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真実を求めて Go Go

今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

「ブラックホール」と「裸の特異点」 二つの兄弟とは?

2014年02月08日 | 宇宙

ブラックホールよりも不可解な「裸の特異点」

 死にゆく大質量星が崩壊すると何ができるのか?
2つの可能性がある。「ブラックホール」と「裸の特異点」である。どちらも、中心に特異点が存在する。特異点は物質が極端な高密度に潰れたもので、これを記述するには新たな物理法則が必要になる。特異点にぶつかったものは、すべて破壊される。
 ブラックホールの場合、特異点は“着物”をまとっている。つまり、特異点は事象地平という境界に囲まれ、外から隠されている。この境界を通って内側へ落ちたものは、決して外へ戻ってこられない。
 裸の特異点には、そうした境界がない。特異点は外部の観察者に見えたままであり、特異点に向かって落ちる物体は、原理的には、衝突の瞬間までコースを変えて戻ってこられる。

 大質量星が崩壊すると最終的にブラックホールになるというのが従来からの考え方だが、一部の理論モデルはブラックホールではなく「裸の特異点」が生じる可能性を示している。いったい何が起きるのかを整理することは、宇宙物理学の最も重要な未解決の問題の1 つである。
 「裸の特異点」が発見されれば、構築中の統一理論を観測事実によって検証できるようになるなど、統一理論を目指す物理学の研究を大きく変えるだろう。


 ブラックホールは2つの部分からなる。中心には「特異点」が存在し、星を構成していたすべての物質がこの無限に小さな点に押し潰されている。特異点の周囲には、そこからの脱出が不可能な空間が広がっており、その空間の境界は「事象の地平線(事象地平)」と呼ばれる。ひとたび事象地平を越えたが最後、再び出てはこられない。ブラックホールに落ちていく物体が放つ光さえもがつかまってしまうので、外側にいる観察者は二度とその物体を見ることができない。物体は落ち続け、ついには特異点に達して押し潰される。

 しかし、この描像は本当に正しいのだろうか?
既知の物理法則によれば、特異点ができるのは確かだが、事象地平についてははっきりしない。大部分の物理学者は、事象地平が科学上の不都合を覆い隠してくれる“イチジクの葉”として非常に魅力的だという理由だけで、事象地平が形成されなければならないという仮定の下に研究を進めている。特異点で何が起きているのか、物理学者はまだわかっていないのである。

 特異点で物質は押し潰されるが、その後どうなるのか?
事象地平は特異点を覆い隠すことによって、この知識の欠落を問題の外に押しやってくれる。特異点では科学的に未知なあらゆる類のプロセスが起こるのかもしれないが、それはブラックホールの外側の世界にまったく影響を及ぼさない。惑星や恒星の運動を追う天文学者は、特異点がもたらす不確実性を安心して無視してよく、広く使われている物理法則を自信をもって適用できる。ブラックホール内で起きていることはすべて、ブラックホールのなかにとどまる。

 ところが、この便利な仮定に疑いを差し挟む研究成果がどんどん増えてきた。星が崩壊する過程で事象地平が生じないケースがいろいろ考えられることがわかり、そうした場合、特異点は私たちの視界にとどまる。「裸の特異点」と呼ばれるものである。物質も光も、そこに落ちていって再び出てくることができる。ブラックホール内の特異点を訪ねるのがそれっきりの片道旅行なのに対し、裸の特異点には好きなだけ近づいた後に戻ってきて、旅の上産話をすることが原理的には可能である。

 もし裸の特異点が存在するなら、その意味するところは重大であり、宇宙物理学と基礎物理学のほとんどすべての面に関係してくるだろう。事象地平がなければ、特異点の近くで起きている不可解なプロセスが外界に影響を与えうることになる。

 天文学者によってこれまでに観測された謎の高エネルギー現象のいくつかは、裸の特異点に基づいて説明がつくかもしれない。裸の特異点はまた、時空の構造を最も微細なスケールで探るための実験室を提供してくれるかもしれない。ブラックホールのうち、事象地平はわかりやすいと考えられてきたが、特異点は明らかに不可解である。

 特異点は重力の強さが無限大になる場所で、そこでは既知の物理法則が破綻する。重力に関しての現在までの物理学者の常識は、一般相対性理論にまとめられていて、それによると大質量星が崩壊する過程で必然的に特異点が生じる。

 一般相対論はミクロな世界で重要になる量子効果を扱っておらず、おそらく実際にはそうした量子効果が介入してくるため、重力の強さが本当に無限大になることはない。しかし、こうした説明に必要とされる「重力の量子論」はまだ開発途上である。

 これに比べると、特異点の周囲の時空で起こることはむしろ単純明快だと思われる。星が作り出す事象地平の大きさは数kmにもなり、量子効果が問題になる典型的スケールよりもはるかに大きい。新たに未知の力が働くことはないと仮定すれば、事象地平は一般相対論だけに支配されるだろう。一般相対論は十分に理解された原理に基づいており、過去90年の観測事実によって裏づけられている。

画像データbrak1a
図:宇宙の2大怪物
裸の特異点は基本的にブラツクホールから“ブラックな部分”を除いたものである。裸の特異点は物質と光を吸い込むことができるほか、吐き出すこともできる。従って隣接する領域とは異なるように見え、及ぼす影響も隣接領域とは異なる。
ブラックホール
左上:ブラックホールを特徴づけるのは事象地平(入っていけるが決して出てこれない境界面)である。事象地平は渦巻くガス円盤に囲まれていることが多い。
左中:ブラックホールは真っ黒なボールのように見える。特異点は内部にあって見えない。周囲を取り巻く円盤内の摩擦が、激しい放射を生む。円盤の物質の一部はジェットとなって飛び出し、他はブラックホールに落ちていく。
左下:―様でガス圧力のない星が重力崩壊するとブラックホールができる。星の重力が強まるにつれ、物体が移動する道筋が曲げられ(光の進路も曲げられる)、ついには重力がすべてを捕捉してしまう。
裸の特異点
右上:裸の特異点の場合、事象地平はない。ブラックホールと同様に物質を吸いむが、ブラックホールとは違って、物質を吐き出すこともできる。
右中:裸の特異点は小さな粉塵のように見えるが、想像を絶する高密度である。落ち込んでいく物質は、最終的に特異点にぶつかるまで、観察者にずっと見えている。激しい重力が強力な衝撃波を生む。
右下:星が非一様な場合、その重力は光を曲げて引き戻すほどには強くならないだろう。星は特異点に崩壊するが、その特異点は見える。


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