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今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

4次元から、時間と空間を分離する!

2014年02月07日 | 宇宙

 ウィッテンの結果をもとに、カリフォルニア大学のS.カーリップは、このプロセスを量子化できることを示し、2次元重力の古典論を量子論に格上げした。フラットランドの量子重力理論は重力子の理論ではなく、形を変えるトーラスの理論なのである。この見解は、量子論は極微の世界についての理論だという従来の見方からの転換を示している。2次元空間での量子重力理論は、宇宙全体を1つの対象として量子論の法則に従って記述する理論である。これによって、量子重力における根本的な概念的諸問題を探求できるようになった。

 フラットランドの重力は、時間を測る尺度そのものが揺らいでいる理論において、時間がどのように姿を現すかを教えてくれる。量子重力理論の1つの定式化では、宇宙全体は1つの量子的波動関数(粒子や原子を記述するために物理学者が常用する数学的道具)によって記述される。この波動関数は時間に依存しない。すべての時間、すなわち過去、現在、未来の情報を1つのパッケージとして含んでいる。それは、通常の量子力学では、波動関数は時間と物質の状態(位置など)の関数であり、物質がある時刻にある状態をとる確率を与える。一方、宇宙の波動関数は時間を含まず、宇宙の状態(大きさなど)と物質の状態の関数である。これは、宇宙の状態と物質の状態の間の相関を表している。


 宇宙全体を記述する量子的波動関数は時間に依存しない。この『時間のない』波動関数から、私たちが目にする「変化する世界」がどうやって出現するのだろうか。
 
 ポイントは「時計によって測られるものが時間だ」というアインシュタインの言葉を思い出すことである。時間は宇宙の外に独立に存在するわけではない。宇宙の部分系によって定義され、その部分系と宇宙の他の部分で起こる現象との相関が時間発展を表す。壁掛け時計が示す時刻が地球の自転運動と相関しているのと同じである。

 時計の選び方には様々な選択肢があり、それに応じて“時間”が意味するものが決まる。フラットランドの住人、スクエアは、GPS衛星に搭載されている時計のように、人工衛星に積まれた原子時計の測定値によって時間を定義できるだろう。あるいは、標準的な観測者の時計で測ったビッグバンからの時間や宇宙の大きさ、宇宙の膨張による赤方偏移の大きさなどによっても定義できる。一様等方な宇宙では、“ある意味で静止した”観測者の集合を考えることができる。彼らは互いに遠ざかっており、彼らの相対的な運動は宇宙膨張に起因している。ここは、そのような観測者の時計で測ったビッグバンからの時間ということである。

 時計を決めれば、他のすべての物理量はその時計が示す時間とともに変化する。例えば、ドーナツランドのモジュライは宇宙の大きさ(面積)と関連し、その住人にとっては、宇宙が時間変化しているように感じる。このようにして、時間を持たない理論の中から時間をひねり出すのである。こうした考え方は新しくはないが、それが妥当かどうかだけでなく、実際に数学的に定式化できるかどうかドーナツランドの量子重力を研究することによって確認できる。

 観測量の問題に関していえば、ドーナツランドにはモジュライという客観的に観測可能な物理量がある。予想外だったのは、それが非局所的な量だという点である。モジュライは特定の1点で定義されるものではなく、空間全休の構造を記述する。

 ドーナツランドの住人が測定するあらゆる量は、この非局所的な量と関係している。ニュルンベルク大学のモイスバーガーは2008年、モジュライが時間の遅れや光の赤方偏移といった実際の宇宙観測とどう関係するかを示した。また、S.カーリップはモジュライと物体の運動の関係を明らかにした。

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図:トポロジーの変化;ワームホールとビッグバン
量子重力理論では、一般相対論と異なり、宇宙のトポロジーが変化し得る。このことによって、宇宙に関する長年の疑問が解決できるかもしれない。例えば、1 つの穴を持ったトーラスは2つの穴を持ったものに変化できるが、これはワームホール(ある場所から別の場所への抜け道)を作ることにあたる。ワームホールを利用すると、タイムマシンが作れるかもしれない。さらに、宇宙が突然消滅したり、無からいきなり誕生したりすることもあり得る。


 フラットランドの重力はワームホール愛好家に良い知らせをもたらした。少なくとも1つの量子重力の定式化において、空間のトポロジーが変化し得るのである。フラットランドの住人、スクエアは、球面ランドで眠りにつき、翌朝ドーナツランドで目覚めるということもあり得る。これは、球面ランドにハンドルを取り付け、離れた2点をつなぐ近道を作るのとトポロジー的に同等である。2次元量子重力のある定式化では、無からの宇宙の生成という究極のトポロジーの変化すら記述できる。

 フラットランドには通常の意味での重力が存在しないことから、2次元空間にはブラックホールは存在しないというのがこの分野の専門家の間の定説だった。しかし、1992年に3人の物理学者バニャドス、バンスター(テーテルボイム)とザネッリが、フラットランドに特定の暗黒エネルギーがあればブラックホールが存在することを示し、世界に衝撃を与えた。

 この「BTZブラックホール」は、私たちの宇宙に存在するブラックホールにそっくりである。物質が自身の重みに耐えきれずに崩壊することによって形成され、中から何も出てくることができない一方通行の障壁「事象の地平面」によって囲まれている。ブラックホールの外側にとどまる観測者には、それは宇宙の端のように見える。ブラックホールに落下する物体が事象の地平面を通過すると、観測者から完全に切り離されてしまう。ホーキングの計算によると、フラットランドの住人は、ブラックホールがその質量と角運動量で決まる温度を持って光っているのを見ていることになる。

 この結果は新たな謎を提起する。フラットランドには重力波や重力子が存在しないので、ブラックホールの温度を説明するような重力の自由度は存在しないと思われる。だが、それらはどこかに紛れ込んでいるはずである。

 実は、事象の地平面そのものが、空っぽの2次元空間には存在しなかった白由度を与えているのである。事象の地平面は特定の場所に存在しており、この事実によって新たな量を数学的に定義することが可能になる。事象の地平面を小刻みに動かす振動が新たな自由度を与えるのである。驚くべきことに、この考え方によってホーキングの結果が厳密に再現できる。

 この自由度は事象の地平面の特性であり、ある意味、フラットランドの空間の端に存在している。だから、この自由度は、量子重力の本質に関する興味深い提案であるホログラフィック原理を具現化したものといえる。

 ホログラフィック原理によれば、空間の次元は見方によって変わる。ホログラムが3次元的な物休の像を2次元フィルムに記録するように、d次元世界の物理学はその空間の端に位置するd― 1次元空間で定義された、より簡単な理論によって完全に記述されるのではないか、と多くの物理学者が考えている。一般相対論と量子力学の統一への有力な試みである「ひも理論」では、1990年代後半、ホログラフィック原理によって量子重力理論への斬新なアプローチがもたらされた。

 フラットランドの重力は、そのアプローチを検証するための簡単化された状況を与えている。4年ほど前、ウィッテンとマロニーは、2次元重力の最も単純なバージョンでは、ホログラフィック原理の予言は正しくないようだと示唆して、再び物理学の世界を驚かせた。その理論に従うと、ブラックホールはあり得ない熱的性質を持たなければならないというのである。この結果は、重力は私たちが考えていたよりもずっと微妙な現象であることを示唆しており、これを機にフラットランドの研究が活発化している。

● もしかすると
重力それだけでは辻つまが合わず、他の力や粒子を含めて初めてうまく説明できるようになるのかもしれない。
アインシュタインの重力理論を見直す必要があるのかもしれない。
局所的な自由度を理論に付け足す方法を考えなければならないかもしれない。
ホログラフィック原理は常に成り立つわけではないのかもしれない。
空間は時間と同様、宇宙の基本要素ではない可能性もある。

 いずれにせよ、フラットランドの重力は、私たちにこれまで考えつかなかった方向を示している。

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図:実験室で作られたフラットランド
メリーランド大学のスモリヤニノフらが実験室で作り出したフラットランドに似た系は、金属の面(金のフィルム)とその面に沿って伝わる電磁波からなる。光に相当するのは、「表面プラズモン」と呼ばれる金属表面に局在する電子密度の波である。3次元ブラツクホールが光子を閉じ込めるように、金属面上の油滴(左図)はプラズモンをその中に閉じ込める。事象の地平面に相当するものが、白い縁のように見える(右図)。理論家がフラットランドの重力を統―理論へのウォーミングアップとして有用だと考えているのに対し、実験家は2次元系を光学分野で応用しようと考えている。


 本物の2次元ブラックホールを作り出すことはできないが、フラットランド重力モデルの予言のいくつかは実験で検証できるかもしれない。世界中の複数の研究所で、2次元ブラックホールの類似物が研究されている。例えば、音速より速く流れる流体によって、音波が超えることができない音速版の事象の地平面ができる。また、平面内に閉じ込められた電磁波を用いて2次元ブラックホールを作り出した実験家もいる(上図)。これらは本物のブラックホールと同様、量子的な光を放つはずである。

 当初、フラットランドの量子重力は現実宇宙における量子重力のアイデアを簡単化された設定で探求する、物理学者の遊び場のような存在だった。その研究は時間や観測量、トポロジーなどの諸問題に関して、現実の3次元空間の重力にもあてはまる貴重な教訓を私たちに与えてくれている。フラットランドのモデルは、トポロジーが果たす予期せぬ重要な役割や驚くべきブラックホールの存在、ホログラフィック原理に関連した奇妙な性質など、その内容の豊かさで私たちを驚かせてきた。

 私たちは近く、フラットランドに住むスクエアが経験する世界を完全に理解することになるだろう。

 フラットランドという物理学者の遊びの世界が、ホログラフィック原理と関係して、量子重力の宇宙を豊かにしています。
そして、現在の物理学者達の多くが深く探求している、超弦理論やD―ブレン等の理論とも一緒に合流し、「時間・空間」の解明が、今までの時空の概念とは、「別枠」の分野として発展していくのかも知れません。


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