仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「共犯マジック」 北森鴻

2006-05-28 10:14:09 | 讀書録(ミステリ)
「共犯マジック」 北森鴻

お薦め度:☆☆☆☆
2006年5月17日読了


人の不幸だけを予言する占い書「フォーチュンブック」。
この本を讀んで自殺する者が多かつたため、販賣が自肅され書店からは姿を消したといふ本である。
この本を松本市の書店で入手した7人の男女のその後の運命を描いた連作短篇集。
いや、短篇が相互に連繋してゐるから、長篇小説といつたはうがよいかもしれない。

私は第1話「原點」からいきなり惹きこまれた。
といふのも、この第1話は60年代末の京都、つまり私のかつて憧れた世界が舞臺になつてゐるのだ。
冒頭からいきなり、あの 「しあんくれーる」 の店内での會話のシーン。
これはたまらない。
この時點で私は、もしかすると、あの人が登場するのではないかといふ豫感がした。

そして、その豫感通り、私のかつての愛讀書の著者が間接的に登場した。
「未熟であること、孤獨であることがわたしの二十歳の原點である」
これは登場人物の友人が云つたことになつてゐる。
つまり、高野悦子と同時代の物語、それだけで私はときめいてしまつた。
もしかしたら、北森さんも「二十歳の原點」の愛讀者だつたのではなからうか。

作品トータルとしては、ほとんどファンタジーと云つてもよいやうな感覺。
そんな偶然が續いてたまるか!などと思つてはいけない。
なんといつても「フォーチュンブック」の指し示す世界なのだから。

60年代終り頃の大事件と84年の大事件とを繋ぐ壯大なファンタジーだと云つてもよいかもしれない。
その點、私のやうな妙な思ひ入れのない人でも樂しめる作品になつてゐると思ふ。


2006年5月17日読了


共犯マジック

徳間書店

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<參考>
二十歳の原点

新潮社

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