巧な動きを、速く正確に行う反復練習で
酷使されている部位にだけ起こる)
●多くは、自分が長年本気で練習してきた楽器を
弾くときにのみあらわれる。
似たような楽器でも、
自分が本気で取り組む楽器以外だと症状が出ない。
例えば、クラシックギターでは指が固まるが、
エレキギターだと症状が現われないなど、
限定的に症状が現われる。
●クラシックの奏者には多いが、
ジャズの分野ではほとんどない。
(「楽譜通り正確に」というプレッシャーがないためだと思われる)
10本の指を使うピアノは
その酷使度合い、反復度合いは
群を抜いているので、
ピアニストの超絶技巧と
フォーカル・ジストニアとは
表裏一体のものなんだそうです。
練習時間が長い人(=上手い人)ほどかかりやすいという。
なんともやりきれない病気・・・。
それにしても、
「クラシックギターでは発症するけど
エレキギターでは発症しない」って!
ピアニストの場合、電子ピアノだと大丈夫なのかな?
ヴァイオリニストだと、エレキ ヴァイオリンはOK??
人間の脳って面白い。